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組織開発組織開発

組織開発

組織開発(Organization Development、OD)とは

組織開発とは、職場や組織のパフォーマンス向上を目的としたさまざまな働きかけです。仕事の個業化、個人の価値観や働き方の多様化などによって、チーム組織の求心力低下が重要な課題になっている今、職場組織を活性化する取り組みとして組織開発が注目されています。
ここでは組織開発の歴史と人材開発との関連性、また組織開発において特に重要な要素である「コンテントとプロセス」について説明します。

1. 組織開発(Organization Development、OD)とは

組織開発(Organization Development、OD)は「組織」のパフォーマンス向上を目的とした働きかけを差します。「開発」という言葉はDevelopmentの他の訳語、「発達」「成長」「進展」などの方が雰囲気が伝わりやすいかもしれません。つまり開発とは「組織の体質改善」であり、医療に例えると外科手術というよりは「漢方薬や生活改善」のアプローチで、組織全体に働きかけようとするものです。

2. 組織開発の発祥

組織開発は、1950年代にハーバード大学の社会心理学者であるクリス・アージャイルやダグラス・マクレガー、オハイオ州立大学の心理学者であるリチャード・ベックハードらによって提唱され、1960年代にかけて欧米を中心に急速に発展しました。
この時期、企業が急速に成長し、組織の効率性や生産性を向上させるための取り組みが求められるようになりました。その取り組みには組織全体が関わることが必要、つまり組織のハードな側面(構造、制度、仕組み、戦略)だけでなく、社員やグループの参加と協力に基づくアプローチが必要であるとしたのが組織開発です。

組織開発は、人間関係論や行動科学、システム理論などの理論や手法を統合して、組織改善のための包括的なアプローチを提供しました。1960年代以降、組織開発は、企業や非営利団体、政府機関などの組織に広く導入され、現在では、組織の持続的な発展やイノベーションに向けた重要な取り組みとなっています。

3. 組織開発が
注目される背景

グローバル化の進展、技術革新の進展によってこれまでも日本の事業環境は多様化・複雑化しています。特に近年、日本で組織開発が注目される背景には以下のような要因が考えられます。

労働人口の減少と多様化

労働人口の減少により、企業が人材を確保することが難しくなっています。同時に、年功序列や終身雇用の終焉により、個人の仕事に対する価値観も大きく変化しています。
企業は競争力を維持するために、柔軟な働き方やワークライフバランスを重視し、すべての社員が活躍できる環境を作る必要があります。

チーム・組織の求心力の低下

技術・テクノロジーの進歩と仕事の専門性の高まりによる個業化、ジョブ型移行、そしてリモートワークの常態化により、メンバーが一緒に働く機会が減り、チーム・組織の求心力が低下しています。

『組織開発の探究』(中原淳・中村和彦ダイヤモンド社、2018年)では、求心力が低下する現状で、チームや組織の求心力を高めるのが組織開発であると位置づけています。人と人のつながりが希薄になるリモートワーク下で、チームや組織の求心力を高め、個業ではなく協働の関係を築くことは重要な課題です。

4. 組織開発と人材開発(HD)の相違点、関連性

組織開発と人材開発は、いずれも組織のパフォーマンスの向上を目的としていますが、アプローチ、働きかける対象が異なります。
人材開発は組織構成員である「人」にフォーカスした働きかけであり、組織開発は人と人との「関係性」に重きを置いた働きかけです。

人材開発は、個人のスキルや能力を向上させることによって、組織全体の生産性や競争力の向上へつなげる取り組みです。人材の活用や定着を促進するために行われることが多く、社員のトレーニングやキャリア開発、マネジメント能力の向上など、個人の成長に関する取り組みを行います。

組織開発は、人間的側面つまり、人の気持ちやモチベーション、コミュニケーションや信頼協働といったものに着目します。人間的側面は目に見えにくく、職場で何が起こっているのか、問題は何か、そしてどう対処するのかを、当事者が発見していく取り組みです。

組織開発と人材開発は、互いに補完的な関係にあります。組織開発が組織の改善や発展を促進することで、社員の成長や能力開発の環境を整備し、人材開発が組織の効率性や生産性の向上を促進することで、組織開発の成果を加速させることができます。

5. 組織開発における「コンテント」と「プロセス」

組織開発において、コンテントとプロセスは重要な要素です。

コンテントとは、組織開発の目的や目標、問題点などの「内容」を指します。組織開発におけるコンテントには、以下のようなものがあります。

  • 組織の戦略的目標
  • 組織文化や価値観
  • 組織構造やプロセス
  • 組織内の人間関係やコミュニケーションの問題点

これらのコンテントを分析し、改善することで、組織の生産性や競争力を向上させることができます。

一方、プロセスは、組織開発を実施するための「手順や方法論」を指します。プロセスにはコンテントに応じてさまざまな手法が存在し、以下のフェーズに沿って進められます。

  • 診断・分析フェーズ:問題点の洗い出しや分析を行う
  • 計画・実行フェーズ:改善策の立案や実施を行う
  • 評価・維持フェーズ:改善策の成果を評価し、継続的な改善を行う

プロセスを適切に設計し、実施することで、組織の問題点を的確に把握し、改善策を効果的に実施することができます。

コンテントとプロセスは、相互に関連しており、どちらかが欠けていては組織開発の成果を得ることはできません。コンテントを分析し、プロセスを適切に実施することで、組織開発を効果的に進めることができます。

6. 組織開発に
関心のある人へ

慶應MCCでは、中村和彦・南山大学教授による「組織開発論 -その理論と実践-」プログラムを開催しており、組織開発を理論から手法まで体系立てて学び、手法の実習や対話を丁寧に行います。組織開発に当事者として取り組もうとする方々が参加し、理論と事例、そして教室や現場での実践を振り返りながら実行力を高め、同時に組織開発実践者(チェンジエージェント)としての自己成長に取り組みます。

◆先端・専門プログラム「組織開発論 -その理論と実践-
講師:中村和彦(南山大学人文学部心理人間学科教授)
ゲスト講師:中原 淳(立教大学経営学部教授)
ゲスト講師:企業の組織開発実践者

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