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ガイドも“シェアリング”する時代

2017年06月13日

山内 久未

Airbnb、Uberに代表されるシェアリングエコノミー。欧米から始まったそのムーブメントは日本でも徐々に広がりつつあります。英国大手コンサルティングファームPwCによると、その市場規模は2025年には3,350億ドル規模に達する見込みというから驚きです。

2017年。通訳ガイドになって3度目の春を迎える今年、シェアリングエコノミー時代を生きるフリーランスガイドのはしくれとして、ワタクシKimmyも新たな試みに一歩踏み出しました。
Triple Lightsという、日本全国43都道府県在住のプロの通訳案内士と個人の旅行者を繋ぐマッチングサイトを利用して、旅行会社や業界団体を介さずに、個人のお客様を集客することにしたのです。

京都のスーパーガイド、Eriさん

きっかけは、今年の初めに数年ぶりに京都で再会した先輩ガイド、Eriさんでした。まだお互いに都内でOLをしていたころに出会ったEriさん。現在は、ご自身の地元である京都で Kyoto Travel Agency を運営しつつ、欧米の個人顧客向けプライベートツアー専門ガイドとしても活躍されていることをFacebookで知ったのはつい最近のこと。ちょうど京都に仕事で訪れる機会があったので、コンタクトをとりお会いしました。今のところ、お付き合いのある旅行会社から仕事を引き受けるのみで、どこのガイド団体にも所属していない私。ガイド同士のつながりは大変貴重かつ有難いもので、特に、外国人旅行者をいかに楽しませもてなすかという目線で、京都の隅々まで熟知したEriさんの存在はとても心強く、頼もしい先輩です。
京都駅で待ち合わせた後、無理を言ってツアーの下見にお付き合いいただけることになり、その日は外国人に大人気の伏見稲荷大社を案内していただきました。

「狛狐はそれぞれ稲穂、巻物、鍵、宝珠をくわえていて、一つ一つ意味があるんよ」
「千本鳥居は、このあたりからだとお客様が写真を撮りやすくておすすめ!」
「ご年配のお客様ならこっちのルート、団体バスで来るなら、あっちのルートを案内して、集合場所は ここがわかりやすいと思うな」

歴史や文化的な豆知識から、最適なフォトスポット、お客様の特性に合わせた導線まで・・・さすが、京都を知り尽くしたスーパーガイドです。下見の後は、お客様にも喜ばれるというEriさん御用達の隠れ家的カフェで美味しいコーヒーをいただきつつ、ガイドの仕事についてあれこれ質問タイムとなりました。ツアーの準備の仕方、当日の運営の仕方、京都と東京のガイディングの違い・・・色々お話を聞いている中で教えていただいたのが、冒頭にご紹介した通訳ガイドと個人旅行者のマッチングサイトでした。

実はマッチングサイトの存在自体は以前からなんとなく知ってはいましたが、「なんだか怖い・・・」と尻込みして、手が出せずにいた私。抱えていた不安は、以下のようなものでした。

  • どこの誰かもわからない外国人とオンライン上だけでやりとりをするのが怖い
  • 個人情報を公開することが怖い
  • 金銭の収受やツアー当日のトラブルが怖い
  • なんだかよくわからないけど、なにかに騙されそうで怖い

びくびくしながらそんな不安を口にする私に、Eriさんは優しく、でも楽しそうに教えてくださいました。

Kimmyちゃんが感じている不安は、きっとお客様だって一緒やと思うよ。初めて訪れる日本という国の、会ったこともない日本人ガイドとやりとりするんやもん。でもお客様と直にコミュニケーションをとれることで、実際に京都でお会いする前から知り合いだったような親近感がわくし、お客様の好みや日本でやりたいことがよくわかるから、私はやっていて楽しいよ。日本に来る前から質問攻めになることもあったりするから、意外と大変やけどね(笑)」

そう言いながら、お客様との色々なエピソードをお話しくださるEriさんの表情は本当に楽しそうで、通訳ガイドとしてのやりがい、誇り、楽しさでキラキラ輝いてみえます。

そうだよ、お客様だって不安だよね。お金だけ払わされて、悪徳ガイドに騙されてるんじゃないかとか、東京に着くなり変なお土産屋さんに連れていかれちゃうんじゃないかとか、そんなこと考えちゃうよね。旅行会社が間に入っていても、ツアー参加者の人数が増えちゃう とか、これまでだって数々のトラブルはあったわけだし・・・。個人情報の取り扱いは充分に注意して(というかfacebookを使ってる時点でそこは注意しないといけないところじゃないか!)、トラブルにならないように、色々事前に対策をして・・・。

昨今のシェアリングエコノミーの流れに自分も乗ってみたいという好奇心と、何よりもEriさんの「楽しいよ」の言葉に背中を押され、さっそく新幹線の車内でiPhone片手にマッチングサイトを探しながら、東京への帰路についたのでした。

マッチングサイトのシステムとは

私が登録したマッチングサイト、Triple Lightsはこのような仕組みになっています。

  1. 登録– Triple Lightsのサイトに自分のページを作成します。
  2. ツアー販売– 行程や値段を自分で作成したオリジナルツアーを、サイト上で販売します。
  3. 予約受付– HPを見たお客様から問い合わせや予約申し込みのメールが入ります。
  4. ツアー実施– 待ち合わせの場所でお客様と会い、ツアーにご案内します。  
  5. 報酬収受- Triple Lightsから、ガイド報酬が口座に振り込まれます。

サイト上にはカレンダー機能があり、他の仕事やプライベートの予定がある日はあらかじめツアーが入らないようにブロックしておくことができます。お客様とのやりとりはサイト内のマイページ上で行いますので、個人のアドレスを教える必要はありません。ツアー代金のクレジットカード決済やガイドへの報酬支払はTriple Lightsが代行してくれますので、手数料は差し引かれるものの、未入金や未払いといったトラブルは回避できるシステムになっていました。

捨てる神あれば拾う神あり!

自分のサイトを立ち上げるのなら、ガイド最大の繁忙期である3月か4月にしようと決めていました。
オープンしてすぐにお客様を獲得できるほど甘くはないだろうと思いつつ、繁忙期でガイドの手が足りなくなる春先ならば、1本ぐらいは仕事をゲットできるんじゃないだろうか・・・と思ったからです。

他にもいくつかのマッチングサイトを見つけましたが、欧米資本の企業が世界各国で運営するサイトがほとんど。それよりも、日本に特化し、日本のガイド事情をよく理解しているところでまずは始めてみたいと思い、日本の企業が運営するTriple Lightsを選びました。ライセンスガイドであることを証明するため、通訳ガイド免許証のコピーをiPhoneで撮り、ガイド登録のサイト経由で申請を行うところからスタートです。

そして2月初旬に東京に戻ってからおよそ2週間後。TripleLightsのサポートスタッフの方から、メールで色々とアドバイスをいただきつつ、ついにKimmyのサイトが完成しました。

https://triplelights.com/profile/3784/

とはいえ、その時点ですでにお付き合いのある旅行会社から春の繁忙期のツアーをいくつもいただいており、サイトは立ち上げたものの、カレンダーでOK表示できる日もごくわずかでした。そもそも口コミもなく、実績もない私みたいなガイドに申し込んでくださるお客様なんて、果たしているのだろうか・・・と、まだまだ不安は消えません。案の定、お問い合わせこそちらほらあるものの、成約には至らないまま3月に入ったある日、旅行会社の担当者の方から1本の電話が入りました。

「Kimmyさん、本当に申し訳ありません!3月のツアー、現地でトラブルがあり催行中止になってしまいました!
ええええーー!!

3月末から4月上旬、桜がちょうど咲き始める、シーズンでも一番の繁忙期に、その旅行会社から全7日間の大型ツアーの仕事が入っていたのです。それが、事情により中止になってしまったとのことでした。繁忙期真っ只中に7日間もスケジュールに空白ができてしまうのは、稼働日ごとの日当で生活しているガイドにとっては大打撃です。季節はもう桜のつぼみも膨らみ始めた3月。これから代替の仕事を探すのも難しく、旅行会社の担当者も申し訳なさそうに「なるべく他の仕事を回します」とおっしゃってくださるものの、すでにどのツアーもガイドは決まってしまっており、私の入る余地はありません。これもフリーランス稼業の宿命、腹をくくってこの春はのんびりと節約生活を送ろうかしら・・・と半ば諦めかけていた、忘れもしない3月12日。メールボックスに一通のメールが届きました。

Kimmyさん、予約が入りました!おめでとうございます! From: Triple Lights

おおお!!!
旅行会社からキャンセルの連絡があった直後、ダメもとでカレンダーをOK表示にしていた3月下旬の日程に、初仕事が入ったのです。捨てる神あれば拾う神ありとはまさにこのことです。

結局、この春はTripleLightsを通じて、計4組のお客様をご案内することができました。

もちろん、受注した後も色々な不安はつきませんでした。
どんなお客様だろうか?理不尽なクレームやリクエストでトラブルになりはしないだろうか?お金はきちんと支払ってもらえるだろうか?やっぱりなにか騙されたりしないだろうか?(まだ言う)

が、結論から申し上げますと、4組ともそれはそれは素敵なお客様で、出会えて良かった、勇気を持って一歩踏み出して、サイトを立ち上げて良かったと心から思えた春でした。

山内 久未(やまうち・くみ)
慶應丸の内シティキャンパスで2年間ラーニングファシリテーターとして多くのプログラムを担当。退職後、約2年間の勉強生活を経て2015年春より通訳案内士(通称:通訳ガイド)として日々奮闘中。

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