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今月の1冊

2024年05月14日

自分の葬儀で流したいプレイリスト

名著『7つの習慣』の中で、コヴィーはこう説いています。
「自分の葬儀でどのような弔辞を話してほしいかを考え、今後の人生を歩むべきだ」

私はこれにはふたつの意味があると考えています。

ひとつめは「進んで弔辞を読んでくれるような人をつくろう」という意味。浅く広くでなく、深い人間関係をしっかり築いておくことの重要性です。

そして2つめは「弔辞の内容が参列者の心を打つような行いを日頃から意識しよう」という意味です。どんなに深い人間関係を築いていても、弔辞の内容が昔のやんちゃエピソードだったら嫌ですよね?
つまり「家族や他者、そして社会に対して意義のある活動や言動」の重要性です。やはり死んだ後に「やっと死んだか」とか「ふーん死んだんだ」と思われるより、「惜しい人を亡くした」「あの人のおかげで…」と思われたい人が多いはずです。

だから「意味のある人生」を送りたいのであれば、この主張はひとつの指針にはなると思うのです。弔辞の内容から意識すべき行動をブレークダウンすれば良いわけですね。

…ということで、今回のテーマは同じく「自分の葬儀」です。

ただ、これはコヴィーの主張のような「今後の人生における指針」を提供してくれるわけではありません。

とは言え、せっかくの人生最後(まあ人生は終わっているわけですが)のイベントである葬儀にわざわざ来てくれた方々に対し、なんらかの「おもてなし」をしたいですよね。
では、どうやっておもてなしするかというと、遺言で当日の料理や飾り付けを指示しておく、という手もあるとは思いますが、できればもう少しオシャレなやり方で行きたい。

そこで着目したのが「BGM」です。

葬儀の場で流すBGMによって、家族や友人たちに「ああ、あの人らしいなあ」とか「最後にこう来たか」、あるいは「こういうメッセージか?」と思ってもらえたら…

参列者の印象に残り、ずっと自分のことを覚えておいてもらえる、私はそう考えました。

「人は忘れられた時に 本当の死を迎える」

昔から何度となく言われていることですが、音楽という人類共通かつ最大のエンタメこそ「忘れられられなくする」効果があると思うのです。

前置きが長くなりました。
では、私が自分の葬儀で流してほしい曲のプレイリストをご紹介しましょう。

ちなみに「クラシック音楽」→「洋楽」の2部構成です。クラシックはこの「今月の一冊」でも切り口を変えて何度かお話ししてきましたが、私は元々洋楽派、それもハードロックやヘヴィメタル大好き人間です。
ですからまずは静かにクラシックでスタートし、選曲のストーリーを印象づける。そして葬儀ではあまり使わない洋楽とその流れで、参列者にとって故人である私とこの葬儀を忘れられないものにする。それを目論んでいます(笑)

第1部:クラシック編

1. ペルト:ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌
以前もここでご紹介したペルトが、尊敬する作曲家であるブリテンの死に際して作った曲。鐘の音で始まる静謐かつ荘厳さは、まさに鎮魂歌。まずは「つかみ」の一曲目です。

2. マーラー:交響曲第5番 第4楽章 アダージェット (合唱バージョン)
ネットでも多くの方が「この曲聞きながら死にたい」という名曲。しかしここは捻って「合唱バージョン」です。その意外性とともに、聖歌のような神々しい響きに参列者も心を奪われる(はず)でしょう。

3. ブルックナー:弦楽のためのアダージョ
アダージョとは「ゆるやかに/おだやかに」を意味する音楽用語。特に弦楽器だけで構成されたアダージョは優しく切ない名曲が多いですが、まずはわかりやすいブルックナーから。

4. バーバー:弦楽のためのアダージョ
アダージョ連発。バーバーのこの曲はプルックナーより暗く、穏やかさより悲しみが強調されています、ここで「ああ、あいつはもういないのか」と悲しんでもらえたらOK!

5. ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章 アダージョ・カンタービレ
ここからはピアノ曲。最初はビリー・ジョエルが名曲「This Night」の後半で引用したことでも有名なベートーヴェン「悲愴」第2楽章です。明るさと切なさが同居した誰でも知っているメロディで、参列者の心を癒やすことを狙っています。

6. マーラー:交響曲第5番 第4楽章 アダージェット(ピアノ独奏版)
ここで再びのマーラー、しかしピアノ独奏バージョンです。その意外性とともに、ピアノ独奏ならではのシンプルな響きは、この曲の良さを再確認させてくれます。

7. ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 第2楽章 アダージョ・ソステヌート
ピアノ曲だとショパンやリストを真っ先に思い出す人も多いでしょうが、ピアノ協奏曲の「泣きのメロディ」でラフマニノフの右に出る人はいないでしょう。この曲はエリック・カルメンの大ヒット曲「オール・バイ・マイセルフ」のモチーフとしても有名です。

8. フェルヘルスト:日本にささぐ歌
ベルギーのトロンボーン奏者、フェルヘルストが東日本大震災に遭った日本のために作った曲。基本的にはトロンボーンを中心とした金管楽器だけで演奏されることが多いです。絃楽→ピアノ→金管という流れから何を感じてもらえるか。私からの「問い」の曲でもあります。

9. マーラー:交響曲第5番 第4楽章 アダージェット
クラシックの第1部のラストは、三度のマーラー5番4楽章。ここでフルオーケストラの原曲版です。ハープの緩やかなアルペジオから始まり、同じマーラーの第9番終楽章のエンディングと同様に息を引き取るように終わる。そう、私が「死んだ」ことを、ここで思い出してもらいたいのです。

『第2部:洋楽編』

1. エア・サプライ:Every Woman In The World
マーラーから一転、優しく、しかし力強く愛をうたう曲で第2部はスタートしますが、実はこの曲、私の結婚式でも使った曲です。サークル(映画研究部)で初めて監督した自主映画のエンディングに脚本を書いた同期の指定でこれを使いました。結婚式のキャンドルサービスで、サークル同期のテーブルを訪れたときにこれが流れるようにしていたので大変ウケました(笑) よってこの曲でサークルの仲間たち(その時何人生きているかわかりませんが)に「ここでww」と笑ってほしいのです。

2. デフ・レパード:Hysteria
一部の参列者の笑いのまま、ここからはミドルテンポの明るめのロック、ないしはロッカバラードが続きますが、そのオープニングはデフ・レパード。「僕は死んでも君たちの未来は続く」というメッセージが伝わることを信じて。

3. ボストン:More than A Feeling
日本語タイトル「宇宙の彼方へ」。サビと流麗なギターソロから、皆には未来があることを感じてほしい。

4. キッス:Shandi
私が洋楽にハマったのは中学時代、その入り口がキッスでした。そのケバケバしいメイクとコスチュームから繰り出されるポップかつハードな曲は、間違いなく私の音楽人生の原点です。数ある名曲の中から、恋人への愛を優しく歌ったこの曲をチョイス。

5. ジャーニー:Open Arms
切ない愛の歌。様々な解釈ができる歌詞ですが、私は既にこの世にいない両親や友人たちの元へ旅立つ時が来た、ということをイメージしました。伝わるかなあ…

6. リンキン・パーク:In The End
ここで雰囲気は一変。ヘヴィメタルとラップミュージックが融合したリンキン・パークの暗くヘヴィな曲を挟みます。正直、葬儀には全く不釣り合いな曲ですが、意外性と「辛い過去を思い出せ」というメッセージを込めて、あえて選曲しました。トコトで言えば「スパイス」ですね。

7. バンド・エイド:Do They Know It’s Christmas?
ご存じクイーンがモデルとなった映画「ポヘミアン・ラプソディ」のエンディングである「ライブ・エイド」開催のきっかけとなった曲。後に米国のミュージシャンが「We Are Thw World」を、ハードロック系のミュージシャンが「Stars」を作るきっかけにもなりました。 ここまでは自分の周りの人々にフォーカスしていましたが、ここで視野を広げ「世のため人のため」に少しは貢献できたか、を自分なりに考えてみます。

8. クイーン:You’re My Best Friend
ライブ・エイド繋がりでクイーンの名曲。曲のタイトルからおわかりの通り、この場に参列してくれた、そして今は亡き友人たちに捧げる曲です。皆がいたから僕の人生は楽しく、意味のあるものになった。精一杯の感謝を込めてこの曲を流したい。

9. ポリス:Every Breath You Take
日本語タイトル「見つめていたい」。私はこの曲をひとり娘に捧げます。生まれたときからずっと君を見つめてきた。叱って泣かせたこともあるけど、一緒に行った2.5次元の舞台や特撮・アニメ映画に競馬場、本当にこんなオタクの父親に付き合ってくれてありがとう。これからは空から見守っているよ。

10. 10CC:I’m Not In Love
もちろん妻へ捧げる歌。「僕は君に恋してなんかいないよ(I’m Not In Love)」。なぜ男は素直になれないのだろう。これまでの人生、一番長く側に居てくれたのは君です。辛いこともあったけど、君が僕を笑わせてくれたから、僕はここまでやってこれた。感謝しても仕切れない。本当に私の妻は世界一の妻です。

11. ナイト・レンジャー:Goodbye
米国のハードロックバンド、ナイト・レンジャーの力強く、しかし切ないロッカバラード。アコースティク・ギターのアルペジオで始まり、ギターソロは美しく泣いている。
プレイリスト最後の曲。万感の想いを込めて、この場にきてくれた人だけでなく、出会った全ての人々に感謝し、笑顔で「サヨナラ!」
 
******
 
…今さらですが、プレイリストを考えている時間はとても楽しい時間でした。

どのような選曲と流れにすれば、自分らしさを出しながら感謝を伝え、そして自分のことを思い出して笑顔になってもらえるのか。

加えて、(まだまだ長生きするつもりですが)自分の人生を振り返り、俯瞰することができました。
あなたなら、どのような「自分の葬儀で流したいプレイリスト」を作りますか?

(桑畑 幸博)

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