KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2013年09月27日

新著の出版で考える差別化戦略

既に本ブログの右側にも表示されていますが、3冊目の本『臨機応変!! 日本で一番使える会議ファシリテーションの本』を8月に上梓しました。
タイトルが長い上に「日本で一番使える」とか、JAROに訴えられるレベルですね(笑)
とはいえ、手前味噌ではありますが、ビジネスの会議におけるファシリテーションの入門書としては、なかなか実用的だと自負してます。
まあ、売れるかどうかは、著者としては出した後は出版社とマーケット(読者)に委ねるしかないのですが、これでも『差別化戦略』については考えているわけです。



「本を売る」をマーケティングのフレームワークである4Pで考えてみましょう。
ご存じの通り、4Pとは
1. Product  :商品戦略
2. Price   :価格戦略
3. Place   :チャネル戦略
4. Promotion :プロモーション戦略
で構成される、「売るための手段」を考えるフレームワークです。
私は著者ですから、当然2~4は担当外。
私にできるのは1の商品戦略、それもタイトルや装丁は出版社・編集者にお任せしていますので、そのコンテンツを考え、書くことだけです。
※自分で「日本一使える」というタイトルは、さすがに付けられません(笑)


では、ビジネス書における商品戦略、特に差別化戦略には、どのような選択肢があるでしょうか。
これはまず、『内容』と『伝え方』の2つに分けて考えることができます。
伝え方という点では、たとえば「図解を使ってわかりやすくする」や、「物語仕立てにして取っつきやすくする」といった方法があります。
後者の代表例が、『もしドラ』であり、『夢をかなえるゾウ』ですね。
私の場合は、既にシリーズ化されたビジネス書でもありましたので、この『伝え方』を工夫する余地はあまりありませんでした。
とすると、やはり『内容』での差別化、となるわけですが、ここで重要となってくるのは、マーケティングのキモとも言える『ターゲティング』です。
マーケティングが、「市場(顧客)ニーズへの適応活動」である以上、想定顧客を明確にせずして、具体的な商品戦略など立てられません。
今回の場合、ターゲットは明確に「ファシリテーション初心者」と、依頼のあった時から決まっていました。
具体的なターゲット像は、「会議の仕切りを任される立場になった若手リーダー」です。
であれば、ファシリテーションの何か(たとえばホワイトボードの使い方)に特化し、それを深く突き詰める内容では、顧客(ファシリテーション初心者)のニーズに適応できません。
よって必然的に、内容は「広く浅く」となります。
私が最初に上梓した『目に見える議論』も、「会議ファシリテーションの教科書」というサブタイトルからもわかる通り、同様の「広く浅く」の入門書でした。
そしてこうした『ファシリテーションの入門書』は、他にもたくさん出版されています。
また、入門書にもレベルがあり、会議室のセッテイングの仕方など、本当の初歩の初歩から書かれている本もあれば、ベテランでも十分に活用できる本まで、様々なタイプがあります。
私の本は、レベルで言えば後者に当たりますから、前者よりはさらにターゲット層が広くなります。
そして、このターゲット層を「どれくらいの広さにするか」もマーケティングにとっては重要です。
当然、ターゲット層を拡げた方が、市場規模としては大きくなりますが、その分「尖った」ところが無くなり、顧客ニーズにジャスフィットしにくくなります。
結果として、それでいずれの層からも「そこそこの支持」になってしまうと、マーケティング的に失敗してしまうことが多くなります。
日本の家電製品が、オーバースペックで不振に陥ったのも同じ理由ですね。
もちろんターゲット層を絞り込みすぎても、これまたたとえその層から絶大な支持を得ようが、結局市場規模の小さなニッチ商品となり、期待した売上を上げられません。
「ターゲット層の広さをどう設定するか」は、本当に難しい課題です。
さて、ここまでの説明から、私の本は、そのターゲット層と、その広さという点で、なかなか差別化戦略を立てるのが難しい本であることが、おわかりいただけることと思います。


では、何で差別化するのか?
私が考えたのが、「ファシリテーションのテクニックやツールでなく、それを使いこなせるようにするための『仕掛け』で差別化する」ことでした。
単に様々なテクニックなツールを紹介しても、どのような会議でどう使うかが説明されていないと、使うタイミングや場面がわかりません。
これでは、せっかくのテクニックやツールも「知っているだけ」で終わってしまいます。
しかし、だからと言って、面識のない読者の「すべての会議の状況」について記述するのも不可能です。
ですから私は、「あなたの参加する会議の、現状分析をやりましょう」からスタートしました。
「自分はどのような会議に多く参加し、そこにはどのような問題があるのか、そしてその問題の原因は何か?」
これを読者が考えるためのフレームワークを用意しました。
現状をしっかり認識することで初めて、自身、そして自身が参加する会議に必要な、テクニックやツールが見えてきます。
会議とファシリテーターの数だけ問題や課題はあり、たとえば「A社のXという会議には有効だが、B社のYという会議では使う必要がない」、そして「M君には向くがS君には向かない」テクニックやツールは当然存在するからです。
そしてこれは会議に限らず、商品開発であろうが営業活動であろうが、現状を正しく認識して初めて、次の一手を考えることができるはずです。


「ファシリテーターとしての差別化戦略を描くことができる」
これが私の新著の差別化戦略のコンセプトです。


もちろん、このコンセプトが顧客ニーズにビシっと合っているかどうかはわかりません(笑)
しかし、成功するかどうかは別として、「他にはなかなかない本」になっているのは確かです。
ぜひご一読いただき、Amazonのレビュー欄で、忌憚のないご意見をお聞かせください。
(「この仕掛けのニーズは低いよ」でも全然OKです(笑))


さて、今回は、自爆企画とも言える「差別化戦略の考え方」でした。
しかし、本来戦略とはこうして考えていくもののはず。
あなたの会社の商品・サービスは、どうやって差別化戦略を考えていますか?

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