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マンハッタンで家を買う<5>(入居)

2015年06月09日

寺尾 美香

12月、日本への一時帰国を目前に控え、1日も早く引っ越ししたかった我々は、物件購入が決まった5日後、クロージング(物件引き渡し)と同日に引っ越すというまたしても無謀な計画を立て、ミッドタウンの西から東に移動することになりました。

午前中搬出を終えると、お昼に書類のサインをしに弁護士オフィスへ。
ミーティングルームに入るなりそこに集まった人々の数にびっくり!

セラー(売り手)は初老のインド人夫婦でした。
そして双方の弁護士と不動産エージェント、メインバンクの担当者、私たち家族と、総勢11名が会議室の大きなテーブルを囲みます。

マンションひとつ買うのにこんなにもたくさんの人々が関わっていたなんて…しかも、こんなにも急なこちらサイドの希望日時によくもまあ全員がタイミングよく顔を揃えられたものです。

サインだけになぜ2時間もかかると言われたのかわかりませんでしたが、30枚以上もの書類に署名を求められ、あっという間に時間は経過。”契約書社会アメリカ”を肌で感じたのでした。

最後、外科医というセラーの奥さんから
「あそこはいい住まいよ。私たちは40年住んで家族の思い出が いっぱいつまってるの。あなたたちも素敵な家族の歴史をあそこでたくさん作ってね。Enjoy your new life!」
と、ニッコリと鍵を手渡されて初めてようやく実感がわいてきました。
いよいよ”My Home”になった瞬間でした。

その鍵で部屋に入り、午後からは休む間もなく搬入作業開始です。
部屋に荷物を運び入れ始めるとすぐに、ちょっとジム・キャリーに似た感じのおじさんが、真っ白な歯を見せて、すごいハイテンションで「ハーイ!」とやってきました。

管理人さんだそうです。

そういえば、物件探しの時に建物の説明書きに”live in Super”とあって、「1階にスーパーが入ってるんですか?」と、ちょっと期待して聞くと、「いやいや、住み込みの管理人(スーパー)がいるってことです」と、エージェントさんが苦笑いで教えてくれたことを思い出しました。

管理人さんは業者に「荷物を廊下に広げすぎるな」と細かく指示したり、私たちには「何か困ったことはないか?」などと搬入の最中も、ちょくちょく様子を見にきてくれたり、何かとお世話を焼いてくれて、なんだか頼りになりそうです。

床や壁の塗り替えが必要そうだったので相談してみると

「君らが日本に行ってる間にやっておくさ。業者の手配もオレの方でやっておくから任せとけって!
 支払い?大丈夫、立て替えとくから心配するな。
 払ってくれなきゃオレ、おまえんち知ってるから毎日ドアをノックするしな。Hahahaha!!」

と軽快に言うと、あっという間に業者を呼んできて、部屋の寸法を測ったり希望の壁の色を確認したりして、嵐のように去って行ってしまいました。

いやしかし、ニューヨークの管理人というのはこんなにも色々やってくれるのか。
東京時代に住んでいたマンションの管理人さんは、定年退職した(風の)おじさんがゴミ置き場を掃除したり、落ち葉を掃いたりしてくれたりはしたけど、もっとのんびりした感じでした。
実際、こちらでは、文字通り部屋の中まで踏み込んでくるし、同じ管理人でもずいぶん違う感じがします。

100世帯ちょっとのこの規模のマンションで、彼の他にも、24時間ドアマンが4ー5名交代でいて、ゴミ処理などをしてくれるハンディーマンが2名いるとのこと。

実は、これから毎月のローンの他に、管理費だけで月々$1800(約20万円)も払うことになるのですが、最初聞いた時には信じられませんでした。

せ、せんはっぴゃくドル??!!
一体どんな管理をしてくれるんだか?!

日本なら普通に毎月のローン返済に充ててもまだお釣りがくるほどです。。

でも、これだけスタッフがいると確かに人件費だけでも相当かかりそう。

もちろん全額彼らのお給料、という訳ではなく、今回購入したコープというタイプの建物だと、このうち半分が彼らの人件費や共有スペースの修繕等、建物の維持に充てられるメインテナンス料になります。
そしてだいたい残りの半分は日本でいうところの固定資産税としてマンションが支払う税金に充てられるそうです。
(cf:コープについてはこちらご参照ください→ Brooklyn Time 「コンドvsコープ」

毎月の出費としてただ出ていくだけの管理費。エリアや間取りによって全く異なりますが、このあたりのエリアで、2LDK、ドアマン付きだと、これだけで$3000を下らない物件も多く、家探しの最中はかなり頭を悩ませたところでした。

安心して住みたいだけなのに…
安全と清潔はタダじゃないのがニューヨーク、アメリカという国…

ところでジム・キャリー、ずいぶん調子良かったけど本当にちゃんとリノベーションしてくれたのかな。
半信半疑で帰国しましたが、見違えるように綺麗になった壁と床を見て、築100年近い物件のあちらこちらの不具合、困ったことなど、とりあえず相談できる彼の存在は外国人の我々には特に心強く、必要経費とあきらめるしかないようです。

ドアマンの人たちも新入りの私たちのことをしっかり覚えていてくれて、「日本はどうだったかい?」「昨夜はよく眠れたかな?」など声をかけてくれてあたたかい。

慣れないところでこういう人の優しさに触れると本当に嬉しいし、ありがたいものです。

日本の手みやげでも携えてお礼に行こうかと思っていたら、ちゃっかりスタッフ全員の名前が記されたホリデーカードがドアの前に届いていました。

これはずばり!クリスマス前の「ホリデーチップ」のおねだりカードでしょう!

と、ピンときたのには、入居前にエージェントが
「ホリデーチップは必ずドアマンやスーパーに渡して下さいね。これをやるかやらないかで、その後のスタッフさんたちの対応がガラッと変わりますから。」
と話してくれていたからです。

そういえば、クリスマス前になるとドアマンの人たちが急に優しくなるって友達も言ってったっけ。

そっか。そういうタイミングだったわけね。

まあ、そうだったとしても我が家は確かに彼らに助けてもらっているし、御礼したいので全員にホリデーチップを渡しました。
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お正月、日本ならお年玉、シンガポールではアンパオ(紅包)などを子供達にあげる習慣はありましたが、こちらではお世話になっているスタッフさんたちに、お歳暮でもお年賀でもなくチップ。
人間関係を良好にするための潤滑油に現金。

これもまたなんとも合理的、というかアメリカらしい年末の風物詩だなぁなどと思いながら、新生活はスタートしたのでした。
20150609_02

寺尾 美香(てらお・みか)
慶應丸の内シティキャンパスで4年9カ月間ラーニングファシリテーターとして多くのプログラムを担当。2014年4月よりNY在住。

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