夕学レポート
2010年09月07日
ドラッカー「再発見」の旅
慶應商学部の菊澤研宗先生が、ブログでドラッカーについて再三言及されている。
(菊澤研宗のブログ ダブルKのブログ)
実は、秋の夕学プレミアムagoraで、菊澤先生にドラッカーを講義してもらう。
菊澤研宗教授による【ドラッカー再発見】
ドイツ経営学の出身で、経営哲学学会の会長も務める菊澤先生が、なぜ「マネジメントの発明者」ドラッカーなのか、しかも「再発見」と銘打っている。
そこがこの講座の“キモ”である。
昨今のドラッカーブームは、凄まじいものがある。
「もしドラ」は100万部以上を売り上げたというし、ビジネス街の大書店には、ドラッカーコーナーが設置され、ずらりと著作が並んでいる。その中には、「なんちゃってドラッカー」とでも言うべき怪しげな本も混じっている。
茂木ブーム、勝間ブーム、池上ブームと続いた一連の「一本かぶり」現象が、ドラッカーブーム行きついた感がある。
ドラッカーがこの世を去って5年。いまが「神様」化の旬の季節なのかもしれない。
ブームの意図をあえて要約すれば次のようになるだろう。
「混迷の時期にこそ、マネジメントの発明者ドラッカーが説く原理原則を再確認しよう」
というものだ。
アマゾンでドラッカー本(本人著以外も含む)の売れ行きランキングをみると、
1位:「もしドラ」、2位:「マネジメント 基本と原則」、3位「ドラッカー365の金言」
という順番になっていた。さもありなんという印象である。
この講座は、上記のようなイメージに彩られたドラッカー像の「再発見」を企図するものである。
経営の原理原則を説くコンサルタントとしてのドラッカーではなく、経済社会のあり方と個の自律を謳い上げた思想家・哲学家としてドラッカーを読み解いていく。
ドラッカー29歳の処女作『経済人の終わり』(1939年)は、ヒットラー全盛期のドイツで暮らしていた若き日のドラッカーが抱いた、ファシズムへの強烈な危機感から生まれた。
「絶望した大衆が選び取った“魔法の杖”、不可能を可能にしてくれる劇薬、それがファシズムであり、その行く先には蜃気楼しかない」
ドラッカーは強い口調で、全体主義を攻撃しつつ、絶望した大衆に提示するべき「代替思想」を必死になって模索した。
彼が、何冊かの著作を通して創出した代替思想が、自由な経済社会であり、その主役としての企業であり、企業の論理と個の自律を統合するツールとしてのマネジメントであった。
「ドラッカーを読んだら、企業の社会的責任ついて書いてあって、ちょっとビックリ」という感想をよく聞くし、私もそう思ったが、よく調べてみると当たり前である。
彼は、よりよい社会はどうあるべきかを考え抜いた末に、その主役が企業経営であるべきだという結論に行き着いた。
ドラッカーの考えるマネジメントとは、経営のノウハウではなく、組織を通して社会をより良くするためのノウハウなのだ。企業に社会的責任があることは自明の理であろう。
ドラッカーブームの多くは、ドラッカーが辿り着いた結論だけを見ている。
この講座では、むしろ結論に行く着くまでの思想の変遷と熟成に目を向ける。
その思索の旅のガイドには、カント、ウェーバー、ポパーに精通し、哲学・経済学・経営学が交差する関連領域を専門とする菊澤先生が最適任に違いない。
ちなみに、この講座で取り上げるドラッカーの著作は次の三作である。
『経済人の終わり』 『産業人の未来』 『現代の経営』
先述の売上ランキングは、それぞれ52位、64位、12位となっている。
『現代の経営』は別としても、その他の二作品を読んだことがある読者は、ドラッカーファンの中でも少ないのではないだろうか。
ドラッカーは読んだことがないけれど、資本主義とは何か、自由とは何かを青臭く考え直してみたい人。
ドラッカーは大好きだけれど、昨今のブームには違和感を感じるという人。
もちろん「もしドラ」で、はじめてドラッカーを知ったという人も(上記をご承知という前提で)。
ドラッカー再発見の旅にご一緒しましょう!!
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