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夕学レポート

2017年11月20日

伝えられ、引き出され、やがてウットリ 魚住りえさん

photo_instructor_900.jpg「なんと小さくて華奢な人だろう!」
元・日テレの人気アナウンサーである魚住さんのお顔はよくよく知っていたが、壇上にあらわれた「ナマ魚住さん」はまるで少女のような風貌。自分と同い年とは思えないくらい、若々しくてキュートだ。
「みなさん、こんばんは」という第一声には、キリリとした美しさと甘さが同居している。おそらく、この一瞬で会場の男性陣のほとんどは魚住さんに恋してしまったのではないだろうか。

伝えやすく、引き出しやすい空気をつくるプロのわざ

アイスブレイクは自己紹介。ここで知った「魚住さんは関西出身者」という事実は、わたしにとっては意外だった。
しかし、話が進むにつれて「あ、なるほど西の人っぽいな」と感じさせられる場面がチラチラ見え隠れして、それがまた魚住さんの魅力につながっていく。ちょっとドキッとしてしまうような歯に衣着せぬ発言をしてみたり、あえて自虐っぽいことを言って笑いを取りにいったり。あれほどの美人さんにも関わらずサービス精神旺盛なのは、西のDNAがそうさせているのかもしれない。


すっかり場がなごんだところで本編へ。
まずは会場アンケートからスタートしたのだが、どうやって回答を集めるのかと思ったら、なんと魚住さんご自身がヒョイっと会場に降りていってお客さんに直接マイクを向けたので驚いた。マイクを向けられたご本人はその100倍ギョッとしたと思う。
しかし、マイクを向けられた人たちはみな自然体で答えていた。これはたまたま度胸のある人が当たった…のではなく魚住さんの手腕によるものだ。
魚住さんは、回答の前にまず相手の名前を聞いた。そしてゆっくりと回答を促した。
最初に名前を聞き、名前で呼びかけることによって「講演者と聴講者」という関係から人間同士の関係に一瞬シフトする。その上で、のんびりした雰囲気を演出することで回答者の緊張を解いているように見えた。
さらに感心したのは、壇上に戻ったあとで回答にふれる際に「先ほど○○さんがお答えくださったように」とサラッと付け加えていたことだ。
マイクを向ける瞬間、相手の名前をその場で1度だけ呼ぶのは簡単だが、何人かの名前と回答を紐付けて脳内メモリーに書き込んでおくのはシロウトには難しい。魚住さんは「出番前は緊張で手が震える」とおっしゃっていたが、その状態でこういうことをやってのけるのが本物のプロの証なのだろう。

一体感に包まれながらのトレーニング

本講演のキモは、魚住さんと一緒に行う呼吸や発声のトレーニングだ。
「腹式呼吸により副交感神経が優位に立ちリラックスできる」というのはよく聞く話だが、では腹式呼吸しながら話そうとするとなかなか難しい。しかし魚住さんの指導のもとで正しい腹式呼吸を体感し、具体的なイメージがつかめたところで「お腹をへこませながら大きな声を出しましょう」と言われて、わたしはようやく「そういうことか!」と理解できた。
今まで、人前で話す際など緊張するときには自分を落ち着かせようとするあまり声が低く小さくなってしまっていたのだが、これは間違いだったのだ。緊張しているときほど息を深く吸って腹から大きな声を出すべし、という教えは目からウロコだった。
「人前で話すときの声のトーンは、あえて高くした方が良い」というのも、わたしにとっては新鮮なお話だった。
自分の声は高い方なので低く発声した方が良いと思い込んでいたのだが、やりすぎない程度に高いトーンで発声した方が通りがよく聞き取りやすい声になる。このあたりの微妙なさじ加減も、その場で実際に練習することで少しコツをつかめた気がした。
会議やプレゼン前にやっておくと良い発声練習や表情筋の鍛え方など、たくさんのトレーニングを実施してくださったのだが、会場全体が魚住さんの指示に素直に従っているのが微笑ましくて、途中何度か笑いそうになった。
だって、おそらくは会社の中でそれなりの地位に就いているスーツ姿をビシッと決めた紳士たちが、熱心にほっぺを膨らませたり「パパパパパパ」と唱えたりしているのだ。
それにしても、自分にとってこれほどまでに実践的な、まさに「明日すぐに役立つ」講演は初めてだったように思う。
教えていただいたことが身につくのはまだ少し先になりそうだが、魚住さんのように美しく、かつ相手に伝わる話し方を目指して今後もトレーニングを継続するつもりだ。
やれやれ、話し上手で聞き上手な魚住さんの魅力に、女のわたしもいつの間にかすっかりやられてしまったようである。
(千貫りこ)

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