夕学レポート
2010年03月31日
7/20(火)小倉紀蔵さん 「日中韓はひとつになれるか」
第21回 7/20(火)の講師は、京都大学大学院教授の小倉紀蔵先生です。
東大でドイツ文学を学び、5年間の電通マン生活を経て、ソウル大で東洋哲学の修士、博士を修めたという小倉先生。そのキャリアだけ見ても、実に興味関心をそそられる方ですね。
専門は、韓国思想・文化で、NHKテレビのハングル語講座の講師も務めたことがあるそうです。
鳩山政権の誕生によって、「東アジア共同体」構想の具体的取り組みが進むかという期待もありましたが、内政問題と普天間基地移設対応で、それどころではないという情勢です。
欧米中心の国際秩序に楔を打つべく、文化や生活習慣を共有する日中韓の三国を中心に、「ひとつのアジア」を志向する大きな世界観を描けないかという大構想にはロマンを感じます。
しかし、日中韓の文明・文化史を専門に研究している小倉先生の立場からすると、あまりに歴史的文脈からかけ離れた考え方に映るようです。
曰く、「日中韓はひとつになれない」
思えば、日中韓には2000年を越える長い関係史があります。そして、つい150年前まで、その関係構造は、長らく不変でした。
対立、服従、協調、庇護等々、その時々によって風向きは変わりましたが、一貫して変わらなかったのは、中国が圧倒的な存在で、朝鮮が寄り添い、日本は少し離れた位置で適度にあしらわれている。そんな関係構造です。その構造の中で一定の秩序が構成されていたのではないでしょうか。
それが大きく変容したのがこの150年です。
辺境の「みそっかす」であったはずの日本が、他の二国を引っ掻き回してしまった構造です。変化が大きかった分、三国間の摩擦は大きく、感情的な行き違いは、いまも強く残っています。
「東アジア共同体」構想を、この150年の反省論理だけで考えることはできない、むしろその前の2000年の関係史をベースにして捉え直さなければいけない。
小倉先生は、そこから論を繙かれるものと思います。
日中韓の文化・文明論的考察。背筋を伸ばして聞いてみたい講演です。
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