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美の努力効果モデルと車内マナー

2020年01月14日

ほり屋飯盛

大学生はよい。
何がよいかというと、とにかく自分の外見を気にしているところがよい。毎日メイクをして、流行のものを着て大学に来る。髪の毛がボサボサのままで授業を受けに来る子なんていない。しかし、通勤途中の人々はどうだろう。一瞬スマホから顔を上げて、電車内を見渡してみると男女ともにこぎれいにはしているけれど、外見を最大限に美しく見せようとしている大人は少ない。若者のほうが何もしなくても可愛いはずなのに、自分を良くみせるための努力を最大化するのはいつも若者のほうだ。一方、何もしなければ終わっていくのが大多数である大人たちの方が、自分の外見に対して努力しなくなる。この差は何なのかと可愛くキラキラした大学生たちを見ているうちに疑問に思った。

時同じくして私は卒論に取り組んだ。「美形は収入が高い」(“Beauty Premium”)というテーマで、123人の女子プロゴルファーについて、各選手の見た目がスコアや賞金、パット数、スポンサー数、インスタのフォロワー数などにどれぐらい影響しているかを調べた。各選手の見た目については、年齢、性別に配慮した16人の評価者を選び、美貌度に点数をつけてもらい数値化した。

結果としては、女子プロゴルファーの美貌は全体のスコアに影響しないが、パットスコアに大きな影響があった。そして美しさは賞金には影響しなかったが、サンプルを超美人上位10%に制限すると、超美人ゴルファーはより多くの賞金を獲得していた。この結果は、美しさが重要でない職業であっても、美人は集中力が必要なときにプレッシャーを克服する効果があり、さらには超美人のみが高収入を得るという身も蓋もない結果がでた。

同じようにAhn and Lee (2014)が、米国トーナメントに出場している女子プロゴルファーでその美しさとスコアや賞金について分析したものがある。ここで彼らは「美の努力効果モデル」を提唱した。美の努力効果モデルとはその収入源が2つ以上ある職業に起こりやすいという。例えば、プロゴルファーの場合、その収入源は賞金とスポンサー契約の2つに大きくわかれる。その時に、スポンサーは美人選手のスポンサーになったほうが得だ。なぜなら選手はその企業の広告塔の役割を果たすからだ。しかし、美人なだけでスコアの悪い選手は人気がでないだろうから、強くて美しい選手のスポンサーになりたいという希望がスポンサー企業にはある。そこで美しい選手は自分の収入を最大化するために、試合で勝つ努力をするインセンティブがあるという理論である。一方、美しくない選手はどんなに頑張っても収入は賞金に限られるので、努力はしないという。

美の努力効果モデルを眺めていて、これは電車内でマナーの悪い人々に美男美女がいない理由が説明できるのではないかと考えた。大学生が自分の見た目に気を遣うのは、美の努力効果があるからだ。若いだけで十分可愛いのに、さらに髪型を変え、可愛い服を着れば、まわりの子たちから「いい!似合う!」とか注目の的になれ、彼氏彼女ができるチャンスも増える。それだけではない。インスタで「いいね」をもらうには、友達がたくさんいたほうが得である。そして友達をたくさん作るには、それなりにいい人でなくてはならない。もしかしたら、大学生は外見を磨くことも、よい振る舞いをすることもすべての努力が報われてしまう最高潮の時期なのではないか。

そして、本題である電車内マナー悪い人非美男美女問題である。なんというか、昨今電車内でマナーのよろしくない人が増えた気がする。具体的には、自分のスペースを確保するために肘でやたらと押す、ドアの前を塞いで立つ、無駄に脚を広げて座ることなどである。そして、このような人々たちの中には、示し合わせたように美男美女はいない。むしろ外見が悪い上にやさぐれ気味であり、はっきり言って終わっている方々しかいない。

これを美の努力効果に当てはめてみると、美人は電車内で良い振る舞いをすれば、見ず知らずの人に感謝されたり、褒められたりするインセンティブがあるから努力をする。もし、石原さとみ級の美女に席を譲られたら、私だったら舞い上がって感謝しても感謝しきれないぐらいだ。現在電車内でマナーの悪いブサイクは、過去に席を譲っても感謝されるどころか、気持ち悪がられた経験があるのかもしれない。だから見た目も振る舞いも悪いやさぐれたマナーの悪いブサイクたちが誕生しているのではないだろうか。

と、ここで終わってしまうとブサイクな人たちに未来はない。例えば、制服を着ると気が引き締まる経験が多くの人にあるように、身なり・外見を美しくしようと努力すると、それに相応しい振る舞い・行動が自然と選択されることから、大人であればあるほどやはり美の努力をした方がいい。
女子プロゴルファーのように収入と直結するかはわからないが、少なくとも、私のような観察者に「終わっている」とかまとめられることは避けられるだろう。

ほり屋飯盛(ほりやめしもり)
  • 大学生
36歳で大学に入学。まわりの学生には19歳と偽り、はじめはオープンキャンパスの学生トークショーに出演したり上手くやっていて、来年こそはミスキャンパスもいけるかもと思っていたが、「プラザ」を「ソニプラ」、「プリント」を「わら半紙」と言ってしまったことから実年齢を怪しまれはじめる。最近では「ほり屋さんの年齢を探ると社会から消される」と噂が流れ、ミスキャンパスへの道が閉ざされ気味。社会科学専攻。38歳の目には最近の大学生や大学はどのように見えるのかなど書いてます。

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