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自分で決める「新しい生き方・働き方」島田由香さん

2021年08月10日

島田 由香
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役・人事総務本部長
講演日:2021年5月28日(金)

島田由香

それまで散らばっていた思考が、ふとしたきっかけで全てがつながるような感覚を覚えることがある。私にとって、今回の島田由香さんのお話は大いなるきっかけとなった。

私はフリーランスのWebデザイナーなのだが、制作だけでなく講師業にも従事している。現在進行中の新入社員研修では、講師として技術を伝える以外に、社会人の先輩として彼らが抱えている悩みや不安に向き合う毎日だ。
新入社員たちのネガティブな感情を少しでも和らげて、将来の希望に変換してあげるにはどうしたら良いのか。なかなか考えがまとまらないこの時期に、島田さんのお話を聴けたのはラッキーだった。

変化をどう活かすか?

講演冒頭、「今日は、いつも外側に向かっている意識を自分の内側に向けてほしい」と語った島田さん。その言葉どおり、島田さんからの問いかけに答える形で自己を顧みるワークがいくつか行われた。たとえば、最初の問いかけはこんな感じ。

  • コロナ渦によって、あなたの「あたりまえ」は変わりましたか?
  • あなたの「あたりまえ」はどう変わりましたか?
  • その変化(シフト)からあなたは何を得ましたか?

“変化”は「良いもの」「肯定すべきもの」とされることが多い。でも島田さんは「必ずしもOLD WAYが悪いわけではない」と言う。「NEW WAYを知ることで、自分がどちらの道に行くか選択できる」というのが、この話の結論だ。

とはいえ、どんなにOLD WAYを行きたくてもNEW WAYを完全に無視できないのが現実だ。
たとえば働き方。コロナが落ち着いた後もリモート中心の働き方を続ける人は一定数いるだろう。自由に移動できるようになれば、ワーケーションがもっと広まるかもしれない。

また副業に対する興味が高まっている昨今、「副業可」かどうかは職場を選ぶ際の重要な条件になりつつある。これまでどおり副業を否定し続ける企業はいずれ衰退していくだろう、というのが島田さんの見立てだ。
ちなみに、島田さんに言わせると「副業」とは副収入を得るためだけにやるのではなく、自分の能力を他の場で試すための「複業」であり、人生をハッピーにするための「福業」でもあるそうだ。

フリーランサーの私は、さまざまな場で働くことで得られる自由や、自分の新たな可能性に気づかせてもらう喜びを知っている。しかしその一方、「本業」を持たない故の不安も常に抱えている。しっかりした居場所を持っている人だけに許される「副業」がうらやましい。

さて。話は変わるが、2020年の12月、世界は200年に一度の大きな転換期を迎えたことをご存知だろうか?
グレートコンジャンクションにより「地の時代」から「風の時代」に切り替わったことで、これまでの価値観は一変する。「風の時代」には、”お金・物質”より”情報・体験・人脈”、”安定”より”革新”、”所有”より”共有”が重んじられるのだ。

…と、いきなり始まった占星学ベースのパラグラフに戸惑いを覚えた方もいるだろう。島田さんが「風の時代」について話し始めた時の会場も、まさにそんな空気だった。
私は占い好きの友人からこの手の話を聞いたことがあるのですんなり受け入れられたが、ああいう場でスルッと占星学の話題を滑り込ませる島田さんの柔軟さこそが今の時代に求められているのだろうなと思った。
物事は、常に変化し続けているのだ。

自分のWell-Beingに責任を持つ

講演の中で何度もくり返されたメッセージに「決めることの大切さ」がある。これは島田さんが学んだポジティブ心理学に基づいた考え方だ。ポジティブ心理学とは、

人が幸福になるためにはどうしたらいいのかをアカデミックな視点から解き明かす新しい学問、ポジティブ心理学。 この学問は、アメリカ心理学会会長を務め、英国学士院 初代ワイリー賞など多くの受賞歴を持つ、ペンシルバニア大学のマーティン・セリグマン博士が創始しました。

同博士は、Well-Being(身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること 幸福)を構成する5つの要素を発見し、その頭文字をとり「PERMA」と名付けました。

  • Positive emotions……喜び・平安・希望・畏怖などの感情を持つ、感じる
  • Engagement……活動や世界そのものに深くかかわる
  • positive Relationships……愛情・サポート・理解のある人間関係の中にいる
  • Meaning……目的に適う、自分より大きな何かに奉仕するという感覚を持つ
  • Accomplishment……熟練・遂行能力をもっているという感覚を持つ

PERMA25JAPANより https://perma25japan.com/

Happyは、外側からもたらされる感情だ。誉められた、とか、プレゼントをもらった、がきっかけになる。だから、それらが無いと不安になったり気持ちが落ち込んだりしてしまう。
でもWell-Beingは主観だ。自分でその状態を創り出すことができる。他人がどう言おうと、自分が「良い」「幸せ」と感じればそれでOK。

そしてWell-Beingな状態にある人は、生産性も営業成績も創造性も高いとされているそうだ。
目の前の仕事を「(誰かに)やらされている」のではなく「自分で決めてやっている」と捉えることで、PERMAの「M」と「A」が満たされる。遂行する中で職場の仲間や家族とのつながりを感じ取ることができれば、「R」も満たされる。それらはやがて、「P」や「E」の感覚を連れてきてくれるかもしれない。

もちろん、Well-Beingな状態を持続するのは難しい。どんなにポジティブでいようと思っていても、ふいに他者から傷つけられることもあれば思いどおりにいかないこともある。そんなときは、ネガティブな感情にもきちんと向き合うことが大切だと島田さんは言う。モヤモヤした気分のときには、自分が何に対してモヤモヤしているのか探求する。そしてモヤモヤの因数分解が終わったら、泣いたり、誰かに話したり、紙に書き出したり、体を動かすことでネガティブな感情を浄化する。
これは私も日々実践していることなので、答え合わせしてもらったようで嬉しくなった。

「幸せになる」のではなく「幸せであると決める」

島田さんは「今夜、寝る前までに1枚の紙を用意して、”本当に送りたい人生”を書いてください」と語った。全ての制約を取り除いて、これから何をしたいのか。どんなふうに生きたいのか。たとえ今すぐ実践できないとしても、本当の自分の望みを知ることで、その後の生き方が変わると言う。

今回の講演を聴いて、中には「そんなこと分かってるけど無理なんだよ」と思った人もいるかもしれない。「自分で決めたくたって決められない状況なんだ」と。
確かに、今すぐには身動きがとれない状況というのもあるだろう。しかし、だからといってその場でずっと足踏みしているわけにもいかない。
物事は、うまくいかない時ほど「やらされた」「選ばされた」と考えてしまいがちだ。でも生き方も働き方も、全てが自分の選択の帰結であると自覚すれば、未来を少しずつ方向転換することも可能だろう。

次のグレートコンジャンクションは約20年後。ここから先は、現時点では想像もつかない変化が起こったり、今までよりずっと多くの選択肢が提示されるだろう。
スタートラインに立ったばかりの新入社員たちには、これから生まれる新しい価値観に対応するしなやかさを身につけることと、自分の進む道を自分で決めることの大切さを伝えたい。
願わくば20年後のみんなが、そして私もWell-Beingな状態でありますように。

(千貫りこ)

島田 由香(しまだ・ゆか)
島田由香
  • ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役・人事総務本部長
Team WAA! 主宰、YeeY Inc. 代表、Delivering Happiness Japanチーフコーチサルタント、Japan Positive Psychology Institute 代表、一般社団法人dialogue 代表理事、米国NLP協会マスタープラクティショナー、マインドフルネスNLP®トレーナー。ポジティブ心理学プラクティショナー。1996年慶應義塾大学卒業、2002年米国ニューヨーク州コロンビア大学大学院にて組織心理学修士取得。2014年より現職。
学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。高校三年生の息子を持つ一児の母親。
日本の人事部「HRアワード2016」個人の部・最優秀賞、「国際女性デー|HAPPY WOMAN AWARD 2019 for SDGs」受賞。

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