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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2011年02月04日

ファシリテーターをメタファーで考える

今回は今更ながらに「ファシリテーターって何?」を考えてみたいと思います。
辞書では「会議やミーティング、住民参加型のまちづくり会議やシンポジウム、ワークショップなどにおいて、議論に対して中立な立場を保ちながら話し合いに介入し、議論をスムーズに調整しながら合意形成や相互理解に向けて深い議論がなされるよう調整する役割を負った人」と説明されています。
また、「議長と異なり決定権を持たない」などとも言われています。
要は会議やイベントの司会者、というか進行役なのでしょうか?
であればわざわざカタカナ語で表現する必要もなさそうです。
とすると語源(Facilitate:容易にする・助長する)から「支援・促進役」と考えることもできそうですが、これまたいまひとつ抽象的。
であれば具体的にイメージしやすいように…ということで、メタファーで表現してみましょう。

私がファシリテーターを説明するのにしばしば用いるのが『オーケストラの指揮者』です。
オーケストラの指揮者は単に音楽に合わせて踊っているのではありません(当然ですが・笑)。
全ての楽器の音を聴き、テンポやアンサンブルにたえず気を配っています。
楽譜に忠実な破綻のない「カッチリした演奏」を追求し、入りや音の長さなどを指示します。
しかし演奏は単に正確であればよいというものではありません。音楽は芸術でありエンターテインメントですから、いかに聴衆を感動させるかが重要です。
だから指揮者は「ワクワクさせる演奏」も追求し、タクトだけでなく全身・表情までも駆使して演奏者を乗せ、オケを、いや聴衆までも一体化させようとします。
この「カッチリした演奏」と「ワクワクさせる演奏」の”演奏”を”議論”に置き換えると、ファシリテーターのあるべき姿がイメージできるはずです。
が…このメタファー。
クラシックを全く聴かない、見たこともない方には伝わりにくいのが難点(笑)
そこで私がもうひとつ使うメタファーが『たき火の番人』。
たき火の番人は、ただボーっとたき火を眺めているわけではありません。
まずは火を熾すところがスタートですから、その準備が必要です。たき火の場所と薪を選び、燃えやすい紙などを使って徐々に火を大きくする。
火がちゃんと着いてからもノンビリなどしていられません。
ウチワで扇いだり薪の位置を変えたりしながら安定したたき火を維持します。風にだって気を配らないといけません。
特にそのたき火を料理にも使うのであれば、火の大きさは一定ではなく、細かく調節する必要があります。
しかし彼の苦労も、たき火の周りの笑顔、そしてたき火で作ったおいしい料理への評価で吹き飛んでしまう。
これもまたファシリテーターの姿とダブるはずです。
(ちなみにたき火の準備は会議の準備と重ねられます)
いかがでしょうか。
徐々にファシリテーターのイメージができてきたのではありませんか?
この他にも『サッカーのレフェリー(試合を公正かつ面白くするための縁の下の力持ち)』や『部活のキャプテン(部員の力を最大限に発揮させて真剣かつ楽しく練習や試合に臨ませる)』など、様々なメタファーでファシリテーターを説明することができます。
ところで、個人的には「もしドラ」のヒロイン『川島みなみ』や、「けいおん!!」の軽音部部長の『田井中律(りっちゃん)』は素晴らしいファシリテーターだと思っています。
特にりっちゃんは空気を読む力も抜群だし、本当は一番繊細なのに「自分がしっかりしなきゃ」とまとめ役&縁の下の力持ちに徹するしで…

……えー、「けいおん!」ネタはこのあたりで自重しておきます(笑)


さて、今回はファシリテーターについてメタファーで考えてみたわけですが、このメタファー。様々なモノゴトについて考え、伝える際に非常に有効なツールです。
仕事上の問題解決策を考える際に、メタファーで別の何かに置き換えると、今までになかった発想が浮かぶことも多くなります。
また今回のようにわかりにくい概念を説明する際に、「たとえば○○の××みたいなものさ」とメタファーを使うと、一発で「ああなるほど!」と理解してもらえることも多いのです。
ただ、単なる言葉遊びにならないよう、メタファーで「わかった気/わからせた気」にならないよう注意が必要です。
また、あまりにもマニアックなメタファーでは却って思考や伝達を阻害してしまいますので、ひとりよがりのメタファー使いにならないようにもしなければなりません。
ですが、メタファーは本当に便利なツールですし、思考力や表現力の向上にも繋がりますので、ぜひ様々なシーンで活用してみてください。

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