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夕学レポート

2019年01月16日

希少性で自分の価値を上げる 藤原和博さん

2003年に発売されたSMAPの大ヒット曲『世界に一つだけの花』の歌い出しにいつも違和感があった。

No.1にならなくてもいい
もともと特別なOnly one

いや、待てよ。「Only oneの人こそが、No.1になるんじゃないか?」と引っかかっていたのだ。
藤原和博例えば、フィギュアスケートの羽生結弦選手は類い稀な運動神経と努力によって磨かれた豊かな表現力でオンリーワンかつナンバーワンの選手である。また安い値段で高品質の商品を提供できるユニクロを展開するファストリテイリングは、オンリーワンかつナンバーワンの企業であり、柳井正氏が世界長者番付で上位に名を連ねていても、まあ当然かなと思う。なので、正しくは「もともとかどうかは別として、特別なOnly oneはNo.1を兼ねている」と夢も語呂もない歌詞を考えてしまうのだが、藤原和博先生の提唱する「キャリアの大三角形」は、まさに「Only one の人材がだいたいNo.1の人材になる」ということなのだ。


まずは「情報編集力」のお話から。藤原先生曰く、これからの時代に重要な力は「情報編集力」である。耳慣れない言葉ではあるが、暗記や計算などの正解を正確に言い当てる「情報処理力」に対して、知識や経験を組み合わせて、自分だけでなく他者が納得する仮説を出す力が「情報編集力」である。今回の講演中にも隣の席の人たちと1分間ぐらいの時間でブレストを行ったのだが、白いものを、記憶をたどりながら思いつくままあげていく(豆腐、牛乳、雲など)ことが情報処理力であり、白いものに黒をかけたら良いものや面白いものをあげていく(黒い綿棒、黒いケシゴムなど)ことが情報編集力である。
つまり、情報編集力はかけ算のような考え方で、何かと何かを組み合わせて新しいアイディアを出すことなのだ。その時も自分の脳だけではなく、他人の脳と繋がる感じで、くだらないことを話していたら、自分一人では思いつかなかったことが思いついちゃったみたいなのがいい。実際に、黒い綿棒や黒いまな板などのヒット商品はこのようなかけ算的な情報編集力から生まれてきた。
 
そして、このかけ算的な考えから「キャリアの大三角形」のお話へ。自分の価値を高めるためには、その希少性を高めることが重要であるという。経済学の文脈で言えば、人々の需要量に比べて、その供給量が少ないと希少性が高まり、価格は上昇する。例えば、名医やプロスポーツ選手、凄腕経営コンサルタントなどは多く存在していることはなく、希少性が高い。彼らの給料を労働時間で割ると(=時給)、その価値は約8万円(もしくはそれ以上)と高くなる。反対に誰でもできるような仕事や、AIやロボットに代替可能な仕事は時給が安くなる。
だが、プロスポーツ選手や凄腕コンサルたちは100万人に1人というまれな存在である。私ぐらいのアラフォーにとっては、これからプロスポーツ選手や、世界で活躍するレベルのコンサルタントを目指して自分の時給を上げていくのは難しい。目指すことも不可能ではないが、人生100年時代と言われる現代でも、一つのことを極めて時給を上げていくことはかなり大変そうだ。そこで、どうするか、である。
これからめちゃくちゃ頑張って100万人に1人になるのはかなり無理がある。しかし、
1/100 × 1/100 × 1/100 = 1/1000000
とするなら、100万人に1人の人間を目指すことも難しくない。
もしも、あなたがこれまでの人生で10年間ぐらいバスガイドの仕事をしていたのなら、バスガイドでは100人に1人の存在ぐらいにはなれている。そこで昔から犬が大好きで、次はトリマーの資格を取って5年ぐらい働いたとしたら、トリマーとしても100人に1人の存在になれる。さらに言えば、バスガイドでトリマーの資格がある人は
1/100 × 1/100 = 1/10000
と1万人に1人の存在となり、その希少性は増してくる。そして次には介護福祉士の資格を取り、そこで5年ぐらい働くとするなら、介護福祉士として100人に1人の存在にはなれる。あなたはバスガイドとトリマーと介護士として働いた経験から、高齢者向けのペットと一緒に行けるバス旅行を運営する会社を立ち上げたとする。お金はあるけど、ペットと離れるのが嫌で旅行を控える高齢者は沢山いる。その希少性と代替性のない企画から人気が殺到して、あなたの時給はアップする。そのような戦略的な三角形型キャリアパスで自分の価値を高めていくことがこれからの時代に必要だと藤原先生は説く。
ひと昔前までは「石の上にも三年」や「雨垂れ石を穿つ」などの言葉に代表されるように、一つのことを続けることこそが人生の成功において重要であり、その人の価値や信用を高めると思われていた。だからこそ、狭い世界で少ないNo.1という名のパイを奪い合うために競争することを否定するような歌詞が成り立っていたのかもしれない。
しかし、その価値観が大きく変化しているのか、もともとそうだったのかはよくわからないが少ないパイを奪い合うのではなく、少ないパイになって奪われ合うというか、選ばれることがナンバーワンかつオンリーワンなのだ。オンリーワンは希少であるからこそ、皆がそこに価値を見いだし、お金を払い、結果その人の時給が上がっていく。以前は「飽きっぽい」とか、「長く続かない」など、キャリアチェンジがマイナスのように評価されてきた。だが、このようなモードチェンジ的な生き方が、自分を唯一無二の存在にしていくのだ。
ほり屋飯盛

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