ピックアップレポート
2025年07月08日
本間 浩輔著『増補改訂版 ヤフーの1on1』
はじめに
あなたの部下はこの1年、どんな仕事をしていましたか?
部下とあなたが最後に一対一で話したのはいつですか?
あなたが部下よりも高い給料を手にする理由は何ですか?
本書は、一対一の対話、つまり「1on1」を行うためのコツを記した、職場コミュニケーションの入門書です。
上長と部下の1on1と聞くと、多くのビジネスパーソンは「面談」を想像するのではないでしょうか。仕事の進捗を確認する面談、人事評価に関する面談など、職場では多くの面談があります。
しかし、ヤフー(現LINEヤフー)の1on1は、面談とは異なります。
原則週1回30分、業務として行う「部下のための時間」です。
上長のための進捗確認の場でも、仕事の相談の場でもありません。
一度デモを見ていただいて、自分たちで試して、練習すれば誰でもできます。
でも、最初からうまくいったわけではありません。
「1on1に時間を取られてほかの業務ができない」
「1on1に意義を感じない」
こんなことを何度も言われました。
しかし、紆余曲折を経た結果、少しずつ社員に浸透していったように思います。
本書では、ヤフーの1on1について、マンガや会話スクリプト、ヤフーをよく知る研究者や実際に1on1を取り入れている現場の管理職との対談、FAQなど、さまざまな切り口で1on1を上手に導入し、継続する方法を記しました。
そして今回、2017年3月に刊行した『ヤフーの1on1』に、大幅な加筆修正を行った増補改訂版を発売する運びとなりました。
『ヤフーの1on1』は、おかげさまで多くの方に読んでいただき、刷を重ねてきました。その後、たくさんの類書も出ましたし、1on1を実践する企業も増えました。一種のブームになったと言えるかもしれません。旧版がその火付け役になったと言ってもらえることもあります。
ですがそれは、ヤフーの事例が先進的であったとか、優れていたということではありません。
時代が1on1を必要としていたのです。
みんなが心のどこかで、上長と部下の関係を変えなければならない、と思っていたのでしょう。
加えて、コロナ禍によって以前よりも人と人との距離が広がってしまった。
コミュニケーションの環境が変わったことで、職場のメンバーも管理職も、ある種の不安に陥ってしまいました。さらに近年は、職場のメンバーがどんどん辞めていく。人手不足も相まって、企業が経営を継続するのに深刻な影響を及ぼしています。
2024年3月、私はヤフーを退職しました。
いまは、いくつかの企業の経営に関わったり、1on1の導入、定着のお手伝いをしたりしています。また、慶應丸の内シティキャンパスという社会人向けの教育機関において、講師も務めています。
そのなかで、1on1について参加者のみなさんと考える時間を持ったり、企業の人事の課題を詳しく聞いたり、ヤフー以外での1on1についても学びを深めていくことができました。
この時間に加え、働く人の環境や、私自身の変化で、『ヤフーの1on1』を執筆した当時からかなり考え方がアップデートされたように感じます。そこで再度『ヤフーの1on1』を読み直してみると、あらためていま伝えるべき内容が少なくないことに気づきました。それが増補改訂版を出そうと考えた理由です。
今回の改訂版では、2章から5章を全面的にアップデートしました。2章は1on1の始め方をより体系的に整理し、3章は1on1を即興劇のように展開していくための4つのモードを追記しました。そして4章のFAQでは、企業や社会人講座においてよく聞かれる質問について、熱く(ときに厳しく)お答えしています。プロフェッショナルたちと私との対談も新たに収録し直しました。
だから本書では、私たちが考え、実践してきた1on1について余すところなく紹介し、解説しています。
とにかく1on1をやってみてください。
あなたの目の前の部下と一対一で対話をしてみてください。
1on1は、最前線で働くすべての管理職のための強いツールになるはずです。
『増補改訂版 ヤフーの1on1』(ダイヤモンド社2025年2月)を著者と出版社の許可を得て抜粋・編集・追記しました。無断転載を禁じます。

本間 浩輔(ほんま・こうすけ)
(株)パーソル総合研究所取締役会長、(株)朝日新聞社取締役、立教大学大学院経営学専攻リーダーシップ開発コース客員教授
1968年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、野村総合研究所に入社。2000年スポーツナビの創業に参画。同社がヤフーに傘下入りしたあと、人事担当執行役員、取締役常務執行役員(コーポレート管掌)、Zホールディングス執行役員、Zホールディングスシニアアドバイザーを経て、2024年4月に独立。企業の人材育成や1on1の導入指導に携わる。
神戸大学MBA、筑波大学大学院教育学専修(カウンセリング専攻)、同大学院体育学研究科(体育方法学)修了。
◎担当プログラム◎
『小さなリーダーシップ論』
『実践「1on1」の本質』
『経営人事の仕事論』
『ラーニングイノベーション論 ゲスト講師』
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