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ファカルティズ・コラム

2009年03月13日

仕事のQCDトライアングルを考える

“QCDトライアングル”をご存じでしょうか。
これは『Q:Quality(品質)』『C:Cost(予算/原価)』『D:Delivery(納期)』の頭文字をとってつくられた言葉で、元々は生産管理の分野で使われていたフレームワークです。
最近では、プロジェクトマネジメントのリスクマネジメントにおいてもよく使われています。
そしてなぜ“トライアングル”と呼ばれるかと言えば、このQ,C,Dの3つがトレードオフの関係にあるからです。
トレードオフ、つまり「あちらを立てればこちらが立たず」になるのです。

たとえば、情報システム開発プロジェクトのケースで考えてみましょう。
D、つまり納期はどんなプロジェクトでも重要です。
しかし遅れ気味のプロジェクトが当初の納期を守ろうとすれば、品質面でリスクが出てきます。
「納期に間に合わせるとバグが出るかも」ということです。
また、納期に間に合わせるためにSEを多く投入すれば、当然コストが膨らみます。
「予算オーバーになっても本当に納期を厳守するの?」と考えなければなりません。
同様に品質を重視すれば、やはりコストが嵩んだり納期が遅れることも考えられるし、今度はコストを重視すれば品質面に問題が出てくるかもしれません。
だからプロジェクトの開始時点で、『Q,C,Dの優先順位』を明確にしなければなりません。
もし品質が最重要であれば、納期や予算は交渉の余地があることをプロジェクトのオーナーと確認しておかなくてはならないのです。
そして納期最優先なら品質とコストに、コスト最優先なら品質と納期には目をつぶることを。
もちろん目をつぶると言っても限度がありますから、その許容範囲も事前にオーソライズしておく必要があります。
ところで、このQCDトライアングルの適用領域は生産管理とプロジェクトマネジメントだけではありません。
我々の仕事全般でこれを最初から意識しておくべきでしょう。
納期を守ってやっつけ仕事で作った資料が上司からダメ出しされて作り直したとしたら、この資料は品質が最重要だったのです。
その反対に、丹念に調査して良い資料を作ろうとしていて、納得のいく品質にするために「もう1日待ってもらえませんか?」と上司に頼んだら、「そんな資料適当でもいいんだから今日中に出せ」と言われてしまうのも、実は納期が最重要ということがわかっていたら防げるのです。
皆さんも様々な仕事を抱えているはずです。
そのひとつひとつの仕事のQCDトライアングルを考えてみましょう。
品質>納期>コストの順の仕事はどれですか?
納期>コスト>品質の仕事は?
ちなみに、自動車の開発などは「品質>コスト>納期」の代表例でしょう。
品質に少しでも問題があれば人の生死に関わりますから、自動車メーカーはしばしば新車のリリース時期を延ばすわけです。
また法人税法改正に対応するためのコカピューター・ブログラムの改修や、オリンピックのスタジアム建設などは完全に納期が最重要です。
だから北京オリンピックの会場は、未完成の部分をブルーシートで隠していました。
でもそれで構わないのです。重視すべきは納期ですから。
そしてコストが重視される代表的な仕事は・・・
あまり言いたくありませんが、企業の教育研修制度の構築が代表例でしょうか(笑)
特に不況時には、すぐに定量的な効果が見えない教育研修費は削減対象になりやすいですし。
予算を削られながらも品質の高い研修を実施しようと努力されている、企業の人材開発担当の方もつらいところだと思います。
ですから最後に、企業のトップや人事総務担当役員の方々にヒトコトだけ。
企業はヒトで成り立っています。
企業の体力とは、財務面だけでなく人的資源も合わせて考えるべきです。
大変なのはわかりますが、人材開発をコストではなく投資として是非考えてみてください。

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