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人間関係に使える正規分布図思考法

2020年11月10日

ほり屋飯盛

大学生と話をしていると、驚くような悩みを打ち明けられることがある。たとえば、「親が毒親で」とか、「みんなが自分をバカにする」などの悩みだ。確かに世の中には毒親は存在するし、人と付き合って行く以上は他人から馬鹿にされてしまうことはある。しかし大学生と話す時はそれなりに気を配らなければならない。若者特有の「悲劇のヒロイン」的な悩みの場合もあるからだ。

よくよく聞いてみると、毒親というのは「ママがパパからのプレゼントをフリマアプリで売っちゃった」とか、バカにされるというのは「同期に成績自慢されて、自分が情けなくなった」という話だったりする。自分が10代や20代前半の時にも、なんとなく悲劇のヒロイン的な側面があったと思うし、そういう友人がまわりにもいた。他人からの同情を引きたかったり、強い思い込みからきたりする若者特有の悩みだ。大人になった今、思い返すと「悩んでいる自分に酔っている」という、くすぐったく恥ずかしい思い出だ。

まだ10代や20代前半の大学生であれば、悲劇のヒロインのような振る舞いは可愛いらしい。しかし何歳になっても悲劇のヒロインから卒業できない人もいる。あなたの会社や友人に「いつも他人からバカにされる」や「職場は毒上司ばかり」だと訴える人はいないだろうか。今回はそのような悲劇の人に会った時を例にあげて、人間関係で役立つ正規分布図を使った思考法を紹介していく。

正規分布図とは何かというと、山のいちばん高いところが平均値を表している図のことである。平均値から離れるほど数が少なくなっていく(図を参照)。統計学を学んだことがなくても、マーケティングで使うイノベーター理論の図なら見たことがあるかもしれない。それと同じである。

正規分布図

出典 : Wikipedia (https://ja.wikipedia.org/wiki/正規分布)

正規分布に近い分布を持つ例として、身長の分布をあげることができる。日本人女性の17歳時の平均身長は約158cmである。正規分布図でいうと山頂部分が158cmで、その前後の身長の人がもっとも多い。そして離れれば離れるほど(130cmや170cmの人)その数は少なくなる。

人間の性格のデータがないので検証しようがないが、ここでは、人間の性格も正規分布に従うものと考えてみる。横軸を人間の「意地悪度」として、右に行けば行くほど超意地悪。左に行けば行くほど超善人と考える。平均は可もなく不可もない普通の人である。それが人口の68.3%ぐらいいる。

そこにちょっといい人、ちょっと意地悪な人を含めると全体の95.5%ほどだ。超善人と超意地悪な人の合計が0.3%ぐらいである。このように当てはめてみると、わりと現実に近いと思えないだろうか。会社の同僚や友人の多くは普通の人だ。機嫌が良い時は優しいが機嫌が悪いと冷たくなるのは普通であり、その強弱はあるものの大多数の人がそこに集結している。

あなたの友人や会社の同僚で「『いつも』他人から馬鹿にされる」という人がいる場合、正規分布図を使って考えることできる。最初のうちは親身に悩みを聞いていても、なんかこの人おかしいなと感じはじめたことはないだろうか。正規分布図に従えば、他人のことを馬鹿にする超意地悪な人は少ない。ということは、悩んでいる人のほうが、並外れた超劣等感の強い人だったということだ。本当に悩んでいる人もいるかもしれないが、「いつも誰からも」バカにされるということは確率的に少なく、その人が0.3%の超劣等感の強い人という可能性がある。

「いつも」他人から馬鹿にされていると感じてしまう人は、何かに対して強く劣等感を持っていることが多い。たとえば、その人の同僚に港区女子がいたとして、港区の話を頻繁にする。そうすると、港区女子は何気なく自分の住んでいる場所の話をしているだけなのに、劣等感が強い人は「私の住んでいる場所を馬鹿にされた」と感じるかもしれない。また、ある人が彼氏とのデートでロブションに行った話をしたとする。劣等感の強い人の彼氏は庶民派なのでデートの時は鳥貴族一択だ。相対的に鳥貴族は安い店なので、彼氏自慢されて馬鹿にされていると感じているかもしれない。

劣等感に包まれている限り、他人の何気ない一言で「馬鹿にされたと」感じ続けなければならない。しかし、それで逐一怒ったり他人を恨んだりしても仕方ないので、自分自身に向き合うことを重視したほうがいい、ということを劣等感の強い人たちに遠巻きに正規分布図は教えてくれる。また超劣等感の強い人が近くにいる場合は、関わると厄介なことに巻き込まれる可能性もあるので、遠巻きに静観するのが最善の策である。

また、転職や新しい職場に異動する時にも正規分布図は使える。新しい環境に行くと皆が皆、意地悪な人に見えてしまうことがある。何か聞いても「今忙しいから」と冷たく返されたり、目を見て話してくれないなどだ。そういう時は正規分布図を頭に浮かべて、多くの人が可もなく不可もない普通の人だということを思い出して欲しい。しばらく時間が経つと、最初は怖かったけど単に人見知りで実はいい人だったという現象は多くの人が経験してきたことだろう。会社が超ブラック企業ですべての人がイライラしていて意地悪の温床になっている可能性がないとは言えないが。
受け入れる側においても、新しい環境に入ってくる人には皆が皆、正規分布図の0.3%の超意地悪な人に見えかねないことを知っていれば、少しでも親切に接してあげようと思うことができるだろう。

正規分布図による思考は、極端な人間関係に振り回されず、冷静に考える手段としても役に立つと思う。

ほり屋飯盛(ほりやめしもり)
  • 3月に大学を卒業しました
36歳で大学に入学。まわりの学生には19歳と偽り、はじめはオープンキャンパスの学生トークショーに出演したり上手くやっていて、来年こそはミスキャンパスもいけるかもと思っていたが、「プラザ」を「ソニプラ」、「プリント」を「わら半紙」と言ってしまったことから実年齢を怪しまれはじめる。最近では「ほり屋さんの年齢を探ると社会から消される」と噂が流れ、ミスキャンパスへの道が閉ざされ気味。社会科学専攻。38歳の目には最近の大学生や大学はどのように見えるのかなど書いてます。

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