阿刀田 高著『90歳、男のひとり暮らし』

──なんで? そんな馬鹿な──
 鏡の中が戸惑いから苦笑に変わった。指先を見つめた。老いはこんなところにも忍び込んでくるらしい。
 ──ネクタイが結べない──