KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2007年03月07日

「賢い」ってなんだろう?

講師という商売柄、常に『コトバ』には敏感でありたいと思っています。特に言葉の定義を明確にして話をしないと、受講生を混乱させたり誤解を与えてしまうことも多いからです。
ですが、これはなにも講師に限った話ではないはずです。
我々は結局情報の入手と伝達はコトバを読む・聞く・書く・話すことがメインですし、“考える”という活動もやはりコトバを使って行っているのですから。
そして私自身がコトバに敏感になるために心がけていることのひとつが、様々な名言・格言を書き留めておくことです。
これは「ひとつのコトバの様々な定義を知るため」というのもあるのですが、それ以上に「語る時の切り口の面白さ」が、思考力系の講師として大変参考になるのです。
さて、そうした名言・格言の中で、なかばシリーズ物とも言えるのが、『賢者/愚者』についてのものです。(厳密に賢者/愚者という言葉を使っていないものも含みます)
以下にいくつか、私のコメントも添えてご紹介します。
我々は、できれば愚者とは呼ばれたくないものですが、これらの名言・格言から今一度自分を振り返ってみても良いのではないでしょうか。


  (1)愚者が賢者から学ぶことよりも、賢者が愚者から学ぶことのほうが多い
    モンテーニュ(作家・思想家)
  (2)愚者は経験から学び、賢者は歴史に学ぶ
    ビスマルク(政治家)

この2つの名言から見えてくる賢者の特性は、「どん欲に学ぼうとする姿勢」です。
(2)を私なりに解釈すると、「愚者は自分の失敗からしか学べないが、賢者は他人の失敗からも学ぶことができる」ということでしょうか。
しかし個人的には「自分の失敗からも学べない」人も多いような(笑)
  (3)愚者はさまよい、賢者は旅をする
    ウェールズ地方のことわざ

これはもう、「考えなしに行動するな」という戒めでしょう。
「いきあたりばったりで事にあたるのではなく、ちゃんと考え、計画的にやれ」というのは、その昔、新入社員当時に私も言われた覚えがあります。
おかげさまでその後、かなり計画的に行動できるようになりました。
特に旅行や遊びについては、タイムスケジュールや立ち寄り場所等、かなり詳細に計画しないと気が済まないようになってしまいました。仕事の面ではまだまだですが(笑)
冗談はさておき、やはりここからも「思考停止せずに考え抜く」ことの重要性が見えてきます。
以前お話しした内容に関連づけると、『さまよう=考え込む』『旅をする=考え抜く』と置き換えることも可能ですね。
  (4)賢者は聞き、愚者は語る
    ソロモン(古代イスラエル国王)
  (5)容器は、それが空っぽのときに一番大きな音をたてる
    ジューウェル(牧師)

この2つ、本当に耳が痛いです(笑)
中身の無い人間ほどべらべら喋る。そしてその大半は知ったかぶりであったり、人から聞いた話なのです。
私も喋ることが商売ではありますが、これらの名言を心に刻み、自分の言いたいことだけをべらべら喋るのではなく、受講生の方々の声に耳を傾け、本当に必要なことだけを話していきたいと思います。
さて最後にもうひとつだけご紹介しましょう。
  (6)自分に理解力がないことを苦痛に感じるためには、
    すでに相当の理解力がなければならない。
    馬鹿ほどうぬぼれの強いものはない。
    ジード(作家)

つまり、自分は賢い(賢者)と思ったら、あなたは既に馬鹿(愚者)ですよ、ということですね(笑)

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