KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2009年07月31日

それは本当に今も常識ですか?

突然ですが、私の娘はコーラが大好きです。
あまりに好きなもので、先日妻に「コーラは体に悪い」と言われていました。
「それ、いつの知識なの?」
私と娘は同時に笑いながら言いました。
「まさか『コーラは骨を溶かす』とか言わないよね?」
「でも糖分が多いし・・・」
ちなみに娘は身長158cmなのに体重は未だ40kgに届きません(笑)
このような「昔の常識(この場合は流言と言えるでしょうが)は今の非常識」というケースは、我々の身の回りにたくさんあります。
テレビ番組を見て「えっ? 鎌倉幕府は1192年に始まったんじゃなかったの?」と驚いた方も多いでしょう。
怪獣好きの私も、恐竜マニアの友人から「ブロントサウルスは、今では先に発見されていたアパトサウルスと同種と判明してその名前は学名としては消滅している」と聞かされてショックを受けた経験があります(笑)
この程度の話であれば笑い話で済むのでしょうが、健康によいと信じていたものが最新の研究では害を及ぼすと言われているものもありますから、やはり過去の知識は適宜アップデートする必要がありそうです。
そして、特に私が皆さんに訴えたいのが『ビジネスの常識を疑うこと』です。

ある化粧品会社での研修で、「ある化粧品店の主要顧客は50代の女性だとしたら、このお店はどのような商品に力を入れるべきでしょうか?」と尋ねました。
帰ってきた答は、「やはりスキンケア商品だと思います」でした。
「なぜスキンケア商品なのでしょう?」
私の問いに、その方はこう答えました。
「50代女性は、メーキャップよりスキンケアの方に関心が高いからです」
私はさらに問いました。
「それって本当ですか?」
さて、皆さんも考えてみてください。
確かに50代ともなれば、女性としては年齢が気になる人が多いでしょう。そして肌の衰えは年齢を重ねてきたひとつの証と考えれば、確かに相対的にスキンケアの方に興味がある人が多いのかもしれません。
しかしながら、肌の衰えはスキンケアで「防ぐ」だけでなく、メーキャップで「隠す」ことも選択肢としてあるはずです。そして・・・
私は先の問いの後にこう続けました。
「どんなデータからそう言えるのですか?」
この問いには、その方だけでなく誰も答えられませんでした。「なんとなく・・・」「以前先輩から聞いたような・・・」が実際のようです。
意地悪な私はさらに追い打ちをかけます。
「この『50代女性は、メーキャップよりスキンケアの方に関心が高い』という比率が仮に正しいとしても、その比率は10年前と今と全く変わっていないと思いますか?」
・・・参加者は一様に首を振りました。
これは別にその会社や化粧品業界だけの話ではありません。
ソースもはっきりしないし、明確なデータもないにも関わらず、「こういうもの」と定着している『組織・業界特有の常識』はたくさんあります。
そしてその中でも特に問題視すべきなのが、『長い間変わらずに信じられている常識』です。
いや、本人達は「信じている」というよりは「アタリマエ過ぎて意識すらしていない」というのが実情でしょう。
空は刻々と変化し、同じような曇り空でも1年前と今日で全く同じ雲の量・風向き・風量・温度・湿度ということはあり得ません。
ビジネスにおける環境も同じで、市場トレンド・経済状況・個々の顧客の考えなども1年前と今とでは確実に変わっています。
それなのに我々は、口では「時代の変化に敏感にならなければ」と言いながら、極めて基本的なところで過去の常識を疑いもせずに次の一手を考えているのです。
これでは市場調査をどんなにやろうが、効果はあまり期待できません。
新しい情報を集めるのももちろん重要ですが、それを生かすのも殺すのも人です。
だからまずは自分達の“常識”を疑うことが肝要です。
様々な情報から帰納的に「とすると○○なのでは?」と仮説を立てる際に、そこに演繹的に照らし合わせる前提条件、つまり“常識”の存在を意識しましょう。
そして「この常識は正しいのか? 正しいとしても今は何か少し変わっているのでは?」と疑ってみましょう。
言い換えれば、『自分と組織の固定観念』を見つけるのです。
「変化に対応する」とはそういうことだと思うのです。

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