ファカルティズ・コラム
2025年08月31日
対話するEC:AIが実現する新しい買い物体験
ネットショッピングで何か商品を探すとき、これまでは検索窓にキーワードを入力するのが当たり前でした。でも、最近はAIの進化によって、まるで店員さんと話すように商品を探せる「対話するEC」が注目されています。
<「検索」から「対話」へ>
従来のECサイトでは、私たちは欲しい商品の名前やブランド名を正確に入力する必要がありました。しかし、「まだ欲しいものがはっきり決まっていない」「どんな商品があるか見てみたい」といった曖昧な状態では、なかなか欲しいものにたどり着くのが難しかったのです。
そこで登場したのが、AIを搭載したチャットボットやパーソナルアシスタントです。これらのツールは、私たちが話しかけた内容を理解し、まるでリアルな店舗の店員さんのように、一人ひとりの好みに合わせた商品を提案してくれます。
<対話型ECの具体的な例>
例えば、以下のような対話を通して、欲しいものを見つけられます。
1. ファッションECにおける対話
ファッション領域では、AIがユーザーの好みを把握し、パーソナライズされたコーディネートを提案するサービスが増えています。
◆ZOZO (ZOZOTOWN/WEAR):
ファッション通販サイトのZOZOTOWNやコーディネートアプリのWEARを運営するZOZOは、AIを活用してユーザーの顔の特徴から似合う服を診断したり、髪型からコーディネートを検索できる機能を提供しています。これにより、ユーザーは「自分に似合う服がわからない」といった悩みをAIとの対話によって解決し、新しいファッションに挑戦しやすくなります。
◆ユニクロ:
ユニクロでは、AIチャットボット「UNIQLO IQ」を導入しています。これは単なる問い合わせ対応だけでなく、ユーザーが「〇〇に合う服は?」といった漠然とした質問をすると、AIが対話形式で最適な商品を探し、提案してくれます。これにより、ユーザーは店頭の店員と話すように、オンラインで商品選びを楽しめるようになりました。
2. その他の業界における対話
ファッション以外にも、多くのECサイトで対話型AIが導入されています。
◆メルカリ:
フリマアプリのメルカリでは、出品者が商品情報を入力する際に、AIが対話形式で情報入力をサポートする機能を提供しています。また、ユーザーが欲しい商品を検索する際にも、AIが対話を通じて検索を助け、最適な商品を見つけやすくする取り組みを進めています。
◆楽天市場:
楽天グループは、出店者向けの運営効率化ツールとして生成AIを活用しており、顧客サポートにも24時間対応のAIチャットボットを導入しています。これにより、ユーザーからの問い合わせに迅速に対応し、顧客満足度の向上を目指しています。
これらの事例は、AIが単なる情報提供者ではなく、個々のユーザーのニーズを深く理解し、より良い購買体験を提供する「対話のパートナー」になりつつあることを示しています。今後、こうした対話型ECは、さらに多くの分野へと広がっていくでしょう。
<ECとのコミュニケーションはさらに進化する>
今後は、さらに高度な対話が可能になると考えられます。例えば、ECサイトに自分のクローゼットの写真をアップロードすると、AIが「その服に合うアイテムはこれです」と自動でコーディネートを提案してくれるようになるかもしれません。
また、単に商品を提案するだけでなく、「この商品の素材はどんなもの?」「どうやって手入れすればいい?」といった、購入後の疑問にもチャットで答えてくれるようになり、顧客体験はさらにパーソナルで豊かなものになるでしょう。
<私たちはどのようにECと付き合うべきか>
このような新しいECと上手に付き合うためには、「自分の好みを言語化する力」がより重要になります。AIは、私たちが与えた情報をもとに最適な提案をしてくれるので、「どんなものが好きか」「何に困っているか」を具体的に伝えることで、より精度の高い答えが返ってきます。
各ECサイトの立場に立つと、こうした対話を通してユーザーのニーズを判断するデータが蓄積されることが大きなメリットです。
蓄積したデータを学習することにより、AIによるレコメンドの精度が上がり、それ自体が他のECサイトとの差別化に繋がるからです。
AIを賢く活用することで、私たちは無数の選択肢の中から、自分に本当にフィットする商品と、効率よく出会えるようになるでしょう。
また、ECサイトとしても効果的・効率的な品揃えができるようになりますから、ますますAIの活用が進み、それは他の業界にまで波及していくことが予想できます。
新しいECは、単に買い物をする場所ではなく、自分の好みやライフスタイルを再発見する場にもなっていくのかもしれません。
しかし、それを「便利なツール」ととらえるのか、あるいは「AIへの依存リスク」とらえるのか、どちらの考え方もできます。
さて、あなたはこうした分野でのAI活用をポジティブに受け止めますか?
それともネガティブに受け止めますか?
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