ファカルティズ・コラム
2020年07月01日
論理思考の視点(のみ)で討論会を見る
7月5日に投開票を迎える東京都知事選。
私は都民ではないので投票権はありませんが、日本の首都であり、我が国のGDPの2割近くを叩き出す(オランダ1国より多い!)東京都のトップが誰になるか、には大いに注目しています。
22人が立候補していますが、現実としては現職の小池百合子氏、れいわ新選組代表の山本太郎氏、元日弁連会長の宇都宮健児氏、そして元熊本県副知事の小野泰輔氏の4人の争いと言われています。
先日6月27日、この4氏によるオンラインでの討論会が行われました。
本日は、そのオンライン討論会をプロデュースした「Choose Life Project」のnoteに掲載された書き起こしから引用しつつ、各候補者の発言を評価してみたいと思います。
ただし、視点はあくまでも「ロジカルかどうか」。
政策の良し悪しや支持基盤、そして私の好みなどを排除し、その言動の論理性にフォーカスして候補者別に語ってみます。
1. 小池百合子氏
「新型コロナ・感染者の抑え込み」という論点に対しては、「今、いわゆる「夜の街」関係の方に積極的に検査を受けていただいている、またそうしたところから広がっている濃厚接触者が検査を受けている結果であって、ただ数字を比べればいいというわけではない」と答えており、感染者数の増加の理由をロジカルに述べています。
ただ、感染者数における夜の街検査の割合など、もっと明確に数字で語るべきでしょう。
山本太郎氏からの「東京都としてロスジェネ世代に雇用枠みたいなものを考えているのか?」という質問に対しては、大学生などのパート採用を挙げていますが、直接的に質問に答えていません。
本来は「正直そこまではまだ政策として明確化できていない」と認めた後、「これから是非考えていきたい」と答え、「後ほどご意見をお聞かせください」と相手を巻き込んでしまう方が(印象としても)良かったですね。
小池氏に限りませんが、こうした「非を頑なに認めない」のは、弱みを見せないという処世術なのでしょうが、討論会のターゲットが「一般市民」であることを考えると、「懐の広さ」を見せたほうがイメージは良くなると思うのですが。
2. 山本太郎氏
小野泰輔氏からの「都債を15兆円発行するのは、地方財政の観点からかなり厳しいのではないか」という質問に対し、公債費比率や総務省の見解を「数字」として根拠を語り、東京なら可能と結論づけています。
さらに「今は平時ではない」ことを強調し、従来の常識を適用することの問題も述べています。
小池氏に質問した「ロスジェネ世代の雇用」についても、「コロナで失業した人やロスジェネ世代を戸として3000人採用」という案を示しており、実現性をとりあえず横に置けば、他の候補者よりかなりロジカルな発言が目立ちます。
とはいえ、冒頭の「新型コロナ・感染者の抑え込み」という論点に対しては、「なによりも検査体制の拡充を」と語るのみで、都の対策が「うまくいっていない」ことの理由は述べていません。残念ながら「結論ありき」の発言と言えるでしょう。
3. 宇都宮健児氏
小池百合子氏からの「withコロナの状況で、東京の景気回復はどのように考えているのか」という質問に対して、「PCR検査体制の抜本的強化」という的外れの答えをしています。
完全な「論点ずらし」であり、さすがは元弁護士と言えるのかもしれませんが、体制を批判してきた人間が、その体制側の常套手段を使うのは感心しません。
司会からのダイバーシティに関する質問に対しても、後半で外国人差別について触れていますが、ほとんどは貧困世帯の救済について語っており、これもまた「論点ずらし」です。
信条として「弱者に寄り添う」があるのは伝わってくるのですが、経済に関してはほとんど数字も述べていませんし、論理的な「実現プロセス」がどこにも出てこないのは、大テーマである「東京度をどうやってどのようにしたいのか」に対して明確な解がないと言わざるをえません。
4. 小野泰輔氏
山本太郎氏への質問で、結果的に論破されてしまったように、今回の討論会では明確な爪痕を残せなかったと言えます。
熊本での実績を元に語る場面が何度かありますが、山本氏も指摘したように「熊本と比べても」と有権者も感じてしまいますし、全体的に明確なビジョンや数値目標、具体的政策が見えないのはマイナスポイント。
「ひとりひとりと向き合って」も現実的に不可能ですから、主張の論理性が乏しいと言えます。
とはいえ、発言をよく見ると他の候補者とは「経済」にフォーカスした姿勢が一線を画しているのがわかります。であれば、それを強調することで、他の候補者との立ち位置や優先順位のの違いを見せるべきでしょう。
さて、いかがでしょうか。
単純に「論理的思考力」のみで評価すると「山本氏>小池氏>小野氏>宇都宮氏」の順番でしょうか。論点ずらしなど「屁理屈」に関しては、小池氏と宇都宮氏が「酷い」と言えます。
都知事として誰がふさわしいか、もちろんそれは論理的思考力だけでは計れません(笑)
政治とは「権力によって社会・組織を治める」ことであり、そのためには「利害関係の調整」や「何かを切り捨てること」も必要です。
皆さん一人一人の優先順位に基づき、候補者を吟味してください。
また、今回のこのエントリーでは「都知事候補の討論会」を題材にしましたが、同じようにあなたの組織の「会議」を見てみてください。
誰が論理的に発言・質問・反論しているか。
だれが屁理屈を使っているか。
それがあなたの論理的思考力を伸ばすことに繋がりますから。
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~稲盛経営哲学を出発点として~
劉 慶紅
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授
日本経営倫理学会常任理事
稲盛経営哲学に学びながら、人間性を尊重し、利潤追求と社会貢献の統合をめざす経営学理論を構築する、新論が真論となり、不易流行の経営学として結実することを目指して。
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『VIVANT』とテレビ局社員
福澤 克雄
(株)TBSテレビ コンテンツ制作局ドラマ制作部、演出家・映画監督
私にとっての道は、TBSにありました。『VIVANT』は、同じような夢を持つ若者たちの道標になってほしい、そんな思いも込めてチャレンジした作品です。日本のドラマ界、映画界を目指す皆様、夢はあるけど方法がわからない皆様の一助になればと願っております。
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