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説教したい大人たちへの説教

2020年07月14日

ほり屋飯盛

お説教が大好きな大人が今も昔も存在している。「自分が若かった頃は・・・」とか、「社会にでれば絶対に苦労するよ」というお説教を若者相手にしたくてうずうずしているのだ。そういう大人は、イキった若者を見かけると、「若いから失敗した経験も少ないし、自分のことを天才だと思い込んでいる」という前提で、偉そうにお説教をしている。

しつこいようだが、私はさばを読んでいる。さばを読んで生きるということは、もう一人の自分を演じることだ。22歳の自分と39歳の自分を行き来しながら二重生活を送っている。22歳の自分はイキり系で、まわりの大人たちに楯突く若者を演じている。そのほうが面白いからだ。まわりの大学生からは、もはや22歳だと思われておらず、さば読みもネタ化しているのだが、ごく稀に正真正銘の22歳と信じて疑わない大人たちがいる。そして、そんな大人たちから「社会に出れば苦労するよ」とよくお説教される。ちなみに私の見た目は間違っても22歳には見えない。私のことを22歳だと信じて説教してくる大人たちは「大学生=20歳前後」という思い込みから抜け出せずに、勝手に騙されている。つまりガチガチの固定観念に捕われている。そして誰かに説教をしたいだけだから私のことなどまったく見ていない。

「私、10年以上社会人やってたんだけど」と、半笑いでお説教を聞いてあげている。今から約20年前、私が本当に20歳だった時も、偉そうに説教してくる大人たちはたくさんいた。「うるせえ」、「稲盛和夫氏になったつもりで生き方指南するな」と思って無視していた。あれから約20年が経ち、再び「社会に出れば苦労する」と言われて思うことは、この手の説教なんてほとんど意味が無いということだ。なぜなら、どこの馬の骨かわからない大人に説教されても有り難くないし、面倒くさいという嫌悪感以外には何も残らないからだ。

そして、学生から社会人になったからといって、何もかもが一変するわけではない。社会人から学生になった私は思うのだが、学生だって楽ではない。バイトや部活をしていれば、初日は異常に緊張するし、覚えることはたくさんあるし、理不尽に客や先輩に怒られることもある。友人や先生との人間関係に悩むこともある。就職活動だってつらい。人間は生きている限りは社会の中で活動しているので、厳しいことや辛いことがあったりするものだ。大学を卒業して、社会人として働くことは、生きることの延長にすぎない。

説教したい大人たちは、なぜいつの時代も絶えないのだろうか。それは彼らの承認欲求と言えるかもしれないが、他に考えられることは、「褒めすぎると人は成長しなくなり、説教やアドバイスは成長の糧になる」というある種の気持ち悪い思い込みがあるからではないだろうか。

偉業を達成した有名人たちは、「叱ってくれた人がいたから、今の自分がある」というエピソードをインタビューで話すが、説教する大人はそういう話を真に受けているのではないか。他人から偉そうに説教されて「うるせえ」とムカつくのは普通のことだ。そこを有名人は、自分は「ありがたい」と感じるんですよ、だから自分は特別な存在なのですよ、という凡人との違いをシグナルしているにすぎない可能性がある。有名人は普通の人ではなく、何か特別な才能などを持っている(と思わせることができる)から有名になる。そのために、自分がいかに特別な存在だと世の中に知らしめなければならない。

さらには、有名になるような人は、凡人には理解できない熱狂に突き動かされて偉業を達成する。そんな人が他人からの賞賛や批判をいちいち気にするだろうか。おそらく、雑音を一切無視して、自己賞賛と自己批判を繰り返しているのではないだろうか。つまり他人がとやかく言っても、自分の中ですべて完結している。そこに「ありがたく思え」みたいな説教をされても、面倒くさい奴に捕まっちゃたなと思われるのがオチである。

説教される側が聞いたふりをしていればまだいい。しかし、若者自身も「批判されて人は成長する」と思い込んでいる場合はあまりよろしくない。批判してくる大人の意見に耳を傾けてしまい、自己否定ばかりして日々を送っている後輩が大学にいるのだが、彼の人生は暗い。22歳と39歳の両年齢を同時に生きていて言えることは、若者は偉そうな大人の説教はほとんど気にする必要はない。「うるせえ」、「稲盛和夫氏レベル以外は生き方指南するな」と無視しても、人生が大変になることはない。

そして、お説教したくてうずうずしている大人は、若者に説教したところで何も変わらないと肝に銘じることをおすすめする。もしくは、オンラインの世界で勝手につぶやいていればよい。あなたの説教が有益ならきっと若者がフォローしてくれるだろう。いつまで経ってもフォロワー数が少ない場合は、つまりはそういうことだ。オフラインで若者に説教したい自分を見つけたら、胸に手を当てて、自分は稲盛和夫氏かどうかを10回ぐらい自問自答してもらいたい。

ほり屋飯盛(ほりやめしもり)
  • 3月に大学を卒業しました
36歳で大学に入学。まわりの学生には19歳と偽り、はじめはオープンキャンパスの学生トークショーに出演したり上手くやっていて、来年こそはミスキャンパスもいけるかもと思っていたが、「プラザ」を「ソニプラ」、「プリント」を「わら半紙」と言ってしまったことから実年齢を怪しまれはじめる。最近では「ほり屋さんの年齢を探ると社会から消される」と噂が流れ、ミスキャンパスへの道が閉ざされ気味。社会科学専攻。38歳の目には最近の大学生や大学はどのように見えるのかなど書いてます。

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