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亀渕 昭信「ラジオのはなし 35年目のリクエスト」

2007年08月14日

亀渕 昭信 株式会社ニッポン放送 相談役 >>講師紹介
講演日時:2007年6月26日(火) PM6:30-PM8:30

亀渕昭信氏は、「カメ」の愛称で親しまれたオールナイトニッポンの元DJ(パーソナリティ)。そして、ライブドア問題でメディアに登場された時には、あの「カメ」さんが、今はニッポン放送の社長さんだったんだと驚かれた方も多いかと思います。


さて、オールナイトニッポンは今年40周年を迎えるそうです。亀渕氏は、その創生期に9人目のDJになりました。DJをやることになったのは、音楽の好きな亀渕氏が学生時代からニッポン放送でアルバイトをしていたところ、当時のオールナイトニッポンのDJをしていた高崎一郎氏から、「君は話が面白いから、DJをやってみるか」と言われたことがきっかけです。
亀渕氏は、講演の冒頭、たまたま10日ほど前に見つかったばかりの、当時の番組を録音したテープを聴かせてくれました。番組は生放送でしたから録音テープは基本的に残されていないのだそうです。20代の亀渕氏の若々しい、弾むような声が印象的でした。実は、亀渕氏がDJを務めた時期は3年半ほどの期間です。しかし、その親しみやすいキャラクターによって、当時の若者たちに愛される人気DJとなり、彼らにとっては忘れられない存在になっていたのでしょう、2年前のライブドア問題の渦中、かつてのリスナーから亀渕氏宛に、激励の手紙が毎日のように飛び込んで来たそうです。
「私はかつてカメの放送を聴いて励まされた。今度は私が励ます番だ、がんばれ!」「ラジオの灯を消してはだめだ」「私はラジオが大好きだ」
こうした元リスナーからのメッセージを読んで、40年の時を経ても残っていた、DJとリスナーの間の親密な関係に亀渕氏は感慨を覚えたそうです。
また、同じ頃、お母様がダンボール箱を亀渕氏に渡してくれました。その中には、DJ時代に受け取ったリスナーからの手紙が200通ほど入っていたのです。亀渕氏がDJをしていらした頃、リスナーからオールナイトニッポンに届く手紙は月に2万通に上りました。DJの皆さんは、それらを1枚1枚全部丹念に読んでいたそうです。そして、段ボールの中にあったのは、亀渕氏が自宅で読むために持ち帰った自分宛の手紙の一部で、うっかり会社に戻し忘れた手紙だったのです。
亀渕氏はその中から、いくつか面白い手紙を紹介してくれました。往復はがきを送ってきて、返信はがきにカメのサインをして返送して欲しいというものや、宛先のところには、住所記載はなく、郵便番号と「カメ」としか書いてないものもありました。郵便局はちゃんと届けてくれたのです。
これらの手紙を読み返しながら、亀渕氏は「そうだ、35年前に手紙を送ってくれたこの人たちに今、会ってみよう、そんなラジオ番組を作ってみよう」と思いついたのです。ただし、手紙の主を探すのは大変だったようです。女性は結婚していて姓が変わっていることが多いですし、下宿先は無くなっている。また、市町村合併で住所自体が消滅していることもありました。
しかし、なんとか3人の方にお会いしてインタビューすることができたそうです。そして、この番組は、2006年の5月14日に1夜限りで放送されています。また、「35年目のリクエスト」の出版に至っています。
亀渕氏によると、ラジオの「効用」は「想像力、イマジネーションを育んでくれること、掻き立ててくれること」だそうです。ラジオは、「聴覚メディア」であり、孤独や寂しさを癒してくれる「パーソナルメディア」です。自分に直接語りかけてくれているかのようなDJの言葉は、リスナーの心に染み込んできます。つまり、単に情報を伝えてくれるのではなく、おしゃべりしているような感覚があるのです。
最近、テレビと同様に、ラジオ通販が人気です。パソコンや洋服など様々な商品が数分間で数千万円も売れます。そして、実は、ラジオ通販はテレビ通販より返品率が低いのだそうです。なぜなら、DJとリスナーとの親密な関係性が成立しているために、届いた商品が期待していたものと多少違っていたとしても、あのDJが薦めてくれたのだからと納得してくれるからだそうです。
最後に、ラジオDJになれる条件を亀渕氏は教えてくれました。ポイントは以下の通りです。

  • 声が良いこと。ただし、ダミ声のような悪声がダメというわけではなく、耳ざわりの良さが大切
  • 必ずしも標準語で話さなければならないわけではない、方言でしゃべってもいい
  • 地域、土地のことをよく知っていること
  • 発想が豊かであること
  • 常識やバランス感覚があること
  • しゃべるためには「聴くこと」も大切
  • 明るくて開放的であること。「癒し」という視点からも、カラリとしたキャラクターが良い
  • 生活感にあふれていること
  • 喜怒哀楽がはっきり出せること
  • 親しみやすいこと、逆にあまりスマートなのは好感が持たれにくい
  • 好奇心、探究心があること。デパ地下にできる行列には、何かわからなくてもとりあえず並んでみる

そして、亀渕氏が、DJ、いやラジオに関わる人間に何より必要だと思うことは、ラジオが大好きであること、またラジオに賭ける情熱や気迫を持っていることだそうです。
亀渕氏自身のラジオに対する深い愛情が感じられる、また魅力的な人柄を感じさせる語り口に、さすが元DJだと感じたご講演でした。

主要図書
35年目のリクエスト』 白泉社、2006年

推薦図書
ラジオは脳にきく』 板倉徹著、東洋経済新報社、2006年
私説放送史』 大山勝美著、講談社、2007年

推薦サイト
亀渕昭信のオールナイトニッポン 35年目のリクエスト
*白泉社HPにある期間限定のブログ

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