ファカルティズ・コラム
2009年03月25日
『要領よく』と『手抜き』の違い
これをやったら次回でられなくなるんじゃないかなんて考えないようにしている。
人間いつ死ぬかわからないから、その時のすべてを出しきりたいんだ。
おれはいつ死ぬかわからないし、見ている人もいつ死ぬかわからない、
視聴者が最後に見た江頭が、手抜きの江頭だったら申し訳ないだろ?
江頭2:50
この言葉を、来週から新社会人となられる方々に贈ります。
実は個人的に好きなタレントというわけではありませんが、彼のこの言葉には私も大いに共感し、そして考えさせられました。
特に講師という職業柄、同じコンテンツを何度も行う機会があるのですが、その過程では悪い意味での“慣れ”が出てきます。
そこで「このくらいで充分だろう」と考えてしまうと、全力で全てを出し切ることを忘れてしまいがちです。
おかげさまで私は変に凝り性なものですから、同じコンテンツでも日々改訂し、挟む事例を変えるなどしないと気が済まないため、現時点では手抜きした覚えがありません。
ただ、これからも本当に手抜きしないかと問われれば、未来のことは確約できません。
しかし、私は確かに何度もやっているコンテンツでも、受講生にとっては初めて触れる内容ですから、そこで手を抜くのは失礼千万です。
だから今後も彼の言葉を思い出し、「自分は全力でやっているか?」と自問自答したいと思います。
そして、これは別に講師という職業だけが肝に銘じることではないはずです。
新入社員であれば、もちろん手抜きなど考える余裕はないでしょう。
しかし1年もすれば、ある程度仕事には慣れてきます。
ベテランと同等とはいかなくても、充分その仕事に関してはプロと呼べるようになるでしょう。
次の新入社員が入ってくれば、もう今度は先輩という立場です。
しかしこの時期が危ないのです。
やはり「このくらいで充分だろう」となりやすいのです。
そして以前作った提案書を宛先を変えただけで別の顧客に出したり、ネットから転載した文章をさも自分で考えたかのようにレポートに書いたりするようになります。
そしてそれを「自分は要領よくやっている」と勘違いしてしまうのです。
でもこれは、『手抜き』を『要領よく』と言い換えているだけです。
極論を言えば、『報復』を『天誅』にすり替えることと同じだと思うのです。
『要領』とは、「物事をうまく処理する方法・手段」のことで、これに「楽をして」や「短時間で」という接頭語を勝手につけてはいけません。
つまり、「うまく処理する」とは単に「効率的にやる」ことではなく、「効果的にやる」という意味も含んでいるのです。
だから本来『要領よく』やろうと思ったら、それなりの工数は掛かります。
要領よく提案書を作ろうと思ったら、改訂しやすいような提案書のフォーマットを考えたり、バージョン管理のやり方など、データベース化する際の様々なルールも考えなくてはなりません。
そこまでやって初めて「良い提案書を短時間で作る」仕組みができ、その後の提案書が『要領よく』作れるようになるのです。
受験勉強を要領よくやっている人も、楽をしているように見えて実は「どうやったら楽に良い点を取ることができるのか」に力を注ぎ、時間をかけています。
もう一度言います。
『要領よく』やることは、断じて『手抜き』することではありません。
その場だけ楽をしようとしても、それは後で自分の首を絞めることになるのです。
新社会人の皆さん、仕事に慣れてきたら冒頭の江頭氏の言葉を思い出してください。
そして今これを読んでいただいている全ての“昔の新入社員”の方々も(笑)
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