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“ロンドン便り”

2013年05月14日

保谷範子

こんにちは。今年3月まで【てらこや】編集を担当しておりましたほうやです。私はこの4月よりイギリス ロンドンにて生活しています。
慶應MCCの仕事から少し離れ、家族の転勤でこうして海外生活をすることになったのもよい機会、この場をお借りしてロンドンそして欧州の”いま”をお伝えできればと思っています。すでに何度も訪れていらっしゃる方、詳しい方にとっては至極当然のことばかりかもしれませんが、ロンドンと海外生活の”ビギナー”は、このようなことに関心をもち感動するのだとおつきあいいただけましたら嬉しい限りです。


こちらイギリスは日本と同じくただいま春まっさかり。渡英してからのひと月の間に咲き誇っていた春の訪れを告げるスイセンも終わり、八重桜やチューリップなど春の花の二番、三番バッターへと移り、街や公園いたるところで咲き彩っています。
リージェントパーク暖かな日は最高気温が22~23度になることも多く、すでに20時過ぎまで明るいこの時期、日中は公園で散歩や芝生で日光浴をしている人、カフェのテラス席でお茶をする人、また夕方のパブではスタンディングで仕事後の1杯を楽しむ人々が店の外まで溢れるほど(こちらでは、どんなに寒くてもスタンディング、店の外まで溢れて飲む方が多いようですが・・・)、暖かくなる季節を身体いっぱい愉しんでいる人で賑わっています。ロンドンビギナーの私にとってはこのうえない季節。 ここぞとばかり、いつまでも明るいのをいいことに時間を忘れ名所探訪に勤しむ毎日です。
ロンドンの主たる見どころと言われる場所は集約されており、ロンドンのへそとも言うべきトラファルガー広場(Trafalgar Square)、鉄道で言えばチャリング・クロス駅(Charing Cross Station)から半径約3-4km内に多くの名所があります。そのため、季節の良いこの時期は徒歩にてまわるのももちろん良いのですが、世界一長い歴史を持つ地下鉄、一目見ただけでロンドンの街だとわかる赤い二階建てバスなどを利用することで、ロンドンの街の楽しみはより一層広がります。なんせ、ロンドンは交通機関それ自体がロンドン名物とも言われるほどですから。
Undergroundロンドンの地下鉄(Underground)は1863年に地下に鉄道を走らせることを世界に先駆け成功した世界最古の地下鉄道ネットワークと言われています。当時の日本はこの数年後に明治維新が起こり、1871年から数年間、西洋文明の調査に赴いた岩倉使節団はロンドンの地下鉄、交通ネットワークの近代化に度肝を抜いたと文献にも残っているのですから当時のイギリス技術のすごさを感じます。
現在は12路線、ピカデリーライン(Piccadilly Line)などかなり深いところを通っているものが多く、地上から線路に到着するまでの長~いエスカレーターにまず圧倒されます。(ちなみに、こちらではエスカレーターは右側に寄って、左側が歩いて上り下りする人のために空けておきます。関東の逆、関西と一緒ですね)。特に古い駅には、まだエスカレーターが設置されていないような場合もあり、30-40人位が一斉に載ることができるくらいに大きなリフト(エレベーター)が稼働しています。そのような駅では、ラッシュ時にはリフト前に大量の人が並んでおり、思わず階段を選びたくなってしまいますが、駅の階段は場所が狭くらせん階段の場合も多く、深い地下へ何百段も降りるまでには目が回り足がガクガクになってしまうため、少しの時間、リフトを待つことのほうが得策です。一度に数十人の人が載るのですから、あっという間に溜まっていた人がはけていくのです。
地下へ下り、プラットフォームに立つと、構内は半円のような丸い形、電車も丸く、身体の大きなイギリスの方々のなかには、ちょっとかがんで乗っているような人もいて、日本の車内に比べると天井が低く車内幅も狭く感じます。このタイヤのチューブを半分に切ったような丸い形から、地下鉄のことを”Tube”という愛称で呼ばれているのも納得です。長い歴史が物語っているということでもあるのでしょうか、駅の構内は薄暗く、重厚な感じさえします。現在は、各線、駅ともに老朽化が進んでいる箇所も多いとのことで、夜間や週末には線路の取り換え工事などが行われていることも頻繁で、特に週末はある区間や線ごと運休になっている場合もあるため、駅に貼られている運行案内には要注意です。
二階建てバス初めてロンドンを訪れ、この二階建てバスが珍しいものではなく、街中のいたるところで走っていることにまず驚いてしまいました。あっちを見ても、こっちを見ても赤い二階建てバスが数珠つなぎの如く走っています。ロンドンのバスがモーター動力車となり、自動車が使用されたのは1900年代初頭のこと。それまでは馬車で、産業革命のさなか大量輸送が求められ、乗合馬車の屋根の上にも席をつくり客を乗せていた二階建て馬車が現在のバスに繋がっていると言われています。
高い車体、運転するのも難しいのではないかと思いますが、幹線道路だけではなく、割と細い道を走る路線にも二階建てバスは縦横無尽に進んでいきます。(道が空いていれば、日本のバスよりもスピードを出すことも多く、走行中の車内の移動、特に2階への階段上り下りなどは注意が必要です)
中心地は渋滞が多いため、混んでいる場合には多少時間がかかりますが、街の様子を眺め、知るためにはバスは最高。特に、二階最前列の席に座ることができた場合には特等席にて観光をしながら移動を楽しむことができます。ただし、二階最前列は席取り競争激しく、なかなか座ることができないのですが。
地下鉄も同じですが、ロンドン市内を頻繁に走るバスには日本のような分単位の精緻な時刻表はなく、「この路線はだいたい5~7分おきに走っています」といったような簡単な表示があるのみです。地下鉄の駅、大きなバス停には、電光掲示板があって次はあと何分でやってくるのかおおよその時間を知ることはできますが、細かな時間差は気にしないというのがこちらの傾向。ただ、昨年のロンドンオリンピックを機に、ロンドンの街や交通網案内の状況は格段に便利になっているそうで、電光掲示板に加えスマートフォンの普及とともに、各バス停に到着するバスの状況が細かくわかる運行状況案内アプリも出ており、限られた時間を有効に使い移動しようとする意識は万国共通のものとなりつつあるのかもしれません。ちなみに、地下鉄やバス車内では、スマートフォンや電子書籍を手に何かを熱心に読んでいる、ゲームをしている人が思っていた以上に多いというのも日本と同じ傾向のようです。
格段に改善が進んでいるなか、唯一とも言える、バスに乗っていて困ることは、終点まで到着することなく、路線途中のバス停で突然ストップしてしまうことです。車体の調子なのか、運転手さんの気まぐれなのかわかりませんが、「ここで停止」のアナウンスが流れると、乗客は文句も言わずに当然の如くバスから降り、次の交通手段へと各自向かっていきます。ロンドンに来てまだ数週間しか経っていない私でも、この”バス突然停止”はもう数回経験していますので、日常、頻繁にあることなのでしょう。最初は皆が一斉に降りるため終点でもないのにどうしたものかビックリ、「えーっ」といちいち落胆していましたが、最近は「またか仕方ない」とさっさと次の交通手段をどうするか考えるようになっています。
ブラックキャブ普通に生活をしていると、地下鉄、バスに比べお世話になる頻度は格段に落ちますが、ロンドンのタクシー、通称”ブラックキャブ(Black Cab)”もロンドン名物の交通手段です。黒塗りの車体(最近は、広告塔となっていて、車体全体に賑やかな塗装をしている車も多く見かけます)は、ロンドンの街の気品を醸し出しているようにも感じます。路地裏のような小さな通り一つ一つにも名前がついているロンドン。厳しいタクシー・ドライバーの資格を持っている運転手さんは、すべての通りの名前を覚えなければ試験にパスできないとのことで、行き先の通りの名前を告げれば、きちんと目的地まで連れていってくれます。
道にあまり詳しくない、カーナビ頼りの運転手が増えているようにも思う日本のタクシーと比べると、”ブラックキャブ”の運転手であるという誇りが伝わってくるようです。
まぁ、タクシーの運転手と言えば、お客さんとの会話も楽しんでいるというのはいづこも同じなのでしょうか。こちらの運転手さんも、運転席と後部座席の間にある透明なアクリル板越しにいろいろと話かけてくれます。「どこから来たの?観光?」「日本人はたくさん乗せたことがあるよ。この前なんかね…(延々続く)」…と、イギリス英語に慣れていなかったり、特に訛りの強い場合には、お話されていることのほとんどを聞き取れないことが多く気のきいた返答もできずに残念な限りなのですが、運転手さんのおしゃべりに車内も明るく楽しいひとときを過ごすことができます。
この他にも、ロンドンには各主要駅から空港、近郊、遠距離へと行く鉄道やコーチ(Coach)と呼ばれる遠距離バスなど網の目の如くさまざまな交通手段があります。パリ、ブリュッセルをはじめ、ドーヴァ海峡トンネル(Channel-Tunnel)を通りイギリスとヨーロッパ大陸を結ぶユーロスター(Eurostar)は日本でも有名、観光にも欠かすことできない手段ですね。こちらに来て少し一段落したいま、私もそろそろユーロスターを使ってパリへの旅行を検討してみたいと思っています。
ボリスバイクもうひとつ、最近のロンドンで欠かすことができない交通手段に”ボリスバイク(Boris Byke)”と呼ばれるレンタサイクルがあります。正式名称は主なスポンサーである金融機関から「バークレイズ・サイクル・ハイヤー(Barclays’Cycle Hire)」ですが、サイクリング好きな現名物ロンドン市長ボリス・ジョンソン氏が積極的に導入したのを理由にこう呼ばれているそうです。
「えっ、こんなところにも!」と思うような路地裏、道端にもドッキング・ステーションと呼ばれる駐輪所が400か所以上あり、30分までは無料、1時間£1、以降24時間まで料金設定があり、市民も観光客も誰でも借りて自由に乗り降りすることができます。自転車用ヘルメットをかぶりスピードよく走り抜けるロンドナーの自転車に加え、この青いポリスバイクが行き交う風景もロンドンの名物になりつつあるかもしれません。
ただし、イギリスでは自転車が歩道を走るのは違法、自動車と一緒に車道を走るのには少々勇気が要ること、ロンドンにいると、成人女性とは言え子どもよりも小さいのではと思う自分の身体では、こちらの人の体型にあわせた大人用自転車を乗りこなす自信もなく、私は経験せずにすんでしまいそうですが・・・。
今回は、ロンドンの交通手段あれこれについて綴ってみました。まだまだ地図とにらめっこしながらさまよっている状況ですが、近い将来、颯爽と地下鉄やバスを乗りこなし市内ご案内できる日がくるよう、気持ちの良い今の季節、あちこち自分の足で目で確かめて、体験していきたいと思います。
今日もロンドンは5月の爽やかな風が吹いています。では、また次回お目にかかります!
(ほうや)
※次回以降は【てらこや】の新コーナーとしてコラム形式で【ほうやのロンドン便り】をお届けいたします。

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