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夕学レポート

2011年02月17日

田口佳史さんに問う中国古典 【大学の道】 その3

昨日のブログで、大いなる学び(Great Learning)の道は、1)明徳を明らかにすること、2)民に親しむこと、3)至善に止まることの三つであると言いました。
これは「三綱領」と呼ばれています。
『大学』には、「三綱領」の下に、「八条目」と言われる八つのキーワードがあります。
「格物」「知致」 「誠意」「正心」 「修身」「斉家 」 「治国」「平天下」
物格(ただ)して知致る。知致りてのち意誠なり。意誠にしてのち心正し。心正しくしてのち身修まる。身修りてのち家斉(ととの)う。家斉ひてのち国治まる。国治まりてのち天下平らかなり。
冒頭の「格物」「知致」という言葉は、その読み方・解釈を巡って古代から喧々諤々の論争が展開され、いまもって複数の解釈が存立すると言われているそうです。
「格物」とは、当事者意識をもって物事に向き合うこと
「知致」とは、人間の叡智を極めること
田口先生は、それぞれを上記のように解説してくれました。
当事者意識をもって物事にあたれば、自ずと知恵が湧き出てくる。それが人間の叡智である。 そんな意味になるでしょうか。
「誠意」とは、こころの声に誠実になること
「正心」とは、こころの中に基軸を持つこと
「修身」とは、自身の身を修めること
叡智を極めていけば、おのずと自身のこころに誠実になれる。こころに誠実になれば、揺るぎない基軸が形成される。こころに基軸がある人は、自然と身も修まってくる。
借りものの知識・理論に頼り過ぎず、当事者意識をもって事象に向き合い、叡智を絞って考え抜くことが、自分の内面を鍛え、価値観の形成に繋がっていくという『大学』の根本思想がよく伝わる文章だと思います。
「斉家 」「治国」「平天下」については説明するまでもないかと思います。
個人の精神性・自律というミクロな問題が、国家・社会というマクロな領域へと連鎖していくことを諄々と説いているのがおわかりいただけると思います。
「物に本末あり、事に終始あり」
この世の物事の「本末と終始」、道理を形成するメカニズムの根幹は、「格物」「知致」である。当事者意識をもって物事に向き合うこと、考えて考えて考え抜いて叡智を極めることである。それこそ、大いなる学び(Great Learning)の道である。
町の寺子屋に集う童から昌平校の大学者まで、あらゆる人が、各自時々の課題を抱え、幾度も読み返したという『大学』の汎用性を、あらためて感じます。
田口佳史さんの中国古典シリーズ、次回は4月11月(日)から開講します。
今度の教材は、『孫子』です。
兵法の書、戦略の要諦として活用されてきた本ですが、今回は少し切り口を変えて、「人生の戦略書」として読んでみようという趣向です。
ご興味のある方は、是非受講をご検討ください。
田口佳史さんに問う中国古典【人生の戦略書・孫子】

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