学びの体験記
2026年09月08日
[私をつくった一冊]国分 康孝著『〈自己発見〉の心理学』
慶應MCCの参加者の皆さまに、影響を受けた・大切にしている一冊をお伺いします。
その本には、いつ、どのように出会いましたか?
新卒で入社して数年が経ち、企業研修を担当していた頃です。社員研修の講師に著者の国分康孝さんをお招きし、本書のご紹介をいただきました。90年代前半のことだったと思います。
どのような内容ですか?
認知行動療法における「論理療法」について色々な事例を交えて書かれた本です。
多くの人が人生のさまざまな局面で抱きがちな認知の歪みは、合理性に照らすことによって改めることができます。
論理療法では、悩みを論理的に解決するステップが示されます。
- 見つける:自分がどんな「ねばならぬ」に縛られているか気づく。
- 疑う:その思い込みに「本当にそうなの?」と合理的な定規を当ててみる。
- ゆるめる:「〜であるに越したことはないけれど、そうでなくても大丈夫」と、考え方を柔軟にずらしていく。
自己発見とはつまり、誤った自分の概念から、自己を解き放つこと。縛り付けられた自分を、縛っているものから解放することだと述べられています。
この作品をおすすめするとしたら?
何かしら悩みを抱えている人には、その原因が合理性のない思い込みから来ているのではないかと自己分析するきっかけになるでしょう。
また「ねばならぬ」、「こうあるべき」と考えがちな人は、その考えの非合理性に気付き、呪縛から逃れることができると思います。
結果、思い通りにならない現実を「まあ、そういうこともあるさ」と受け入れる力が身につきます。
あなたにとってどんな出会いでしたか?
人には育った環境や生まれもった性格などから思考の癖や判断の傾向があります。
自分の考えが思い込みではないかと自らに問い、常に合理性をもって判断していくという認知療法を知り、世界の見え方が変わりました。
人事の仕事には公正な評価、バイアスを避けて物事を見ることが要求されますが、その後の判断局面で大いに役立ちました。
個人的に悩むことが生じた際にも、立ち止まって論理的に考えることで乗り越えることができました。
坂梨 恒明(さかなし・こうめい)
慶應義塾大学法学部政治学科を卒業し、IT企業で人事系の仕事を30年以上担当してきました。
初めて慶應MCCに参加したのは2007年、企業理念や組織開発をテーマとした「人育て哲学」でした。その後関係会社に役員として異動し、専門外の業務も担当することになり、見識を広めるためリベラルアーツの「agora」を受講し始めました。心理学、美術、演劇など仕事とは直接つながらないような学びが、視野の拡幅に大いに役立ちました。
リタイアした今は、経営効率や合理性とは無縁です。自分の感情に素直に、経験が培った思い込みを信じながら、禅、俳句など知らなかった世界を楽しく学んでいます。
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