夕学レポート
2007年07月20日
「選挙のありよう」 浅野史郎さん
「“義をみてせざるは、勇なきなり” 別の言い方で“おっちぃこちょい”と言うのです」
浅野先生は、4ヶ月前の都知事選をサバサバとした表情でそう総括します。
宮城では吹いた風が、東京では吹かなかった。ただ、それだけのこと。それを読めなかった自分が悪い。
浅野さんの中では、出馬を後悔することも、誰を恨むこともなく、目の前の状況に真摯に向き合い、自分のこころに誠実の向き合った結果として割り切れているようです。
きょうの講演でも、直裁でユーモアたっぷりの浅野節を披露していただけました。
講演は、まずマスコミを騒がせる年金問題から始まりました
浅野先生は、年金問題を「無謬性の神話の落とし穴」と捉えているそうです。
官僚は間違わない。ミスを犯さない。周囲も、官僚自身もそう思い込んできた結果が、「あってはならないこと」が「あるはずがない」ことに変わり「万が一のための必要な備えをしない」という事態に繋がったとのこと。
浅野先生は、この神話を生み出してしまう根本的な理由のひとつに「密室性」の弊害があると考えています。
「権力を行使する」時には、外部から監視されているという環境を合わせて用意しておかないと「過ち」を起こす危険性があるということです。キャリア官僚として長く霞ヶ関の住人であった浅野さんが言うと、より一層説得力があります。
前知事の不正退陣をきっかけにして、宮城県知事に就任した浅野さんが、まず取り組んだのは「情報公開条例」の制定でした。
この条例を利用して、市民オンブズマンが糾明した結果、裏金問題やカラ出張問題が噴出してきました。浅野知事は、これらの悪しき慣習の清算を使命とし、任期中自らの歳費のかなりの部分を返上することになりました。
宮城県の発覚が契機となって、全国の自治体や中央官庁において同様に問題が明らかにされました。
「情報公開」によって、それまで必要悪として、密室の中で正当化されてきた悪しき習慣のいくつかが、正されたわけです。
「情報公開」は、叩けば埃がでる既得権者にとっては好ましいものではないので、猛烈な反発を呼び起こします。その時に、知事が強い態度で立ち向かえるかどうか。それはすべて「選挙の戦い方」で決まると浅野さんは断言します。
旧態以前とした選挙で戦えば、必ず既得権者に恩義を受けることになる。その恩義が改革のすべてを縛ることになる。
そう考えた浅野さんは、三度の知事選を、いずれの政党に支援も受けず、無党派で戦うことにこだわったそうです。
県民が自発的にコミットする理想的な選挙を貫けるかどうか、それが改革派知事になれるかどうかを決めることになります。
他にも、地方議会の意義と機能について、三位一体改革のよる地方分権の推進について等々、浅野さんが当事者としてかかわってきた地方自治の課題や問題についても、切れ味鋭いお話をしていただきました。
「自分の半径10キロの範囲の問題に関心を持たずして、国政に関心が生まれるはずがない」
浅野さんは、そう言います。
我々自身が、自分の地域の行政のあり方や、地方議会の活動に関心を持ち、コミットすること。それが民主主義の第一歩になる。
それを忘れると「第二の夕張市」になってしまう。
浅野さんの言葉は、いまも我々に向けられています。
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