KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2012年08月03日

原因と理由のどちらを考えるべきか

突然ですが、私は料理を作るのが好きです。
私のfacebookの週末のタイムラインは、さながら『お料理ブログ』と化します(笑)
レパートリーの多くは洋食、それもイタリアン中心で、次いで中華。和食は奥さんには勝てない(特に煮物系)ので、あまり作っていません。
先日、ある知り合いから「なぜ料理を作るが好きなのですか?」と聞かれました。
その時は思いつくままに答えていたのですが、後でまた考えてみました。
「そういえば、どうして僕は料理好きになったのだろう?」
「そもそも何をあの時答えるべきだったのだろう?」


ここで皆さんに質問です。
ここで考えるべきは、料理好きになった『原因』だったのでしょうか。
それとも、料理好きになった『理由』でしょうか。

さて、料理好きになった『原因』と『理由』の違いは何でしょう?
私自身は、
◆原因
 →ある状況を作りだした客観的事実
 →当該の状況との間には明確な因果関係が存在
◆理由
 →ある活動(行動)を選択した主観的心因
 →個人の価値観に基づいた個性に左右される
と定義しています。
「原因は客観的で理由は主観的」「原因は論理的に説明可能だが、理由は論理的に説明できない場合もある」と言えるでしょう。
まさに前回の『heartとmindを使い分ける』とも通じます。
原因がmind、理由がheartで答えるべき中身ということです。
だから先ほどの問い「考えるべきは原因と理由のどちらか?」への答は、「相手がどちらを望んでいるかによる」が正解です。
やはり前回も述べたように、相手が自分に問うているのが「主観的な想い(理由)」なのか、それとも「客観的事実(原因)」なのかの見極めが重要ということですね。
何か失敗をした時は?
顧客の抱える問題について相談された時は?
原因と理由、どちらを考え、答えるべきかを見誤ることで「こいつ使えない」とか「こいつ面白くない」と相手から思われてしまうのは避けたいものです。


さて、私の「料理好き」に話を戻しましょう。
たぶん私はあの時、この『原因』と『理由』の選択を誤ったと考えています。
なぜなら、私がその時話したのは、「料理をするようになった経緯」であり、それは客観的事実、つまり『原因』でした。
相手の立場に立って考えると、経緯を小学校時代にまで遡って話されても、たぶん「ふうん」でおしまいです(笑)
ですから、今回のエントリーの最後に今一度(リベンジの意味も兼ねて、そして自己分析の一環として)「料理好きになった理由」について考えてみます。
<理由1:家族の喜ぶ顔を見るのが好き>
やはりこれは大事です。
しかしデメリットとして、娘が外食をしたがらなくなりました(笑)
「家でレストランみたいなのが食べられるから」らしいです。私は勉強のためにも、タマには外食したいのですが・・・
<理由2:自分の食べたいものを食べるのが好き>
これもまた当然と言えば当然の理由。
テレビやネットで目にした料理を「美味そう」と思う。しかしそれを食べるにはわざわざ出掛けなければならなかったり、またお金もかかる。
であれば自分で作ってしまおう。という発想です。
単なる「食いしん坊」とも言えますね(笑)
<理由3:「作る」というプロセスが好き>
私自身、何か「与えられたもの」を使う・楽しむだけでなく、「自分も作る(創る)側に回りたい」という志向が強いようです。
思えば、音楽(ロック)に目覚めた時も「自分もバンドやりたい」と思い、映画に感動した時も「自分も映画を撮りたい」と思って、結局どちらも学生時代に実現させました。(バンドは娘が生まれるまで続けていました)
この「(下手の横好きでも)クリエイティブへの欲求」を、現在は料理が満たしてくれているわけですね。
<理由4:仮説検証のプロセスが好き>
料理には論理思考力が要求されます(笑)
「あの料理はこれとこれをこうやって作っているはず」「これとこれを組み合わせたらこういう味になるはず」「全てを暖かいまま出すにはこういう手順が最適なはず」とロジカルに仮説を立て、その仮説に基づいて料理します。
これはまさに仮説検証という行為であり、仮説の正しさは料理のできばえによってあからさまに評価されます。
イマイチであればどこに問題があったかを考え、次に活かす。
このPDCAを回すのが、私はどうも性に合っているようです(笑)
私が競馬を好きなのも、予想という形で仮説を立て、その仮説の正しさを実際のレースで検証するプロセスが好きだからでしょう。


さて、『理由』なので徹底的に主観的な「好き」にこだわって考えてみましたが、このように理由もある程度は論理的に分析できることがわかります。
もちろん最終的には個人の価値観に依存しますから、「理解できないよ」と相手から言われる部分が出てくるのは仕方ありません。
しかしながら、『想い』を説明する際に、「だって好きなんだから」だけでは単なる子供です。
私自身、今回こうして分析することで「料理のアウトプットとプロセスの両方が自分のニーズを満たす」ことが発見できたこと、そしてそれによって自分が何を重視する傾向が強いかを認識できたことは大きな収穫でした。
※ちなみに、理由1と2が料理のアウトプット、理由3と4がプロセスに関する理由ですね。
あなたも、自分が好きなもの、あるいは嫌いなものについて一度その『理由』を分析してみてはいかがでしょう?
意外な自分自身がそこから見えてくるかもしれませんよ。

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