KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2013年01月19日

何と戦うのか

本日のテーマは「何と(誰と)戦うのか」ということ。
奇しくも本日、高校サッカー決勝では故郷宮崎県代表の鵬翔が優勝!
本当に粘り強い戦いで日本一に輝きました。
彼らはもちろん相手チームと戦ったわけですが、この一戦だけでなく、ここまでの練習なども含めると、プレッシャーや自分自身、そして様々な誘惑など、たくさんのものと戦っての勝利です。
存分にこの勝利に酔いしれ、自分自身を褒めてほしいと思います。
とはいえ、選手権が終わった瞬間から次が始まります。
ここからはまた横一線。短い歓喜の後は、また厳しい練習に汗を流すことになります。


しかし、世の中こうしたスポーツのような「さわやかな戦い」ばかりなら良いのですが、残念ながらそうではなく、考えさせられる、そしてクビを傾げたくなる戦いが多いのも事実。
そのひとつがテロです。



ご存じの通り、アルジェリアでの天然ガスプラントが武装グループに襲撃され、軍の人質救出?作戦により、多数の死者が出ている模様です。日本人の安否も未だ10名が判明しておらず、とにかく早期の収束が望まれます。
さて、今回は「テロ組織×アルジェリア軍」が事実戦闘を繰り広げたわけですが、彼らは本当は何と(誰と)戦っていたのでしょう。
ここでは中東のテロ問題について詳細を語るつもりはありませんが、両者とも「目の前の敵が本当の敵ではない」ことは確かです。
アルジェリア軍はテロリストと直接戦いながら、その背後にいるガバナンスを脅かす存在と、テロリストは軍の背後にいる政府やその後ろ盾である西欧諸国の政府と戦っている。
どのような自分達なりの大義があろうと、私は全てのテロは否定します。
しかし、全てのテロとそれに対する報復や軍事行動が、結局は背後にいる(そして決して血を流さない)真の敵同士の代理戦争であることを考えると、本当に気が重くなります。
軍の兵隊も、そしてテロの実行犯達も全てはチェスのコマでしかない。
残念ながら、この構図はこれからも変わりようがないでしょう。


そしてふたつめが橋下市長。
これもご存じの通り、大阪市の市立高校の部活動における体罰問題です。
いつものように市長として素早く対応しているわけですが、どうにもよくわかりません。
なぜ、『全体育系部活動顧問の総入れ替え』が必要なのでしょう。
なぜ、『今年度の入試の中止』が必要なのでしょう。
もちろん、私も体罰は否定する立場です。
「顧問には愛情があった」とどんなに言おうが、それはやられた方が「自ら死を選ぶほど辛かった」という現実の前では何の意味もありません。
「ふざけていただけで、いじめてるつもりはなかった」という、同じ関西でのいじめ自殺事件での加害者達の言い訳と同じだからです。
しかしながら、それでも今回の橋下市長の主張は理解できないのです。
彼は何と(誰と)戦っているのでしょうか?
彼に直接問えば、「腐りきった学校教育の現場そのものだ」と答えるのかもしれません。
しかし私から見れば、彼は『現在の市の教育委員会』と戦っているようにしか見えないのです。
もっと穿った見方をすると、彼が今回の事件を『教育委員会をコントロールする好機』ととらえているようにすら思うのです。
これは危険なことです。
彼に大義があるのはわかります。
しかし、目的と手段を取り違えてはいけません。これは政治でもビジネスでも同じ事。
どんなに重要な中長期目標があっても、それは目の前の問題をないがしろにして良いことにはなりませんし、ましてや目の前の問題を中長期目標のために「都合よく利用する」のはリーダーとしてあるまじき行為。
欧米の諺にもあるように、「目的は手段を正当化しない」のです。
橋下市長は私などが言うまでもなく、もの凄く論理思考力の高い人物です。
私も彼の様々な言動を参考にしてきました。
しかしそのロジカルさが最近影を潜めてきているのが気にかかります。「参院と首長との兼任、やらせてみてダメだったら選挙で落とせばいい」などという非論理的暴論もそう。
そのひとつの要因が、彼が「戦う相手を見誤っていること」だとしたら、それはとても残念なことです。


さて、最後は少し希望のある話で締めましょう(笑)
本日は高校サッカー決勝だけなく、もうひとつ若者達の戦いの日ですね。
そう、大学入試『センター試験』の初日です。
私の娘も今朝、元気に出陣していきました。
この後も試験は続くわけですが、まずは初陣。頑張ってほしいものです。
私の娘に限らず、受験生達も様々な何か(誰か)と戦っています。
しかしそれは「志望校が同じライバル達」ではありません。サッカーのように直接対決するわけではないのですから。
しかし彼ら・彼女らも、やはりサッカーと同様に入試という一戦だけでなく、ここまでの生活・勉強のプロセスを通したプレッシャーや自分自身、そして様々な誘惑など、たくさんのものと戦ってきたのは確かです。
勉強に「これで十分」はない。
しかし、「やるだけのことはやった」という実感は自己信頼感を生み、それが自信に繋がり、そして自信は平常心を形作ります。
そして平常心が「今ある力を出し切る」ことに繋がります。
『火事場の馬鹿力』とは言いますが、人間は実力以上のことはできないもの。
今までやってきたことを信じ、とにかく落ち着いて力を出し切ればいい。
これを我が娘に、そして全ての受験生達に望みます。
カロリーメイトのコマーシャルで、満島ひかりさんが中島みゆきさんの名曲を校庭で堂々と歌っています。


 ファイト! 戦う君の唄を、戦わない奴らが笑うだろう
 ファイト! 冷たい水の中を、震えながらのぼってゆけ


そう、君たちは直接戦っている。
戦わずして代理戦争している奴らなんか、所詮チキンなのだ。
でも、戦う相手を間違えるな。


もちろん、受験生だけでなく全てのオトナ達にもこの唄を捧げます。

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