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ピックアップレポート

2024年06月11日

芝 哲也「ウェルビーイング・イノベーション~幸せなイノベーションを実現する~」

芝 哲也
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部教授

ウェルビーイングと課題先進国日本

近年、日本では「ウェルビーイング(Well-Being)」という言葉が注目を集めています。ウェルビーイングとは「社会的・身体的・精神的に良好な状態であること」を指し、「幸福」という訳語が当てられることも多くあります。 この概念が広まっている背景としては、働き方改革やメンタルヘルスの重要性が社会的に認識されてきたこと、ウェルビーイングの研究が進み、基本的な仕組みや要素が解明されてきたこと、そして、コロナ禍を経て、リモートワークや時差通勤など新しい概念が日常的になり「働き方」や「生き方」を考える機会が増えたことが考えられます。社員のウェルビーイングを向上させることによる、生産性の向上や離職率の低下を期待し、経営に取り入れる企業も増えてきています。

また一方で、日本は課題先進国として、環境問題、少子高齢化、労働人口の減少など様々な課題に直面しています。そして、技術や市場の飽和(コモディティ化)により、「日本はイノベーションのジレンマ状態に陥っているのではないか」とクレイトン・クリステンセン氏 が指摘しています。これらが絡まり合って、閉塞感を漂わせ、「失われた30年」という言葉が囁かれるようになったのかもしれません。この状況を打破するためには、「破壊的イノベーション」が必要だと言われており、これまでも政府や企業による政策や施作が行われてきていますが、現状では、効果が現れているとは言い難い状況です。

ウェルビーイング・イノベーションの誕生

そうした中、ウェルビーイング研究の第一人者である前野隆司教授(慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科教授/ 武蔵野大学ウェルビーイング学部学部長)が、別々に研究していた、「ウェルビーイング」と「イノベーション」において、「それぞれの構成要素が、ほぼ同じである」という発見をし、両者が繋がっているのではないかという見解に至りました。
そして生まれたのが「ウェルビーイング・イノベーション」という概念です。

はじめまして、芝哲也と申します。

現在デザイン事務所 Cauz(コーズ)、一般社団法人クリエイティブ思考協会の共同代 表理事、そして、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の教授として、2年時のデザインとイノベーションの授業を担当しています。そして、新設のウェルビーイング学部でも3、4 年次のウェルビーイングイノベーション関連の授業を担当しています。
大学卒業後、カナダの広告代理店で任天堂USなどのウェブデザインの仕事をしていました。そして、東京都民全員に配られた黄色い防災の冊子「東京防災」や横浜ベースターズのブランディングなどを手がけ、グッドデザイン賞の審査員をしている太刀川英輔氏率いるデザイン事務所で働き、その後、独立しました。

デザイナーとして「どうすれば創造性を高めることができるのか?」という問いに答えるべく実務経験を積んでいた中、「芝がやっているのは研究なのではないか?」という指摘を受けたことをきっかけに、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科で前野研究室に所属するというご縁をいただきました。

僕は、デザイナーとして様々な製品やサービスをカタチにしてきた経験と、まちづくりの企画会議などでアイデア発想の場を創り、企画実行していた経験から、「形になるプロジェクト」と「形にならないプロジェクト」に遭遇し、その違いは何なのかを探究していました。そしてウェルビーイングの概念と出会い、幸福と深い相関関係がある4つの因子「自己実現と成長」「つながりと感謝」「前向きと楽観」「独立と自分らしさ」を押さえるとともに、自らが探究してきた日本人の思考体系に合った創造的思考のオリジナルメソッドを掛け合わせることで、「形になるプロジェクト」ひいてはイノベーションに近づけるのではないかと考えました。

そこ で、慶應GIC(グローバルインターディシピナリーコース)という学部生向けのMake Great Ideasという授業で、ウェルビーイングを中心にすえたデザインについて教え、探究し始めました。また、4年前から、ソーシャルクリエイターズ・スクールというスクールを主催し、Make great ideas の社会人版を主催しています。
同時に、「幸せを再定義する」という元文部科学副大臣で慶應大学、東京大学教授、鈴木寛先生の社会創発塾の運営も3年させていただき薫陶を受けました。その後、伊藤羊一学部長率いる、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の教授として、「課題解決プロセス」「プロトタイピング」「デザインと事業創造」「事業と哲学」という、デザインを通した課題解決やイノベーション、ブランディングなどの授業を担当しています。それら全ての根底にあるのは「ウェルビーイングを中心にすえたデザイン」です。

ウェルビーイングを中心にすえた製品・サービスをデザインする

製品、サービスはもともと「人を幸せにするため」に作られているものです。ただ、ウェルビーイングの要素を中心にすえて作られているものはほとんどありません。
ウェルビーイングを中心にすえた製品・サービスは、ウェルビーイングの科学的知見により明確になっている因子などを活用することで、作ることができます。
人を幸せにする製品、サービスは、イノベーションの起爆剤となる可能性が高まります。また、ウェルビーイングを中心にすえた製品、サービスを開発する側のウェルビーイングも高まり、その相乗効果によって、ウェルビーイング・イノベーションが起こるのではないかと考えています。

このたび、前野先生が慶應MCCで10年ほど続けていた「デザイン×システム思考」の講座が、「ウェルビーイング・イノベーション」の講座としてリニューアルされ、前野先生と共に私も講師として参加することになりました。8年間慶應GICでデザインとイノベーションを教えてきた経験を活かし、最先端のウェルビーイング・イノベーションの手法をお伝えしますので、ご期待いただけると幸いです。


芝 哲也

芝 哲也(しば・てつや)
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 教授

慶應MCC担当プログラム
ウェルビーイング・イノベーション

1983年大阪生まれ。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了。バンクーバーフィルムスクール デジタルデザイン学科卒業。卒業後大手広告代理店 BLAST RADIUS(カナダ)に勤務。帰国後デザイン事務所 NOSIGERに加入しサイエンスコミュニケーション、災害支援など、社会課題解決プロジェクトに参加。
2011年デザイン事務所Cauzを設立、広義のデザインの枠を超えて、街づくり、中小企業の支援、起業家支援、社会課題解決などへのデザインの適応を行う。2018年クリエイティブ思考協会設立共同代表理事。

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