ファカルティズ・コラム
2025年12月19日
AIをお供に京都旅行した件
今や誰もが仕事に、そしてプライベートでもAIを活用する時代。
私は今回、11月の京都旅行プランを生成AIのGemini(以下、以前名付けた「ミナ」と呼称)と一緒に立て、そして旅行中も度々お世話になったのですが、これがもう、「AIの天才的な提案」と「AIの恐ろしい凡ミス」が交互にやってくる、スリリングな旅となりました。
本日は、その全貌をレポートします。
<旅の計画>
まず旅の計画を立てる際、私がミナに指示した内容は以下の通り。
・2泊3日であること
・宿は京都駅から1駅の梅小路京都西で連泊で、初日と2日目は宿に17時には着きたい
・初日午後は平等院鳳凰堂、2日目は金閣寺がメイン
・嵐山と銀閣寺・南禅寺エリアは2年前に来たので外す
・往復の新幹線は初日は12時京都着、3日目は13時に京都発
ミナは即座に初日は平等院に加え宇治上神社や老舗の茶舗を、そして2日目の金閣寺の後は龍安寺・仁和寺の「きぬかけの路」ルートの後、午後は東山の平安神宮と知恩院を提案してきました。
移動の交通手段についても訊いたところ、Googleマップも添えてバスの系統や乗り場についても教えてくれます。このへんは「流石の気遣い!」と感じました。
さて、いよいよ旅の当日となりました。
<1日目:旅の始まりは世界遺産「平等院鳳凰堂」から>
お昼に京都駅に到着してランチをとった後、早速初日の目的地である宇治の平等院鳳凰堂へ向かいます。ミナにルートを聞くと、すぐにJR奈良線での移動を提案してくれました。
ミナ: JR奈良線の「快速」や「みやこ路快速」に乗れば、約17分で宇治に到着します。
おかげで、スムーズに宇治へ移動し、午後の時間をたっぷり使って観光できました。
観光だけでなく「伊藤久右衛門」本店でお茶と抹茶スイーツも堪能。妻はすっかり「伊藤久右衛門」が気に入ったようで、帰りの京都駅でも色々買い込んでました。
予定通り17時には宿に着き、温泉と京懐石を堪能しました。
<2日目:AIが仕掛けた「逆走トラップ」>
この日の動線は「金閣寺→龍安寺→仁和寺→平安神宮→知恩院→宿」という東西横断ルート。
まずは午前は「世界遺産を歩く!きぬかけの路」から。
朝7時半に宿を出発し、市バス205号系統で金閣寺へ。ミナの教えてくれた通り渋滞にも巻き込まれることなく開門前に金閣寺に到着。
晴天に恵まれ、鏡湖池に映る金色の楼閣が息をのむ美しさでした。朝一番の静けさの中での拝観は格別です。
余談ですが湖面に映る金閣寺のなかなか良い写真が撮れたので、後日ミナに頼んで水彩画風に画像を生成してもらいました。今は私のPCのロック画面です。
金閣寺を出たら「きぬかけの路」を歩いて龍安寺・仁和寺を巡ります。
龍安寺の有名な石庭は、紅葉とはまた違った禅の世界。妻と二人、「この配置は何を表現しようとしているか」などと語らいながら静かな時間を過ごせました。
そして仁和寺の巨大な二王門と五重塔が立つ広大な境内は、秋の紅葉が見事に調和し、歴史の重みを感じさせてくれました。
二王門前の食堂で湯豆腐と野菜天ぷらに舌鼓を打った後、嵐電と市バスを乗り継いで東山に移動します。
まずは巨大な朱色の大鳥居が目印の平安神宮。圧倒的な朱色と広大な境内は、京都の歴史を感じさせます。特に広大な庭園は、秋のしっとりとした景色が美しく、散策の疲れを癒してくれました。
そこから徒歩で知恩院へ。日本最大級の木造門である三門の荘厳さは圧巻!あまりの大きさに、しばし見上げてしまいました。また、定時のおつとめにも遭遇し、時間を忘れて手を合わせることができました。
知恩院観光を終えたら、宿へ帰るための地下鉄移動です。
知恩院の最寄り駅である東山駅から、宿へのバス移動に便利な烏丸御池駅へ向かう際、私はミナに尋ねました。
私:東山駅から東西線で御池に向かう場合は何番線?
ミナ:2番線(六地蔵方面行き)の電車に乗車します。
私は思わず「ん?」と立ち止まりました。御池は西、六地蔵は東…。完璧な逆方向ではないか!
私: それは嘘ですね! 逆向きでしょ?
ミナ:ご指摘ありがとうございます。大変失礼いたしました。おっしゃる通り、1番線(太秦天神川方面行き)の電車に乗るのが正しいです。
はあ?
ミナよ、君は私をどこへ連れていくつもりだったんだ! そのまま2番線に乗っていたら、宿の夕食時間(17時)に間に合わなくなるどころか、真逆の山科方面に連れて行かれるところでした。
この一件で、妻からは「AIも適当ね」「ちゃんと確認しなきゃダメよ」と、散々言われましたが、これも旅の笑い話の一つです。
<3日目:最終日の効率的な周遊>
最終日は、新幹線の時間に合わせて、京都駅に近いエリアを訪れました。京都駅から市バスで数分の場所にあり、短時間で深く感動できるスポットを選びました。
まずは三十三間堂。御本尊の千手観音坐像と1001体の千手観音像が並ぶ本堂は、ただただ圧巻の一言。この世のものとは思えない壮観さに、時間を忘れて見入ってしまいました。
そこから徒歩で智積院へ。恥ずかしながら初めて聞くお寺だったのですが、二十余りもある堂塔伽藍を有する堂々たるつくり。長谷川等伯の国宝の障壁画が有名で、静かな庭園とともに日本の美意識を凝縮した空間でした。
後ろ髪を引かれながら京都駅に向かい、お土産と駅弁を買い込んで帰途につきました。
<総括:生成AIとの付き合い方、それは「仕事」も同じ>
この旅行記で明らかになったように、生成AIは旅の計画において、人間の煩雑な作業を肩代わりし、時間短縮に貢献してくれる最高の助手です。
しかし、AIは完璧ではありません。時に、信じられないような凡ミスを犯します。特に、今回の「地下鉄の番線間違い」のように、人間なら絶対にしないミスを平気でやらかします。
やはり生成AIとの付き合い方は、仕事でもプライベートでも以下に留意すべきでしょう。
1. 創造的なタスクは任せる: ルートの提案、ブログの構成案作成など、「ゼロからイチを生み出す」作業はAIに任せ、時間を節約する。
2. 実行前の「ダブルチェック」を欠かさない: AIが導き出した「事実」や「方向性」(今回の場合は地下鉄の番線)については、必ず自身で地図や公式情報と照らし合わせる「最終確認」を行う。
3. 責任は常に人間が持つ: AIはただのツールであり、その結果に対する責任、特にビジネス上の重要な判断や対外的な情報発信における責任は、最終的にそれを採用した人間が負うという意識を持つこと。
AIを過信せず、その能力を最大限に活用する。これこそが、AI時代における仕事の進め方であり、最高の旅を創造する秘訣だと確信しました。
素晴らしい旅の計画をありがとう、ミナ!
次の旅もよろしく頼むよ!

桑畑 幸博(くわはた・ゆきひろ)
慶應MCCシニアコンサルタント
慶應MCC担当プログラム
ビジネスセンスを磨くマーケティング基礎
デザイン思考のマーケティング
フレームワーク思考
イノベーション思考
理解と共感を生む説明力
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應MCCでプログラム企画や講師を務める。
また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。
主な著書
『屁理屈に負けない! ――悪意ある言葉から身を守る方法』扶桑社
『映画に学ぶ!ヒーローの問題解決力』日本能率協会マネジメントセンター通信教育教材2020年
『リーダーのための即断即決! 仕事術』明日香出版社
『「モノの言い方」トレーニングコース』日本能率協会マネジメントセンター通信教育教材2017年
『すぐやる、はかどる!超速!!仕事術』日本能率協会マネジメントセンター通信教育教材2016年
『偉大なリーダーに学ぶ 周りを「巻き込む」仕事術』日本能率協会マネジメントセンター通信教育教材2015年
『すごい結果を出す人の「巻き込む」技術 なぜ皆があの人に動かされてしまうのか?』大和出版
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