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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2017年08月21日

ロジシンとクリシン

お久しぶりです。
皆さん、夏休みはいかがでしたか?
私は夏休みの前半で、前職の仲間たちとの新潟競馬旅行に行ってきました。
ちょっと豪勢な温泉旅館に2泊し、競馬も楽しむ。これを約20年続けていますが、もはや年に一度の恒例行事として欠かせないものになっています。
さて、本日のテーマはロジカルシンキング(論理的思考)とクリティカルシンキング(批判的思考)、いわゆる「ロジシン」と「クリシン」について。
私の研修やセミナーのコンテンツでもあるこれ。
時々、その違いを聞かれることもあります。
ある人からは、「一般的なのがロジシンで、グロービスがやるとクリシンって呼ぶんですかね?」と尋ねられたこともあります。
まあ、それも間違いではありません(笑)
実際、名前は違えど基本的なコンテンツはロジシンとクリシン、両方を含む場合がほとんどです。
しかし、本質は違います。
そして、どちらもとても重要です。
thinking.png






クリシンとロジシンの本質的な違い。
それは前者が思考における「姿勢」であるのに対し、後者は思考における「スタイル」という点です。
どんな仕事にも「前向きに取り組む」や「手を抜かない」などは、仕事に対する「姿勢」。
仕事に対して「効率的なやり方を重視する」や「周囲と協調しながらやる」などが、仕事の「スタイル」。
と言えば、姿勢とスタイルの違いはご理解いただけるでしょうか。
思考の姿勢としての「クリシン」と、思考のスタイルとしての「ロジシン」。
では、どのような姿勢とスタイルなのか。


シンプルな言い方をすると、クリシンは「何にでも疑問を持ち、自分の頭で考え続ける」という姿勢です。
ですから、その反対の姿勢は「他人の言うことを鵜呑みにし、人任せの判断が多く、ときに考えることを投げ出す」になります。
まさに「思考の放棄や手抜き、諦め」ということですね。
「何にでも疑問を持ち、自分の頭で考え続ける」。
以前とは格段に複雑化し、制約も多く、そして変化の幅もスピードも比べものにならない現代のビジネスシーンにおいて、このクリシンがとても重要な、思考の「姿勢」であることがことがわかります。


それに対しロジシンとは、どのような思考の「スタイル」なのか。
これは具体例で説明してみましょう。
「代謝を上げてやせるために筋トレするなら、どこを鍛えるのが良いと思いますか?」
この問い、あなたならどう考え、どう結論を出しますか?
「そうですねえ。やっばり腹筋ですかね?」
「なんで腹筋だと思います?」
「んー、なんとなく。腹筋鍛えるための器具なんかもよくCMで見ますし」
はい、これが「非ロジシン」です(笑)
では、これがロジシンだとどうなるか。
「太ももだと思います」
「なんで太ももだと思います?」
「やせるためにはカロリーの消費量を増やす必要があります。とすると、小さな筋肉より大きな筋肉を鍛えて代謝を上げるのが効率的です。そして人間の体で大きな筋肉は、たぶん太ももだと」
これがロジシンです(ちょっと強引なネタですいません・笑)
非ロジシンは、断片的な情報から「なんとなく思いつきで」答を出していますが、ロジシンは目的である「やせる」というところから筋道を立てて情報を洗い出し、そこから「とすると…」と答を出しています。
辞書で「論理的思考」を引くと、「筋道を立てて考えること」と定義されているのは、まさにこういうことなのです。
そして筋道を立てて考えれば、当然出した答の精度が上がります。
もちろんビジネスの答に唯一の正解などありませんが、出した答が「間違っていない」確率は、非ロジシンよりも格段に高くなる。
つまり仕事の成功確率が上がります。
これもまた、ビジネスシーンにおいてとても重要な、思考の「スタイル」と言えます。


「思考の姿勢」としてのクリシンと、「思考のスタイル」としてのロジシン。
どちらも、私たちビジネスパーソンが何かを考える際、意識すべきことです。
しかしながら、仕事において「常にクリシンとロジシンを意識すべき」とは私は思いません。
何にでも疑問を持つクリシンは、ときに周囲とのコンフリクトを生みます。
その結果、「面倒くさいヤツ」というレッテルを貼られかねません。
そして、常に意識してると疲れます(笑)
また、筋道を立てて考えるロジシンは、どうしても「手堅い答」が中心となり、斬新なアイデアなどは出にくいという弱点があります。
また、考える時間が長くなる場合もありますし、クリシン同様疲れます(笑)
クリシンもロジシンも適材適所。
基本は意識しつつ、「あ、これはかえってマイナスだな」と思ったら、あえて非クリシン、非ロジシンと思考の姿勢やスタイルを使い分けるのが、スマート(賢い)な思考なのです。

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