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病院に行ける幸せ

2015年07月14日

寺尾 美香

少し前のことです。
熱っぽいし、ダルくて、疲れやすい。何もやる気が起こらない。
どしゃぶりの雨の中を歩いたので風邪でもひいたかなぁと思い、2-3日寝ていればよくなるだろうと思っていましたが、なかなかよくなりません。

娘をダンナに預けて友人とブルックリンを散策するというご機嫌な休日、大好きなVan Leeuwenのアイスクリームワゴンを見つけてもテンションがあがらない。あがるどころか、疲れてその場に座り込んでしまった自分。

これは・・・ただごとではありません。

翌日、ドラッグストアにひとっ走りして、風邪じゃないならもしかして、と妊娠検査薬を買ってテストすると、まさかの陽性でした。しかも、こちらの検査薬はすごくて週数まで出る!
思いのほか週数もいっていたので、すぐに産婦人科に行って確認してもらうことにしました。

先生のこだわりがない限り日本なら、まずどんな病院がいいか調べて、それから先生が選べれば選ぶし、患者に選択権がないケースもあるかと思います。

でも、ニューヨークではまずお医者さん選びからスタートします。
病院名やブランド、サービスも大事だけど、どこまでいっても
先生自身の”個”で勝負!
自ずと人気のある先生には予約が集中します。

そして、特別な事情ががない限り、先生を変えることはあまりなく、検診中お世話になるお医者さんが、出産の立会いまでしてくれるという長いおつきあいになるのが普通らしい。

まあそうは言っても最初の数回なら合わなければ他を探すこともできるでしょう。今回はまず妊娠の確認が出来れば良し。

”とりあえず”アポがとれる先生を探すことにしました。

出産経験のある友人に連絡して、どの先生に診てもらったか聞くと、マンハッタンで唯一の日本人医師のところで産んだ人が多いようです。

さっそくその先生のオフィスに電話をかけてアポイントをとります。

受付のお姉さん日本語。
こりゃ楽でいいな、と思っていたら我が家の保険は適用外とのこと。

そう、アメリカで病院探しの第一歩。
まず考えなければいけない最初の軸は「保険」です。

毎回お金の話でなんですが、世界一保険料が高いといわれる国、アメリカ。
我が家の場合も、民間の保険に、月々家族3人で10万円近くを自己負担しており、これまた家計のかなりのウェイトを占めるわけです。

これだけ医療費が高いと、入れない人、入るのは無駄、と考える人も当然出て来る訳で、昨年データで全米で13%以上もの人たちが無保険だとか。

もちろん救急車も有料なので、道ばたで頭から血をダラダラ流しながらも”救急車は絶対呼ばないでくれ!”と見物人に叫ぶ人もいるくらいです。

おそろしい。。。
こんな光景、日本じゃ考えられません。

アメリカには日本のような素晴らしい国民皆保険制度などなく、自分の身は自分で守る!しかない。

オバマケアが実現すれば、私たちもなんらか恩恵が受けられるのでしょうか・・・そうであって欲しい・・・

とにかく、保険適用外だととんでもない額の出費が予想されるため、保険がきくお医者さんを探すところから仕切り直しです。

それに、いくら小さなマンハッタンでも3歳児を連れて大きなお腹でバスや電車を乗り継いで通院することを考えると、近いにこしたことはない。

そう考えると無理なく通えそうな病院は2つ。
その病院と提携しているお医者さんを選ばなくてはいけません。

2つめの軸。「医師と提携病院

引き続き他の友人たちにも聞くと、中国系の先生に見てもらったという人が多い。
みんな圧倒的に女医さんばかりで、

”アジア人の体のことよくわかってるから”
”英語がネイティブじゃないからわかりやすい”
”先生本人も子持ちで経験も豊富”

などが人気の理由のようです。

それならば、と加入している保険会社の検索画面から、教えてもらった先生方の名前と提携病院を照合。

お、ヒットした!
今度はうまくいきそうです。

ところが・・・・
オフィスに電話してみると、

”Sorry, うちの先生、新患はとりませんので” ガチャ。
”6月出産予定ですね。その月は先生もう予約でいっぱいです”(え?もう?)

などとお断りされてしまいました。
やっぱり人気のある先生方はむずかしいのかもしれません。

3つめの軸。「医師サイドの事情」

”とりあえず”のはずの初診のアポ取り、3つの軸をグルグル回しながらの作業は思いのほか進みません・・・。

言語選択を英語の他に韓国語まで広げてアジア系ドクターを再リサーチ。

医師のプロフィールを見たところで専門用語が多すぎてわからないので、辞書で調べながら、えっちらおっちら。
悪阻も始まりかけているのか、頭も痛いし、集中力も続きません・・・

覚えたての単語を駆使しながら問合せるも、
”うちは婦人科医になるので、産科はやってません”
”先生はハイリスク専門なので、普通分娩の方は無理です”
など、これまた連敗続き。
第1希望の病院の女医さんたち全滅・・・
ちょっ、、、妊娠しているかどうか、確証が欲しいだけなのに・・・
出端をくじかれて落ち込んできました。

日本なら、それこそ”とりあえず”近所の病院に電話一本。30秒で予約完了。で、翌日には”おめでとうございます”って言ってもらえたのに。

なんだろう、この苦労は。。。

この際もう誰でもいいや、女医さんじゃなくてもどこのお国の人でもいい。
半ば自暴自棄になりながら、希望病院のドクターリストを片っ端から電話をかけ続け、

”先生の予定見て折り返しします”(当然コールバックなし)
”先生は無理ですが、こちらは?”(紹介された先生は既に断られている)

など様々なやりとりを、いったりきたり繰り返すこと3日間。

そうして、一度はNGだった第1希望の病院に、ダメもとでかけた3日目。すると今度はアメリカ人の若い女医さんで予約がとれました!
やっぱりあきらめが悪い方がこの国では上手くいくみたい。

予約がとれたのは翌日、じゃなくて、3週間後・・・・・・だけど。

1日でも早く知りたかったけれど仕方ありません。
心音が確認できる時期にならないと来てもらっても意味ないので。ということでした。

でもこの先生、私と同い年くらい?あ、それなら若くないか。出産未経験かな。
まあ、そんなことはどうでもいいのです。

小さなことにこだわるより前に進まなければ!

それにしても、情報収集して、ショートリストして、電話して、初めてアポとれたのが3日後でした・・・って、新卒の営業だってそんなに時間かからないよ・・・

友人たちからも産婦人科探しで、そんな苦労をしたという話は聞かないし、娘の小児科も歯科もすぐに予約がとれたので、全部が全部、NYでの病院探しが大変なわけではないのでしょう。

もともと器用な方ではありませんが、今回は要領が悪かったのか、運が悪かったのか、やり方を間違っていたのか・・・・
ただずいぶんと遠回りをしてしまいました。

でも、日本のようにそれこそ、”とりあえず”では、病院に行けない無保険の人々が多くいることを思うと、保険があって、お医者さんに診てもらえるだけで、多少遠回りだろうがなんだろうが恵まれているのかもしれません。

病院に行けることが幸せ・・・・

日本にいたら絶対に気付きませんでした。
だって当たり前だから、、、、

ニューヨークに暮らして初めて、日本での当たり前を幸せと感じること、色々ありますが、今回もまた新たな発見があったのでした。

寺尾 美香(てらお・みか)
慶應丸の内シティキャンパスで4年9カ月間ラーニングファシリテーターとして多くのプログラムを担当。2014年4月よりNY在住。

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