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ファカルティズ・コラム

2025年08月08日

「わかる」の多面性:私たちが目指すべき「わかる」とは

「わかる」という言葉、私たちは日々の生活の中で当たり前のように使っています。しかし、この一見シンプルな言葉の裏には、実はさまざまな意味合いが隠されています。

今回は、見る角度によってその表情を変える「わかる」という概念について深掘りしてみたいと思います。そして、私たち目指すべき「わかる」とは何なのか、一緒に考えていきましょう。

それでは、具体的に「わかる」の持つ多様な意味を見ていきましょう。



1. 認知・認識としての「わかる」

これは、最も基本的な「わかる」と言えるでしょう。

例:「あの人が誰だか、わかった」「今何時か、わかった」

この定義は、対象を識別したり情報を受け取って理解したりするレベルの「わかる」です。脳が情報を処理し、それが何であるかを認識できた状態を指します。

2. 理解・納得としての「わかる」

物事の仕組みや理由、背景などを論理的に把握する「わかる」です。

例:「この問題の解き方が、わかった」「彼女の言いたいことが、よくわかった」

単に情報を知るだけでなく、その情報がなぜそうなのか、どういう意味を持つのかを関連付けて把握するレベルです。因果関係や論理的なつながりを理解し、「腑に落ちる」感覚が伴います。

3. 共感・感情移入としての「わかる」

相手の気持ちや状況を自分のことのように感じ取る「わかる」です。

例:「彼の苦しみが、痛いほどわかる」「私も同じ経験があるから、その気持ちがわかるよ」

論理的な理解を超え、感情的なレベルで相手に寄り添い、その感情や立場を共有できる状態です。言葉にはならない微妙なニュアンスや背景まで含めて、直感的に感じ取る能力が求められます。

4. 習得・体得としての「わかる」

知識やスキルを身につけ、それを実際に使えるようになる「わかる」です。

例:「自転車の乗り方が、わかった」「英語が、少しわかるようになってきた」

頭で理解するだけでなく、身体がその動きや感覚を覚えている、つまり「カラダで覚えた」状態です。繰り返し練習することで、無意識のうちにできるようになるレベルの「わかる」であり、実践的な能力を指します。

5. 予測・洞察としての「わかる」

物事の先行きや本質を見抜き、未来を予測する「わかる」です。

例:「この状況だと、次に何が起こるか、わかる気がする」「彼の行動の裏には、何かあるとわかった」

過去の経験や現在の状況から、まだ顕在化していない情報や、隠された意図、将来起こりうることなどを推測し、見通す力です。深い思考と経験に裏打ちされた「わかる」と言えるでしょう。

では、私たちが目指すべき「わかる」とは?
これだけ多種多様な「わかる」がある中で、私たちが日常や仕事、学習において目指すべきは一体どの「わかる」なのでしょうか。

もちろん、それぞれの状況によって優先される「わかる」は異なります。しかし、多くの場面で共通して言えるのは、「習得・体得としての『わかる』」と「理解・納得としての『わかる』」を基盤とし、最終的には「予測・洞察としての『わかる』」を目指すことが、より深く、より実践的な「わかる」に繋がるということです。

第1ステップ:「認知・認識」から「理解・納得」へ

まずは、目の前の情報を正確に捉え(認知・認識)、それがどういうことなのか、なぜそうなっているのかを論理的に把握する(理解・納得)ことが不可欠です。ここが曖牲になると、その先の深い「わかる」には到達できません。

第2ステップ:実践を通じて「習得・体得」へ

理解した知識を実際に使ってみることで、本当の意味で「自分のもの」になります。
例えば英文を読んで内容を理解しただけでは、英会話が「わかった」とは言えません。誰か(最近ではAIもアリですね)を相手に聞き、話すことを繰り返すなかでその都度英語と日本語を翻訳しなくても会話が成立するようになって初めて、その知識・スキルが「習得・体得」のレベルで「わかる」ようになるのです。

最終ステップ:「予測・洞察」と「共感」を兼ね備える

そして最終的に目指したいのは、単に知識やスキルがあるだけでなく、それらを複合的に活用して未来を予測したり、物事の本質を見抜いたりする「予測・洞察としての『わかる』」です。さらに、人間関係においては、相手の感情や意図を深く汲み取る「共感としての『わかる』」が、より豊かなコミュニケーションを可能にします。

「わかる」という言葉は思いのほか奥が深いのです。
単なる情報処理から、感情の共有、そして未来の予測まで、その意味する範囲は広大です。

あなたが今、何かを「わかりたい」と思っているのなら、それがどのレベルの「わかる」なのかを意識してみてください。そして、段階を踏んで、より深く、より実践的な「わかる」を目指していくことが、あなたの成長に繋がるはずです。

さて、あなたにとっての「わかる」は、今、どの段階にありますか? そして、次に目指すべき「わかる」は、どんな「わかる」でしょうか?

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