KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2016年08月09日

忘れられないパキスタン御一行様

山内 久未

皆さまこんにちは。通訳ガイドのKimmyこと山内久未と申します。

2015年の訪日外国人数は過去最高の1,973万7千人。都内はもちろん、日本中のいたるところで外国の方を見かける機会が増えてきました。私は2015年から通訳案内士(通称:通訳ガイド)として、外国人観光客のための観光ガイドをしています。

ガイドツアー中に次々沸き起こるハプニングと戦い、額に汗かきながら外国人観光客のお客様と日々触れ合う中で、驚き、とまどい、笑い、感動したことを綴ってまいります。
職場や留学とは少し異なる、旅行という非日常の場面における“ソトからみた日本” の一端に触れ、楽しんでお読みいただけたら嬉しいです。

そのツアーはパキスタンのお医者さま30名を東京観光と富士山の鳴沢氷穴にご案内する3日間のバスツアーでした。

ご同意いただける方も多いと思いますが、多くの外国のお客様は集合時間を守りません。今回のパキスタンのお客様も、時間感覚が大変大らかで、集合時間を30分過ぎても3名の方がショッピングに行ったきりバスに戻ってきません。携帯電話は日本仕様の設定にしていないらしく繋がりません。
そして待つこと40分、ついにパキスタン人のツアーリーダーが

俺はお腹が空いてもう限界だからディナーに行こう」

提案し、そのままバスを出発させ、残り27名のお客様とディナーを食べ、ホテルに戻りました。
もちろんみんなを待たせて帰ってこない3人はよくないですが、「俺が限界」という理由でお客様を置いて出発するなんて、日本人のツアーではありえないですよね・・・外国人ツアーではよくあるシーンです。

そして翌日。午前中の医師学会を終え、午後からのツアーに出発するべく、ホテルの駐車場のバスに昨日のお客さまがぞくぞくと乗り込んできます。
ところが。彼らを迎えながら、なんだかとても違和感が。

あれ・・・あんなターバン巻いてた人、いたっけ?
あれ・・・あんな髭の長いお爺さん、いたっけ??

その後も、見覚えのあるようなないようなおじさま方がぞくぞくと乗り込んできます。
恐る恐る人数を数えてみたところ、なんと30名のツアーのはずが、37名に増えているのです!

この7人誰!?

昨日ショッピングから帰ってこなかった3名がもしかして今日も現れずに27名になるかも、とは予想していましたが、なんで増えているのかまったく検討がつかず、顔は笑顔でお迎えしつつも頭の中は大混乱です。

事情を確認したところ、理由はこの日の午前中に行われた学会での「ナンパ」でした。
私の担当したツアーは、お医者さま以外に製薬会社担当者が随行していまして、この担当者が学会会場で見つけた別のパキスタンのお医者さまに声をかけたというのです。

「先生!もしかしてパキスタンからですか?私、パキスタンの○○製薬の者です。午後はお暇ですか?なんと!では、ぜひわが社が用意した観光ツアーへどうぞどうぞ~」

と、次から次に声をかけ、その場で勝手にバスにご招待してしまっていたのです・・・。

ちゃんと旅行会社にも知らせてよ・・・・
ていうかこの7人の昼食をどうしよう・・・?

私は以前、日本人のお客様を相手に添乗員をしていたので、大抵のハプニングは経験していたつもりでしたが、お客さまが途中離団、ではなく増えてしまったのは初めての経験で本当にびっくりしました。
(ちなみにこの日の昼食はカレーでしたので、増員分も無事カバーできました)

時間は守らない、説明は聞かない、すぐに四方へ散らばるお騒がせパキスタン御一行でしたが、3日間ご一緒したらすっかり仲良くなるものです。ツアーの終盤で、カルガモ親子のように一列になって私の後をついてきてくれるようになったときは、あまりの感動に思わず振り向いて「やればできるじゃん・・・」と日本語でつぶやいてしまいました。

新幹線のホームでのお見送りでは、皆さまからハグ&キスの嵐。一期一会の出会いにほんの少しせつなさを感じつつ、「おやつに食べて!」と別れ際にいただいたハラルスナックを片手に、また次のツアーへと向かうのでした。

山内 久未(やまうち・くみ)
慶應丸の内シティキャンパスで2年間ラーニングファシリテーターとして多くのプログラムを担当。退職後、約2年間の勉強生活を経て2015年春より通訳案内士(通称:通訳ガイド)として日々奮闘中。
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