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ピックアップレポート

2026年02月09日

平井 孝志著『頭の中のぐちゃぐちゃがスッキリする思考の「型」』

平井 孝志
筑波大学大学院ビジネスサイエンス系 国際経営プロフェッショナル専攻 教授


「何をしたらいい?」がなくなる

 売上アップの方法、新商品の売り方、プレゼンでクライアントに刺さる内容……。人に聞いてもいま一つわからない、と悶々とすることはありませんか?
 初めて任される仕事、無理難題に見える課題や規模が大きくてどこから手をつけていいかわからない仕事は、誰にだってふりかかってきます。
 そんなとき、なぜマトリックスを使わないんだろうと思うのです。

 マトリックス思考の威力は、さまざまな角度でものごとを複眼的に見て、その上でシンプルに本質をズバッと切って取るところにあります。

 マトリックス?

 何のことだ? と思われた方も多いでしょう。辞書(三省堂『大辞林 第三版』)で調べると次のような説明がなされています。
 (1)母体、基盤 (2)母型、鋳型いがた (3)行列

 うーん、まだよくわからない。そうだと思います。
 おそらく3番目の「行列」が、ここで言う「マトリックス」のイメージに近いでしょう。「行」がヨコ(水平)で、「列」がタテ(垂直)。
 この「タテ」と「ヨコ」を活用した発想は、実は世の中に溢れており、仕事や生活に非常に役立っています。ただあまりに身近過ぎて、逆に無意識のうちに素通りしているのが実情です。身近な例を挙げてみます。

  • 駅のホームにある時刻表 : タテが「時」、 ヨコが「分」のマトリックス
  • 看板の地図 : タテが「南北」、 ヨコが「東西」のマトリックス
  • エクセル(表計算ソフト) : タテが「数字」、ヨコが「アルファベット」の行列
  • パワーポイント : タテとヨコで構成された一枚の紙

 つまりマトリックスを用いた考え方とは、端的に「タテ・ヨコ発想」だと言うことができます。

 本書は「マトリックス」を用いた考え方について解説し、皆さんの思考力アップを狙いとしています。

 このマトリックスを使いこなすことができれば、「何から手をつければいいかわからない」とお手上げだった問題の第一歩目を踏み出せるようになります。
 売上アップのためなら「技術力の高さ」で勝負するべきか、「新商品の数」「手ごろな価格」で攻めるべきかが見えてきたり、新商品の売り方なら「競合他社」と戦うべきか、ブルーオーシャンを狙って「海外進出」を考えるべきかといったマイルストーンが見えてくるようになります。
 本書では、このマトリックスで使用する「軸」を立てる際の基準や選び方を徹底して解説しています。
 この本でマトリックスの存在を知った人には信じがたいかもしれませんが、マトリックスは非常に汎用性が高いのです。それを意識して活用することができれば、仕事の成果や生活の質の向上に威力を発揮するはずです。

思考を手助けする万能ツール

 最近は、情報が溢れる世の中になりました。そんな世界では大事なものが逆に見えにくくなっています。
 大事なことは何なのかをしっかりと理解するためには、情報処理だけでは不十分です。
 情報処理だけで思考が深まったり、問題が解決することはありません。情報を集めることや情報処理はAIに任せればよくて、ヒトはやはり何かをちゃんと「考える」べきです。
 そして、「考える」ためにはものごとを見る「視点」が必要になります。
 マトリックス思考を用いれば、強制的にタテ軸をどうすべきか、タテ軸がこうならヨコ軸は何か、と「視点」の探索が求められます。そして、情報や課題が可視化されることで、考えることをサポートしてくれます。

 申し遅れました。
 私はひらたかと申します。現在、筑波大学(東京キャンパス)の社会人向けMBAプログラム(国際経営プロフェッショナル専攻)で大学教授をしています。専門は経営戦略論です。
 大学の先生になる前は、ベイン・アンド・カンパニー、ローランド・ベルガーといった戦略系コンサルティングファームでクライアントの支援をしたり、スターバックスやデルコンピュータ(現デル・テクノロジーズ)で経営企画やマーケティングの仕事をしていました。
 これまでのキャリアを通じて、私は何度もマトリックス思考のパワーを見聞きしてきましたし、仕事や生活においても大いに役立ててきました。

 そこで本書では、無意識に通り過ぎてしまいがちなこの強力な考え方を意識して振り返りたいと思います。
 皆さんが抱える問題の解決や、思考の深化・整理に役立つはずです。

 本書の構成は以下のとおりです。

 第一章では、マトリックスで考えるとなぜ頭がスッキリするのか、その理由について説明します。
 そして第二章では、抱えている悩みや課題に対してマトリックスを活用して、どのように問題を設定するのか、という「問題設定」について議論します。そもそも問題設定を間違うと、正しい解決策に辿り着く訳がないからです。
 続く第三章から第六章では、さまざまな事例を紹介しながら、マトリックスの使い方について詳しく説明していくつもりです。
 問題に悩まされているとき、人はどうしても視野が狭くなってしまうものです。たとえば、難題に立ち向かうとき、目先のことに捉われて、大事なことや問題の本質が見えなくなってしまいます。
 そこで大切になるのは、ものごとを「複眼的」に見るための「視点」です。
 それらの「視点」を頭の引き出しの中に蓄積していけば、視野を広く持つことができ、必ずや発想が豊かになるはずです。
 そして終章ではこの本を題材にして「本書のターゲット層は誰か」、「読者層毎の処方箋は?」といったテーマでマトリックス思考を実践してみたいと思います。

 本書では数多くの【質問】が出てきます。そんなに難しい質問でもなく、ひねくれた質問でもありません。
 最初はなかなかわからないかもしれませんが、続きを読む前に1~2分立ち止まって、自分の頭で考えてみてください。ちょっとしたトレーニングになるはずです。

 本書が皆さんの思考力の強化につながれば幸いです。


頭の中のぐちゃぐちゃがスッキリする思考の「型」』(2025年、PHP研究所)の「はじめに」を著者と出版社の許可を得て掲載しました。無断転載を禁じます。


平井孝志

平井 孝志(ひらい・たかし)

筑波大学大学院ビジネスサイエンス系 国際経営プロフェッショナル専攻 教授

東京大学教養学部基礎科学科第一卒業、同大学院理学系研究科相関理化学修士課程修了後、ベインアンドカンパニー、デル(法人マーケティング・ディレクター)、スターバックスコーヒージャパン(経営企画部門長)、株式会社ローランド・ベルガー 執行役員 シニアパートナーなどを経て現職。米国マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院MBA。博士(学術)。コンサルタント時代には機械/電機メーカー、商社など幅広い業界において、全社戦略、マーケティング戦略の立案・実施などに豊富なコンサルティング経験を持つ。

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