KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

夕学レポート

2008年10月21日

「IT革命は道半ば」 夏野剛さん

5万年前、アフリカから世界へと旅に出た人類は、その旅程で「ことば」を生みだしました。
「ことば」は、表情や身振りに頼っていた人間の「コミュニケーション」を大きく変え、やがて農耕社会を作り出すきっかけになりました。
18世紀後半、ジェームス・ワットが改良した新方式の蒸気機関は、それまで人や牛馬に頼っていた「動力」の概念を大きく変えました。
「動力」の飛躍的進化は、興隆しつつあった帝国主義と結びつき、やがて「産業革命」へと結実してきました。
20世紀の終わりに登場したインターネットは、「情報」の概念を大きくかえつつあります。
その変化は「IT革命」と呼ばれ、農耕や工業化の開始と同様に、人と社会の有り様を変える大きなインパクトになると言われています。
上記の流れに位置づけてみると、「ケータイ」は、日本における「IT革命」の先駆として、一般コンシューマーを革命の担い手に登場させたところに、その時代的な意味があります。
「革命は大衆によって成される」ということは歴史が教えてくれる真実です。


夏野さんがリードしてきた「iモード」が世に出て9年。ケータイは、電話機から情報・金融・エンタテイメントまでを取り込んだマルチメディア端末へと変貌してきました。まさにIT革命の寵児と言ってよいでしょう。
「iモードが生まれて、たった10年しか経っていないのですよ」
夏野さんは、そう語りかけます。
この10年で、変わったことは驚くほど変わった。一方で、変わらないことはまったく変わらない。
その両方があることを伝えるための枕詞です。
そこにIT革命を語る際の本質があるということです。
夏野さんによれば、IT革命は「90年代後半から始まった、コンピュータとインターネット技術を中心にした社会・産業・技術の革命である」と定義できるそうです。
技術の標準化、ネットワークの高速化、デバイス技術の進化がこの革命を後押ししました。
IT革命は、「情報の非対称性」を前提としたあらゆる仕組みを不要にするだろう。
夏野さんは、IT革命がもたらす変化をそう捉えています。
簡単にいえば、単なる仲介者でしかない「中間」は中抜きされるということです。
ピラミッド組織、間接選挙、旅行代理店、本屋・レコード屋、図書館etc。
「中間に存在するものは、それ自身が価値を生み出せなければ生き残れない」と夏野さんは言います。
逆にいえば、「中間」を生業としている人・事業・産業は、自らが「中間」に存在し続ける独自な価値を作り出すことを求められる時代になったとも言えます。
夏野さんは、「IT革命が未だ道半ばである」と見ています。
この10年で大きく変わったように見えるけれど、まだまだ変わる余地はあるという考え方をしています。
例えば、広告業界。これだけネット社会が進展しながら、総広告費7兆円にうち、ネット広告は6千万円。まだまだ成長余地はあるはずです。
iモードの利用者をみても50代以上はほんの僅かだそうです。
企業・行政の支配者層は、iモードをほとんど理解していない。それにもかかわらずこれだけの成長が出来たということは、リテラシーを持った世代が社会の中核を占めるようになれば、いまは出来ないさまざまな事が可能になるかもしれません。
IT革命の恩恵は、大企業を中心としたビジネス界とネットを所与に成長してきた若者層にしか広がっていない。まだまだ未開拓領域がある。
夏野さんはどこまでも強気です。
それでは夏野さんが思い描くIT社会のネクストステージは何か。
講演では、iモードのビジネスモデルを着想する際に「未来予想図」として大いに参考にしたというSF映画を教材に示しながら、「ケータイの未来」を予言してくれました。
ご覧になった方はどんな感想を抱いたでしょうか。
最後に夏野さんが、未来のケータイを予測する際のキーワードとしてあげてくれた5つのことばを紹介します。
・AI(人口知能)
ケータイはますますパーソナルエージェント化し、秘書やコンシェルジェのように勝手にやってくれるようになる。但し、データベースのレコメンデーションではない。
・I/O(出入力)
空間ディスプレイやバーチャルキーボードが当たり前になる。「小さすぎる」というケータイのデメリットがなくなる。
・BIO(生体認証)
指紋認証や虹彩認証などあらゆる認証技術がケータイに組み込まれる。それによりケータイの意味づけが更に進化する。
・Battery(電源)
燃料電池、ソーラー、量子エンジンなど、充電せずに何年も使えるような新しい電源が開発される。
・For Ordinary People
全てはフツーの人々のために。高機能化がユーザーのオタク化を招いたらダメ。iphoneはその先駆として素晴らしい道を示してくれた。

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