ファカルティズ・コラム
2016年11月10日
スケジュールは「ゆるく」立てよう
「段取り八分」
物事がうまくいくかどうかは、やる前の段取りの善し悪しでほぼ決まってしまう。
だから行き当たりばったりの行動をせずに、計画的に行動しなくてはならない。
新入社員研修などで教えられる、「PDCA(Plan:計画→Do:実行→Check:評価→Act:改善)」サイクルの重要性とほぼ同じ意味であり、仕事術の基本中の基本を示す、「格言」のひとつと言っていいでしょう。
たとえば、最初に頼まれた仕事に手をつけ、終わったら次に頼まれた仕事に手をつける、といった形で無計画にやっていたらどうなるか。考えただけでもぞっとします。
これは初めて行く場所に何の準備もせず、そして地図も持たずに手ぶらで出かけるようなものです。迷子になるのも当たり前ですね。
会議にしても、全く段取りを行わずに、「今日の議題は○○です。何かご意見ありますか?」などとやってしまうから、時間ばかりかかって決まるものも決まらないのです。
このように、すべての仕事、いや、私たちの活動全般で、何らかの事前準備、つまり段取りは重要です。
しかし、段取りが重要なのは確かですが、実は段取りを「し過ぎる」のも考えもの。特に仕事における段取りのメインと言えるスケジューリングにこりすぎると、かえって弊害が大きくなります。
「いつどの仕事に手をつけ、どういう手順でどのくらいの時間をかけ、いつ終わらせるのか」。
この予定を立てる作業を、私たちはスケジューリングと呼びます。
これに加え、「どうやってやるか」という手段や手法までも加えたもの、それが「段取り」の全体像。
先に挙げた「会議」を例に取るなら、参加者の予定を踏まえて「12月10日の13時から15時まで」などと開催日時の予定を立て、そして「現状の把握→問題点の特定→解決策の洗い出しと選択→具体的アクションプランの決定」のように会議の流れも決める。これが「スケジューリング」です。
これに加え、参加者への開催通知を出し、必要な備品を用意し、そして議論を効果的・効率的に行うための様々な工夫を考えておく。それが「段取り」です。
いかがでしょう。ますます「段取り」の重要性が見えてきたでしょう。そして、「時間をかけてでも、きちんと段取した方が、かえって時間の短縮、つまり業務の効率化になる」と感じているはずです。
しかし、ちょっと待ってください。
確かに段取りは重要ですが、先ほども述べた通り、その中のスケジューリングに時間をかけ過ぎるのは、かえって「超速」仕事を阻害します。
実のところ、スケジュールは、あえて「ゆるく」立てた方がよいのです。
その理由はふたつあります。
まずひとつめの理由は、「どうせ予定通りには進められないから」です。
言うまでもありませんが、私たちが仕事を行う上での状況は日々刻々と変化します。突然のトラブルやアポイントメントなど、突発的な業務が入らない仕事など、ほとんどないと言っていいでしょう。
また、仕事はひとりでやるものではありません。一緒に仕事を行う誰かの進捗が悪ければ、それは自分のスケジュールにも影響を及ぼします。
さらに、突然上司や顧客の「気が変わる」こともあり、そうすれば、予定していた作業が不要になったり、反対に全く予定していなかった作業をやらなくてはならない場合も出てきます。
またまた「会議」を例に取ってみましょう。
会議の開始時間なら、予定通りの方が多いかもしれません。(ただ、これは正直、企業風土で大きく違いますが(笑))
しかし、終了時間は予定通りにいくとは限りませんし、進め方の手順にしても、当初の段取り通りにいく場合の方がまれです。
「だいたいおたくの部署は」、のように会議の内容とは直接関係のないことで言い争いになったり、突然説教を始める人がいたり、当初の予定を狂わせる要因は数多くあります。あなたも「いいかげんにしてくれよ」と思ったことが何度もあるでしょう。
会議以外にしても、「いや、ちょっと忙しくてまだやってない」と言う人がいたり、提出した資料に対して予期せぬダメ出しをされて、新たな作業が発生したり…
これが現実です。それなのに、スケジュールをきっちり立てたらどうなるか。そのたびに変更を何度も行うことになってしまうのは当然です。几帳面な人が陥りやすい、「自己満足のスケジュール」と言っていいでしょう。
そしてもうひとつの理由が、「スケジュールを精緻に考える時間がもったいないから」です。どうせ突発的な仕事や他人の仕事の進み具合に影響され、精緻なスケジュールを考えた時間が無駄になってしまいます。
「早く仕事を終えよう」と思うなら、「とにかく早く仕事に取りかかる」ことが最重要です。
だからそのためにも、「段取りに時間を掛け過ぎない」のが肝要です。
では、「ゆるくスケジュールを立てる」とはどういうことなのか。
念のため言っておくと、それはもちろん「いいかげんにスケジュールを組む」ことではありません。
「ゆるい」スケジュールとは、「柔軟性の高い」スケジュールを意味します。
そして柔軟なスケジュールとは、「全仕事時間の6割が段取られたスケジュール」。
そう、スケジュールをびっしりと「埋める」のでなく、「4割程度の空き」を作りましょう。
「空き」と言っても、そこは遊んだりブラブラする時間ではありません。(あたりまえですが)
この空き時間は、突発的な仕事や段取る必要のない雑務、そして先の予定の前倒しや終わらなかった作業などに使う、とても重要な時間なのです。
この「4割の余裕」こそが「柔軟なスケジュール」を実現させるためのキモなのです。
「忙しいからそんなのムリ」
と言いたい方もいるでしょう。
確かにいきなりは難しいかもしれません。
だから最初は2割程度でも構いません。
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