ファカルティズ・コラム
2025年12月26日
定年前の「助走」をどう走るか――2025年の振り返りと新年の抱負
早いもので今年もあっという間に年の瀬。皆さんにとって、2025年は良い年でしたか?
私にとって2025年は、「AIとの共生」と「組織・社会の再定義」を深く考えさせられる1年でした。
このコラムでも、AIを相棒にした京都旅行の顛末(『AIをお供に京都旅行した件』)から、生成AIとの対話(『生成AIは売れっ子ミュージシャンの夢を見るか』)、さらには殺伐とした雇用情勢(『「ステルス解雇」と「リベンジ退職」』)やハラスメント問題『リスペクト・ハラスメント』まで、幅広く論じてきました。
時にはプロスポーツの問題点『「税リーグ」からの脱却』や「侘び寂び」という日本古来の美意識に立ち返って(『「侘び寂び(わび・さび)」とは日本文化だけのものか』)論じ、さらに「アポトーシス(細胞死)」という生物学的視点から組織のあり方を問い直してきました(『アポトーシス:組織にも必要不可欠な「死」のメカニズム』)。
そんな思索の旅を続けてきた私が、いま改めて見つめ直している「時間」があります。
それは、「2028年3月の定年まで、あと2年余り」という現実です。
2026年のテーマ:本格的な「カウントダウン」を深化の糧にする
実際の退職は2028年3月となりますが、2027年4月に65歳の節目を迎える私にとって、2026年はその前哨戦となる極めて重要な1年になります。多くの人が定年前を「消化試合」や「ソフトランディング(軟着陸)」の期間と捉えがちですが、私はあえてその逆を行きたい。
よって2026年の抱負は、「定年までのカウントダウンを、プロフェッショナルとしての『深化』と『手放し』のエネルギーに変える」こととしました。
仕事への取り組み方として、以下の3点を大切にしたいと考えています。
1. 「言葉の定義」を磨き直す
今年のコラムでも「共感」や「わかる」の定義を掘り下げてきました(『「共感」を定義する』、『「わかる」の多面性』)。
仕事において、曖昧な言葉をそのままにしないことは、相手への最大のリスペクトでもあります。最後の日まで、一つひとつの概念を丁寧に扱い、MCCでの講座や企業での研修の参加者の方々にその「思考の型」を伝えていきたい。
2. 組織の「アポトーシス」を自ら体現する
かつてここでも書いた通り、組織の若返りには、古い細胞が潔く退く仕組みが必要です。私が抱えている知見や役割を、単に「引き継ぐ」のではなく、次世代が新しい形に作り替えやすいよう、この2年をかけて丁寧に「解体して渡す」。そんな、美しい引き際をデザインし始めます。
3. AIという「新しい知性」との対話を究める
定年後は、組織の看板を外した一人の人間としての活動が始まります。その時、最大のパートナーになるのは、やはりAIでしょう。今年1年を通じて感じたAIの可能性と危うさを踏まえ、2026年はさらに「AIを使いこなす側」としてのスキルを研ぎ澄ませ、孤独ではない自由な働き方の基盤を固めます。
最後に
社会人として、また一人の講師・コンサルタントとして、これまでの経験は血肉となっています。しかし、それに固執すれば「過去の人」になります。
2026年は、2028年のゴールを見据えながら、キャリアを一度「真空パック」して整理しつつ、真っさらな気持ちで新しい学びを取り入れる。そんな「全力の助走」の年にしたいと考えています。
「まだ2年ある」ではなく「この2年で何を残せるか」。 2025年に綴った数々の言葉を道標に、新年度も走り抜けたいと思います。
皆様、本年もありがとうございました。そして、来年もどうぞよろしくお願いいたします。
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