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ファカルティズ・コラム

2022年03月07日

Google検索は没落しつつあるのか?

日経クロストレンドに気になる記事がありました。
それは「掲示板の米レディットはグーグルより優れた”検索エンジン”か?」
ここで出てくる「レディット」とは記事タイトルの通り5chのような掲示板サイトで、欧米ではTwitterを超えるユーザー数と利用時間を誇ります。
掲示板サイトといえば我が国ではやはり5ch(旧2ちゃんねる)が有名ですが、5chのような板の作成と削除等を管理者が行う中央集権型でなく、ユーザーのボランティアに委ねる分散型となっています。
既に日本語サイトもあるのですが、翻訳に問題がある部分も多く、日本ではまだメジャーな地位は確立していません。
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さて、なぜ掲示板サイトであるレディットがGoogle検索の代替えとなり得るのか?
米国でこの論争を巻き起こしたのは、「検索クエリーの末尾に「reddit(レディット)」と一言付け加える人が増えている」という事実でした。
もちろん、レディットで求めているものを見つけ出すためにGoogle検索を使っているわけですから、それだけではレディットがGoogle検索の代替えとは言えません。
しかし、ユーザーにそうした手間をかけさせているGoogleの検索結果に問題があると言わざるを得ません。
記事では、Googleの検索結果が「劣化」してきたのには2つの理由があると言っています。


1. 広告重視の姿勢
 覚えている方も多いと思いますが、Googleが検索結果に広告を表示するようになったとき、その広告は検索結果の右側に表示されていました。
 では現在は? そう、検索結果の上段に写真なども入れて大きく表示されます。
 これにより、本来ユーザーが見たかった検索結果を見るには下にスクロールすることになり、ユーザーの利便性を阻害しています。
 実際、Googleの創業者も(Googleがマネタイズする以前ですが)1998年の論文に「我々は、広告によって賄われる検索エンジンは本質的に広告主の方へ偏り、消費者のニーズから遠のくと見ている」「さらに、広告収入は往々にして質の低い検索結果を提供するインセンティブを与える」と書いています。
2. 企業のSEO対策の徹底
 SEO、検索エンジン最適化の技術が進歩したことも、Google検索結果の劣化に繋がっています。
 企業はWebコンサルなどの力も借り、以下に自分たちのサイトがGoogleの検索結果の上に来るように努力しています。もちろんそれが悪いわけではありませんが、結果的にSEO対策をしていない企業や個人のサイトは、それがいかにユーザーが求めている情報だったとしても、検索結果の上位には表示されません。
 SEO技術の進歩ももちろん、さらにGoogleが検索エンジンではデファクト・スタンダードだったため、SEOの技術者はGoogleにピンポイントで対応すれば良かったこともあるでしょう。


私は一日に何回もGoogle検索を利用しています。
音声認識の技術も進み、私も含め他人がいるところでも音声検索をしている人も多くなりました。
まだまだGoogleは検索エンジンの頂点に位置し、それは当分続く。それはたぶん明らかです。
しかし、それが未来永劫続くとは思いません。
Google検査の末尾にレディットと入れるのは、「レディットの検索システムが不完全なだけ」であり、今後のレディットのアップデートでユーザーは一気にGoogleから離れるかもしれません。
とは言え、Googleのビジネスが検索エンジンの広告収入に頼っていた時代は今は昔。彼らはスマホOSのAndroidにYoutubeなど、ポートフォリオを組み替えています。
よってここ10年ほどでGoogleが危機に陥る確率は低いと思われますが、彼らのアイデンティティはやはり検索エンジンであることも事実で、これからの動きに注目していきたいです。


個人的にはレディットがここ日本でも力を増すことも期待していますが、ひょっとすると我が国においてGoogle検索の代替えとなるのはレディットではないかもしれません。
私の娘は、共通の趣味である競馬やプロ野球、そしてゲームやテレビドラマ関連で情報を検索する際、結構な頻度でTwitterを使っています。
日本ではTwitterとインスタグラム、この2つがSNSの「勝ち組」であり、後発のTikTokも若年層を中心にユーザー数を増やしています。
こうしたSNSが検索機能を強化することで、「Google検索離れ」が進むことが考えられます。
いや、ひょっとすると「TikTok売れ」が昨年のキーワードになったように、TikTokやYoutube、そしてインスタグラムやTwitterが「検索を不要にする」ことも視野に入れるべきでしょう。
そうした社会が来るとしたら、あなたは、そしてあなたの会社や顧客はどのようなことに今から取り組むべきでしょうか?

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