KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2015年09月08日

マンハッタンで家を買う(番外編)

寺尾 美香

新しい住まいに引っ越して約3ヶ月が経ちました。
家具も買いそろえ、ようやく落ち着いてきたところでほっと一息つかせてくれないのがここでの私たちの生活。
「買って終わり」ではありませんでした。

一難去って、また一難。

以前住んでいたマンションの借り手が未だに見つからないのです。

途中解約にあたり、昨年夏に1年更新をしたばかりだったので、退去するには今年8月、契約満了までの家賃を全額前払いするよう管理会社から言われました。

その時の話では管理会社が新たな入居者を探し、見つかり次第返金されるということでしたので、数百万という大きな額ではありましたが泣く泣く一括前払いしたのでした。

今、思うとここが素直すぎるジャパニーズ、私たち夫婦の決定的な失敗の瞬間だったのですが・・・。

ちょうどホリデーシーズンに入る時期でもあり、次の入居者が即見つかるとは思っていませんでしたが、ファシリティも立地も良く、新しいマンションですし、人の出入りが多いビルなのでそれほど時間はかからないだろうとどこかで楽観的に思ったりもしていました。

ところが・・・・
待てど暮らせど先方から新たな入居者が見つかったという連絡は入ってきません。

いやーな予感・・・・

何度問い合わせても「まだ見つからない」の一点張り。

そろそろ、ダンナの顔にも焦りが見えてきました。

購入した新たな家のローンの返済額とほぼ同額の家賃が、毎月誰も住んでいないのに、ただ無駄に出ていくだけ。
ダブルで出ていく大きな出費。
なんとも堪え難いこの状況。

見つからないまま、全額戻って来ない?!
最悪のシナリオが頭をよぎります。

それだけはなんとしても避けたい・・・・

自分たちでも何か手を打たないと、このまま管理会社任せではきっと良からぬことが起きる。という虫の知らせを感じ、各社の不動産エージェントに問合せを開始。

すると驚くべき事実が。

まず、我々が借りていた時より$500(約6万円)近く値上げした額でマーケットのリストに出されているというではありませんか。

「もう、お金もらっちゃってますから真面目に探してくれませんよ。このお部屋、この数ヶ月誰にも見られてない可能性高いですよ」

えーーー!やられた!そりゃ無理じゃん!

もらうものもらったから探す努力はしてるふりだけ?
作為的だとしたらひどすぎます。

「これがニューヨークの現実。これがビジネスというものですから」
と言う言葉に、またまたカルチャーショックです。

管理会社に一体どういうことかと問合せても
「今のマーケット価格に合わせて値上げしてますから」とばっさり。

10%以上もあげておいて、何が市場価格だー
きーーー!悔しい!

弁護士に相談した方がいいのでは?というアドバイスをもらいまた頭を抱えることになってしまいました。

さらに、別の不動産会社の人が言うには「普通、日本人の場合は、入居の時に途中解約の交渉をして、1-2ヶ月分の家賃を支払うだけで出られるんですけどね」

って、おいおーい!誰だー!
うちのダンナにこのマンション紹介したのは。
ちゃんと仕事して、、、、

心の中でキーキー言いながらも、ダンナに物件を紹介したエージェントは会社指定のアメリカ人だったので、途中解約交渉などやってくれなくて当たり前。だそうです。

不動産会社の人は続けて、
「せめてね、退去する時に先方の言い分を全部飲まずに、しっかり上のマネージャークラスの人たちと交渉して数ヶ月分の家賃で出られるようにしていればね。よかったんですけどねぇ」

2度あった退去交渉のチャンスをモノに出来なかった私たち。

もう、契約書にサインして、全額支払ってしまった後じゃ何もできないと。

一方で、別の会社のエージェントは
「これから3月は異動の時期で、日本人もたくさん来ますし、あそこは人気のマンションですので、すぐ見つかりますよ!」

と、とっても前向き。会社によって、エージェントによって意見は正反対だったりまちまちです。

何を信じたらいいかわからなくなってきました。
この感じ、ここにきて何度目の感覚だろう・・・

そうこうしながら、その後もしつこく管理会社に問合せを続けているうちに、こちらの思惑通り(!)うるさいと思われたのか、マーケットの相場くらいまで価格を下げてくれました。

やってみるものです。

ようやく妥当な市場価格になったところで、これから本腰を入れて自分たちでも探していかなくてはいけません。

ところで、年率平均5%上がるとも言われるニューヨークの不動産市場。
賃貸物件では毎年更新の度に家賃が数百ドルあげられてしまうのが普通です。

そもそも、ダンナが「家を買いたい」と言いだした理由もそこにあって、年々上がり続けるニューヨークの不動産価格はよっぽどのことがなければ下がらず、買えるうちに買っておかないと、数年後では遅い、というものでした。

不動産投資で得をしたいということではありませんが、日本とはそのあたり事情が全く異なるようです。

私は日本で家を買ったことはありませんが、30年も住んだら資産価値としてゼロになってしまう物件も少なくないと聞きました。
ここニューヨークで今回我々が買った家は30年後、いくらかでも価値が上がっているのでしょうか?

うーん、そう考えると、
「あれは勉強代だったね」
なーんて、いつか笑える日がくるのか・・・。

いーやいや、笑えない。
この授業料は高すぎる。

求む!1LDK即入居可能な方!

寺尾 美香(てらお・みか)
慶應丸の内シティキャンパスで4年9カ月間ラーニングファシリテーターとして多くのプログラムを担当。2014年4月よりNY在住。
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