KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2008年07月25日

「頭の回転が速い」のも考えもの?

研修やセミナーを行っていると、しばしば「ああ、この人もったいないな」と感じることがあります。
たとえば、ある課題の解決策をグループ演習で考える場面で、ひとつの答えが見つかった時点で満足してしまい、それ以上考えなくなってしまう人がいます。
そしてグループの他のメンバーから他の案が出ると、それを否定したりします。
「いや、それはありえない。なぜならば・・・」
この主張がまた論理的だったりするものですから、他のメンバーもそれ以上何も言えなくなってしまいます。
しかし研修やセミナーでは、演習のアウトプット以上に重要なのが、『考えるプロセス』です。
「どんな良いアウトプットが出たか」よりも、「どうやってそのアウトプットを出したか」を振り返ることで学んでいるのですから。
実にもったいない。
周りからも、また自分自身も「デキるヤツ」と考えている人が陥りやすいのが、この「広く考えられない」という思考停止状態です。
これでは、せっかくの学びの機会を活かすことができません。
では、なぜこうした「デキる人」が、広く考えられなくなってしまうのでしょうか。

「デキる人」の特徴のひとつに、「頭の回転が速い」ということがあります。
様々な情報を高速で処理し、答(自分の考え)がすぐ導き出せます。
これは間違いなくこの人の『強み』ですが、この強みが裏目に出る場合もあるのです。
頭の回転が速いと、先を読むのも早くなります。
そうすると頭の中に様々な答が浮かびそうになっても、自分の経験則に照らし合わせて、考えがまとまる前に「これは無理」「これはダメ」と可能性を勝手に否定してしまうのです。
特にこうした人は成功体験も多いですから、自分自身の思考力に自信を持っています。
しかし時にそれが“過信”であることも多い。
そうすると、余計に経験に「縛られやすく」なるのです。
結果的にこれらが原因で、広く考えられなくなってしまうと言えるでしょう。
これを回避するには、ふたつのことに留意すべきです。
まずひとつは、やはり謙虚になることでしょう。
どんなに成功体験があっても、「自分はまだまだ修行中」と心得る。
何か答が浮かんでも、「もっと良い答があるはずだ」としつこく考える。
これを意識することです。
そしてもうひとつは、愚直にイシューを押さえること。
「今考えるべきことは、解決策のみ。とにかくたくさん考えよう」
「その解決策が良いか悪いかは、後で考えればよい」
これらを自分に言い聞かせながら考えればよいのです。


このブログを読んでいただいているということは、ビジネススキルを高めることに関心をお持ちのはずです。
そしてそうした意識の高い方は、たぶん社内で「デキる人」であろうと推察します。
それだけに、こうした「デキる人」だからこその思考停止に陥りやすい方も多いのではないでしょうか。
ということで非常にお節介ながら、本日はそんな皆さんへ提言させていただきました。
『謙虚に考える』『愚直にイシューを押さえ続ける』
これを意識して、もっと「デキる人」になっていただれば幸いです。

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