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内永 ゆか子 「企業経営とダイバーシティ」

2007年02月13日

内永ゆか子 日本アイ・ビー・エム株式会社 取締役専務執行役員 開発製造担当 >>講師紹介
講演日時:2007年1月23日(火) PM6:30-PM8:30

本日の講演では日本IBM初の女性役員として著名な内永ゆか子氏から、同社におけるダイバーシティについて、女性活用の取り組みを中心にお話しいただきました。


「ダイバーシティ(のマネジメント)」とは、企業内の多様な社員を活用することを通じて、多様なアイディアを創造し企業の競争力を高めていくことです。つまり、男女の性差を初めとして、異なる人種や文化、価値観を持つ人たちを活かすことが、変化する外部環境への適応に必要であり、組織活性化、企業改革成功のカギだと考えられているそうです。
内永氏によれば、同社の経営改革に成功したルイス・ガースナー氏がCEOに就任した当時、管理者の多くが社員全体の10%にも満たない白人男性で占められていました。人材活用の点から見れば、これはおかしいわけです。白人男性以外の優秀な人材がしかるべきポジションに登用されていないとすれば、人材という「経営資源」の大いなる無駄使いともいえます。
そこで、ガースナー氏によって全世界のIBMでダイバーシティが推進されました。同社は世界160カ国以上に展開し、33万人の従業員数を擁するグローバル企業ですから、ダイバーシティといっても国によって様々な人々が対象になってきます。ただ日本では、やはりなんといってもまずは大多数を占める「女性」の活用を進めることが最優先の課題となりました。
まず全世界のIBMで女性社員の割合が調査され、国別のランキングが発表されました。日本IBMは国内ではそこそこ女性活用が進んでいる企業として認知されていたそうですが、IBM内で日本は最下位という結果になりました。(98年当時)
例えば、日本IBMの女性社員比率は13%なのに対し、他国では同30~35%と大きな差がありました。
また、入社してから5年以内に離職した女性の割合は男性の約2倍に達していました。しかも、40歳以上の男性管理職が65%であったのに対し、女性はわずか8%に過ぎません。
早速、社内に女性社員の活用に関する諮問機関である「Women’s Council」が設置され、当時唯一の女性役員だった内永氏が責任者に就きました。そして、退職理由の調査などを行い、女性のキャリアアップの阻害要因を分析したところ、阻害要因は次の3つだったそうです。

  • 将来像が見えない
  • 仕事と家事/育児とのバランス(ワークライフ・バランス)
  • オールドボーイズネットワーク

将来像が見えない理由の一つには、目標となる「ロールモデル」が見つからないということがありました。そこで内永氏はキャリアの将来像や仕事上の悩みなどについて相談できる「メンタリングプログラム」を導入しました。
これは、直接仕事上の関係がない他部門の上司や先輩に、相談役(メンター)になってもらうものです。メンターは、年2回・30分の時間を割いてメンティ(相談する側)に会うように義務付けられています。もちろん、それ以外のインフォーマルなメンタリングもOKです。
次にワークライフ・バランスについては、結婚・出産など、内永氏曰く「馬に乗ったり降りたりしない」ですむように、キャリアを継続できる仕組みとして「e -ワーク制度」、すなわち在宅勤務制度を充実させました。「e-ワーク制度」は当初育児・介護目的の制度としてスタートし、育児目的の場合子供が小学校に上がるまでとされていたそうですが、後にそれでは実態に合わないということで、小学生の間はOKとなりました。さらに今では育児・介護に限定せず、誰もが利用できる制度になっています。在宅勤務制度の円滑な運営のためには、自宅に居ながら仕事がこなせ、かつ同僚とのコミュニケーションが行えることが必要になりますが、そこはお得意のIT化によって万全の仕組みが構築されています。
3つ目の「オールドボーイズネットワーク」というのは、男性社会であった組織の中での暗黙のしきたり、ルールのようなものです。
例えば、ミーティングの場で内永氏が男性同士の話しを聞いていると、結局何が議論されているのかよくわからない。曖昧なまま議論が進んでいるように感じて、最後に「すいません、結局今日は何が決まったんですか」と質問すると、そのたびに、男性たちにいやな顔をされた経験があるそうです。
これは、その会議は顔合わせの意味合いが強く、何かを決める会議ではないということを、男性陣は習慣的にあらかじめ理解していたからだということが後にわかってきます。
男性であれば、アフターファイブの飲み会などでこうした暗黙のしきたりを教えてもらう機会があるのかも知れませんが、女性にはそういった機会が少なく、男性中心の職場にはなかなか溶け込めない状況になってしまうわけです。
この「オールドボーイズネットワーク」については、女性側だけでなく男性側の気づきも必要です。そこで内永氏は99年から開催している「女性フォーラム」に男性管理職を招待しました。
このフォーラムは同社の女性だけが1000人以上集まる催しであり、会社と違って男性が少数派です。男性からは「女性がこれだけ多い中にいるのは初めてだ、怖い」という声も聞かれ、女性は会社で毎日こんな状況に置かれているんだと気づいてもらえる、一つのよい機会になったそうです。
内永氏によれば、98年にWomen’s Councilが設立された際、女性社員の活用については5年後(03年)の具体的な目標値を設定していたそうですが、ほぼ目標を達成する成果を収めました。現在は同社の女性役員も4名に増え、女性がますます活躍できる職場となっています。
内永氏は、最後に女性たちへのメッセージとして次のような点を話してくれました。

  • 自分のキャリアに目標を持つこと
  • 与えられたチャンスを逃さず、チャレンジすること
  • 自分の強みを持つこと
  • 社内外のネットワークを大切にすること
  • メンター(先輩)を活用すること
  • 馬に乗ったら降りないこと
  • 基礎体力を高めておくこと
  • すべてを完璧にこなそうとしないこと(人の力を借りられるものは借りる)

内永氏は、最近はIBM社内にとどまらず、他の企業での女性活用も促進するため「J-Win」(Japan Women’s Innovative Network)のファウンダーとしても精力的に活動されているそうです。
内永氏のますますのご活躍をお祈りしたいと思います。

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