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AIが女性活躍を推進する

2019年11月12日

ほり屋飯盛

大学生活最後の学期になってしまった。普通の大学4年生はすでに就職先が決まって、バイトか遊び三昧の日々を過ごしている。一方、私は絶賛就職活動中である。4年生でありながらも週9コマの講義を受け、卒論を執筆しながらの就活はまあまあ忙しい。しかし、今どきはネットでさくさくと求人を探すことができるし、応募もオンライン上で完結する。20年前の就活生に比べれば、はるかに楽だよなと思いながら、企業の採用ページを見ていた時に違和感を覚えた。様々な企業の求人を見ているにもかかわらず、なぜか同じ企業の採用ページを見ている錯覚に陥るのだ。なんだか気持ち悪いなともやもやしていたところ、あることに気がついた。

多くの企業の採用ページが「多様性(ダイバーシティ)」を全面に押し出しすぎているのだ。近年、経済産業省が「ダイバーシティ経営」という取り組みを推進し、それに倣って多くの企業は女性、外国人、LGBTの積極的採用や、介護や子育てなど様々な条件がある人々が働きやすい環境を整備している。そして、大体の企業の採用ページの中心が働く女性の写真、インタビューも女性社員といったところである。しかし、就活している身としては、どの企業も「多様性」を打ち出す「一様性」状態で、その企業のカラーがわからないし、かなり引き気味である。そして、多様性を打ち出しているわりには、選考フローの初期段階で「適性検査」が盛り込まれており、そんなに多様性が大事と思っているなら、適性検査で足切りするなよ!と言いたくなってしまうのだ。

そんな「多様性重視」の現代社会で、まさに「多様性大事!女性活躍!」というような圧迫面接を受ける機会があった。リクナビサイトによると、圧迫面接とは一般的に面接担当者が威圧的・否定的な態度をとる、意地悪な質問をするといった「マナーの悪い面接」のことを指す。しかし、実際に私が受けた圧迫面接は、「少数派の少数派のための少数派による多様性面接」である。もう少しわかりやすく表現すると、面接官の女性が応募者の女性に対して女性に関する質問をすることである。

つい1週間前に受けた面接では、女性面接官に「女性の政治家や管理職を増やすためにはどうしたらよいと思いますか」と「女性の政治家や経営者で憧れの人は誰ですか」との質問を受けた。しかし、これらの質問は面接官と私がともに女性だからだよなと感じたし、男性に同じ質問はしないだろう。それに、女性だからって女性限定で憧れるわけじゃない。私が憧れている人はつげ義春氏、ただ一人のみである。エントリーシートや小論文で「女性活躍推進」の重要性について書いたならば理解できるが、そんなこと一言も書いていない。それに政治家や管理職のパイはある程度決まっている。女性の政治家をいかに増やすかということは、男性の政治家をいかに減らすかという、けっこうえげつない質問だ。その時は、ハニートラップ&文春砲で男性政治家を辞めさせて、その空いたポストに女性が就くというどうしようもない考えが浮かんだが、さすがにそれは言わなかった。

そんなことがあったので、まわりの女子たちに報告したら、面接官の女性から女性活躍推進系の質問をされることはけっこう「あるある」らしい。「でも女性の政治家が少ないって女性だけの問題じゃなくて、男性を含めた社会全体の問題じゃない?」と聞くと「それな!」と返ってくるので、まあ若者はあまり気にならないようである。

それから1週間、女性の政治家や管理職が少ない原因を考え続けてみた。そして、ひらめいた仮説は「女子数学苦手問題」が関係しているのではないかということだ。政治家や企業の役員クラスは東京大学出身者が多い。しかし、女性が自分の能力を示すことができる東大や難関国立大学に入学するためには、「数学」という壁がある。OECDのPISAでは、日本人の男子平均数学スコア539に対して女子平均525である。ちなみにOECD諸国数学スコア平均は男子平均494に対して女子平均486である。自分が数学を苦手になった歴史を振り返ると、小学生中学生ぐらいの頃はわりとできていたのに、どこで躓いたのかわからないが数学が苦手になってしまった。だが、もし数学で躓かなかったら違う人生があったのではないだろうかとも考えるし、「女子=数学苦手」という先入観が蔓延しており、自分も女子だから数学苦手でもしかたないかと諦めていた節がある。

私がこのように考えるのは、自分が女性というだけで特に損したことは思い当たらないからである。自分の能力が低かったために、低く評価されたことはあるが、女性だからというだけで低く評価されたことは多分ない。しかし、女性が働きやすい労働環境が推進されることはいいことである。そのように社会が変化するのと同時に、「女子数学苦手問題」を克服すれば、日本の風景は変わるのではないかとも考える。

教育産業は人工知能(AI)が導入されにくい産業だといわれている。しかし、Acemoglu & Restrepo (2019)によると、AIソフトウェアは、教え方に対する生徒の反応や困難、成功に関するデータをリアルタイムで収集および処理し、個別指導を改善するための推奨事項を作成するように設計できる。女子たちが数学のどの部分で躓いていて、改善するためにどのような指導をすればよいのかが理解できれば、教師たちが生徒をサポートできる。そして、躓いても乗り越えた女子達が頑張って難関大学を目指して、「女子数学苦手問題」を克服すれば、女性の政治家や管理職を増やせるのではないか。そんなことを今さら思いついたのだが、面接は終わっている。時すでに遅し、ではあるが我ながらけっこう良いアイディアだと思う。

【参考文献】

  • Acemoglu Dragon & Restrepo Pascual (2019) “The Wrong Kind of AI? Artificial Intelligence and the Future of Labor Demand” NBER Working Paper No. 25682
ほり屋飯盛(ほりやめしもり)
  • 大学生
36歳で大学に入学。まわりの学生には19歳と偽り、はじめはオープンキャンパスの学生トークショーに出演したり上手くやっていて、来年こそはミスキャンパスもいけるかもと思っていたが、「プラザ」を「ソニプラ」、「プリント」を「わら半紙」と言ってしまったことから実年齢を怪しまれはじめる。最近では「ほり屋さんの年齢を探ると社会から消される」と噂が流れ、ミスキャンパスへの道が閉ざされ気味。社会科学専攻。38歳の目には最近の大学生や大学はどのように見えるのかなど書いてます。

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