KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

夕学レポート

2012年08月23日

「感想レポートコンテスト」優秀賞の発表

そろそろ暑さにも飽きてきましたね。
会社帰り、最寄り駅から道すがら大きな公園の横を通ります。
毎年、夜遅くに通る際に、鈴虫の声が聞こえはじめるとホッとするのですが、今年はいつ頃聞くことが出来るのか。
しばらく忍耐の日々が続きそうです。
さて、恒例の「感想レポートコンテスト」優秀賞の発表です。
今期もたくさんの方にご応募いただきましたが、その中から「なおき様(テレビ局勤務)」が、藤原和博さんの講演(4/11)についてお書きになった「坂の上の坂に気付く」に決定いたしました。
藤原さんが、300人の聴衆を相手にワークショップを交えて仕切った動きのある講演を、ルポ風にまとめていただきました。
とても分かりやすいレポートであることが一番の選定理由です。
発表を兼ねて、改めてこのブログでもご紹介をさせていただきます。
なお、「感想レポートコンテスト」は2012年前期をもって終了とさせていただき、来期以降は趣向を変えて、受講者の声をお届けできる企画を準備中です。


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「坂の上の坂に気付く」(なおきさん/テレビ局勤務/40歳代/男性)
いきなりの”つかみ”だった。やや遅れて教室に入った私は、廊下で大きな笑い声が何度も何度も起きているのを聞きながら、教室に駆け込んだ。
「わたしの顔、誰かに似ていませんか?去年も紅白(歌合戦)にでていた、眼鏡をかけた、、、」
講演の後半で明かしてくれるが、付加価値コミュニケーションの第一歩、キャッチフレーズ・つかみ型。自分の顔が誰か、有名人に似ているというのは、最も良いパターンである。そこで初めての人とのコミュニケーションのきっかけをつかむ。その場の空気をなごますこともできる。
 確かに、歌手のさだまさしさんに似ていた。そう感じると、しゃべり方やしぐさもそう思えてきた。
 特に、”さだまさし”さんのような、誰でも知っていて、好感度も高い人物は、まさにこの”つかみ”には最適。「一生しゃぶりつくしてやろうと思う」(何度もこのパターンをネタにしていく)と、藤原さんは言っていた。 一気に場内の空気が変わり、藤原さんペースにどんどん引き込まれていった。まさに、”つかみ”はOKである。
 つかみは他にも、名前を使うやりかた(これも、同じ苗字の有名人や、同じ名前の芸能人などがいれば手っ取り早いらしい)や、②プラスモードで良い点を言っていく、③マイナスモードでマイナス面だけを言っていく、④Q&Aで質問をぶつけていく、、、などのやり方があるという。あまりプラスプラスでいくよりも、マイナス面のほうが印象に残りやすいらしいが、、、。これらも講演の後半で、2人一組で実践形式があり、面白く、飽きない、有意義な時間だったと思う。
 杉並区にある和田中学校に、民間企業出身の校長先生が就任したと、ニュースで見知っていた。夕学五十講の講師リストを見たときに、まっ先に藤原和博先生の名前が飛び込んできて、受講を申し込んだ。
 どんな内容の講義をしてくれるか、楽しみ半分、どんなことが出来るのか懐疑的な気持ち半分だった。しかし、実際受講してみたら、思った以上の内容の濃さだったし、まさに聴衆を飽きさせない工夫もしていたし、大変勉強になった。
 私が着席した時点で、すでに、三枚のホワイトボードが用意されていた。そこにはこの講義の序盤、中盤、終盤の内容が書かれていた。整理されていてわかり易い。
 ”さだまさし似のつかみ”から始まり、簡単な自己紹介があった。リクルートに長くお勤めだったそうで、マネージメントから教育界を変える。大きい目標をもって、和田中学の校長に転進されたらしい。後のVTRなどでも紹介されるが、そのやり方、授業の進め方は、確かにユニークだ。しかし、子供たちが活き活きと目を輝かせながら藤原先生の授業に積極的に参加している姿があった。のびのびと子供の能力を引き出し、伸ばしている授業風景があった。
さらに、この講義の大きな縦軸、情報処理力と情報編集力の違いの説明があった。自分のキャラクターを編集・プレゼンしていく、上記①つかみ、②プラスモード、③マイナスモード、④Q&A型、、、と話はどんどん進む。前のめりなってメモを取っている自分がいた。
 
 情報処理力とは、有意義な情報をキャッチしそれを処理していく能力。それには正解があり、私たちが学生時代からここまで、学び続けてきたものである。いかに的確に、広範囲に、素早く情報をキャッチし、それをいかに早く処理できるかを競ってきた気がする。それも一面大事なトレーニングだし、必要な能力でもある。
 もうひとつは、情報編集力。藤原さんはむしろこちらの方が更に大事で、こちらを鍛えていく教育こそが今、必要だし、現在の私たちにも求めれているものだと言う。そこに正解はなく、だからこそ様々な発想力が問われるし、右脳もフルに使わなければならない。
 情報編集力をつけるためのブレストが始まる。
「タイヤに付加価値をつけて売るなら、、、」
参加者一人ひとりがタイヤ会社の社長である。自社のタイヤを販売するのに、いかに他社との違い、自社製品の良さをプレゼンできるか。そして何よりも今回大切なのは、自由な発想力で、付加価値=今までの概念にないモノを発想できるか。3人一組に分かれてのブレーンストーミングだ。けっして他の人の発想を否定してはいけない。むしろ必ずそれを褒めるのが、基本ルールである。
隣の女性は、色にこだわった。真っ黒なはずの今までのタイヤには無い発想だ。赤や蛍光色のタイヤがあっても良い。そうなればむしろ夜間の自動車事故は減るかもしれない。女性らしい発想とも思う。
私は形から発想した。四角いタイヤがあっても良いではないか。あるいは五角形にしたらどんな回転をするのか、、、。否定されない。逆に褒められる。短い時間だったが考えていること自体が楽しかったし、人にはそれぞれのユニークな観点・発想点があるとも感じた。
さらに創造力を膨らまし、素材はプラスチックでも金属でも良いのでは?もっと酸素を入れれば、空を飛べる?水陸両用にもなれる?
今までの正解主義では得られないクリエイテイブな考え方が求められ、鍛えられるものだと思う。ただ、荒唐無稽でも話していくうちに、創造力は広がりを見せ、今までに無い発想は出来始める。それを体感できた。今の成熟した日本社会において、この想像力こそが求められるものだとも思う。現に今の職場にも求められているものかもしれないとも感じた。突飛な考え方も、ハナから否定してかからない。この点も大切な要素だと思う。なんでも言っていくうちに、広がりを見せるものだ。
NHKで放送されたVTRを挟み、次の課題に。閑話休題、このVTRのはさみ方も、タイミングも良かった。計算されているな。慣れているなとも感じるが、すっかり藤原さんのペースに巻き込まれていった。
800人が非難している被災地に、700個のショートケーキを差し入れる。不平不満なしに分けるにはどうする?
ここでもまた、クリエイティブな発想力が求められる。一人一個で割り切れないところがミソである。今の行政だと、この時点で差し入れを断るという。なんということだ。怒りを通り越し、あきれる。
この課題でも3人一組のブレーンストーミングが行われた。やはり人の意見は否定せず、必ず褒めるのがルールである。
ケーキをまず2つに分ける人、2人にひとつのケーキを配る人。残りは子供優先に配る。初めからじゃんけんでひとつずつ取り合う、、、被災地という条件なら、このゲーム性も明るくなれるための大切な要素だという。なるほど。
さらに話は進み、いよいよ今回のハイライト、人生のエネルギーカーブへ。
縦軸に幸福度、横軸に年齢で、折れ線グラフを描いてみる。これで自分のライフマネージメントが見えてくる。横軸の中央は現在の年齢。基点は誕生日。終点は死ぬ日まで。
これもまた興味深かった。短時間ではあったが、幼少期、学生時代から今までを振り返ることも出来た。さらに、人生は頂上がひとつだけの富士山型ではなく、実は何度も何度も”やま”のある八ヶ岳連峰型である。言われてみれば、確かに私の人生にも何度か”やま”と感じられるときはあった。
そして人は、一度落ちてから立ち直り上昇している時ほど、幸せを感じ、やりがいを持ってことに臨んでいる。それが藤原さんの言う「坂の上の坂」であり、今の状態が”底”であれ、”やま”であれ、今後まだまだ別の”やま”はくるし、それに向けての準備も必要である。
まもなく50歳を迎える私の胸に、この考え方は突き刺さった。
仕事面でもプライベートでも何度かの”やま”は経験してきたが、今はもうなだらかな下り坂で、人生の着地点を迎えるのかなとなんとなく感じていた。しかし私も、更なる次の”やま”に向け上り始めなければ、、、少なくともその準備をしなければ。仕事でもプライベートでも、、、。
 勇気とやる気をもらった2時間だった。
 ここまでの講義・授業が出来る藤原さんのベースはどこで鍛えられたのか。直接聞いてみたかったが、質問時間が短かったのが、唯一のこころ残りではあった。
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