KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2006年01月17日

年頭に仕事を構造化して吟味してみませんか?

皆さんあけましておめでとうございます。桑畑@慶應MCCです。本年もおつきあいのほど、よろしくお願いします。
さて今回は、新たな年のスタートでもありますので、普段の「仕事に追いかけられている状態」をしばし忘れ、少し立ち止まって『仕事の構造』について考えていただきたいと思います。きっとそこから、今後の仕事の進め方をはじめとした様々なヒントが見えてくるはずです。


まず、ご自身の業務上の課題をいくつか思い起こしてください。今年達成したい(or 達成しなければならない)課題は何ですか? もちろん新しい課題でも、昨年からの継続課題でもかまいません。
この時点では、各課題の抽象度のバラつきや包含/因果関係等は、さほど気にする必要はありません。たとえば、
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 A: 売上予算の達成
 B: 新規顧客10社獲得
 C: 拡販企画の立案
 D: 新規市場のリサーチ
——————————–
という課題をリストアップした場合、AからDに行くに連れて、抽象度が下がります。より具体的な課題になっているわけです。また、DはCに含まれる(リサーチは企画立案の部分作業)とも言えますし、C→B、B→Aの因果関係(原因→結果)も成立しそうです。
こうした課題間の抽象度や関係性は非常に重要であり、この後の構造化ではまさにこれらが鍵となるのですが、まずは深く考えずに「課題の棚卸し」を心がけてみてください。
さあ、課題の棚卸しができたら、ここからいよいよ吟味に入ります。今回は“5W2Hストラクチャー”を使ってみましょう。
最初に、棚卸しした課題のひとつを『What』に設定します。ここでは例として、上記B「新規顧客10社獲得」を使ってみます。
次にこの課題Bの『Why(目的)』と『How(手段)』を探索します。つまり、「なぜ(Why)新規顧客を10社獲得しなければいけないのか?」と「どうやったら(How)新規顧客を10社獲得できるか?」を考えるのです。もちろんWhyもHowもひとつずつとは限りません。
Why(目的)
自分の(部門の)来年度の売上予算達成のため
3年後の売上を確保する準備のため
部門内での自分の発言力を強くするため
自分の評価を上げて給料をアップさせるため    ・・・等
How(手段)
拡販企画を立案することによって
有望な新規市場をリサーチすることによって
既存顧客から紹介してもらうことによって
競合X社の顧客にローラーをかけることによって  ・・・等々
という具合にいくつも思いつくはずです。ここでHowについて論理思考のツールであるロジックツリーを使えば、さらにヌケモレなく抽出できます。
お気づきの通り、最初に棚卸しした課題のA, C, DがWhyやHowとして出てきています。これは「ある課題(What)は別の課題の目的(Why)や、手段(How)になりうる」からです。ですから、このWhy←What→Howの構造は段をずらして考えることも、大変有意義です。WhyをWhatに降ろせば、より上位のWhy(たとえば「なぜ3年後の売上確保が必要か?」等)を考えることになりますし、HowをWhatに上げれば、より下位のHow(たとえば「どうやって既存顧客から紹介してもらうか?」等)を検討することになるのです。
つまり課題をWhy←What→Howで構造化することにより、第一に普段はあまり考えていなかった『仕事の意味』を”Why”というキーワードで考えられるようになります。上から言われるまま、意味も考えずに仕事を「片づける」のと、意味を自分なりに定義して仕事を「処理する」のでは、モチベーション面も含め、仕事の生産性は大きく違ってくるはずです。そして第二に、普段は深く考えずに少ない選択肢を使い回ししていた『仕事のやり方』を見直すことにも繋がるのです。
さて、ここまででも十分に意味のある『仕事の構造化』が可能ですが、さらに自分の仕事を吟味し、日々のプライオリティ・マネジメント(優先順位付けによる仕事の管理)にも活かすために、次のステージに進んでみましょう。
課題の構造化(自分のミッションの再定義と言ってもいいでしょう)にはWhy←What→Howを使いました。しかし実際に課題を達成するためには、つまり課題を具体的アクションプランに落とし込むためには、避けて通れない問題があります。そう、「いつやるか(時間)」と「誰がやるか(ヒト)」です。
時間については、『When(納期)』と『How much(所要時間)』に分けて考えます。つまり、『What(課題)』や『How(手段)』がいつまでに終わっていなければならないのか、そしてそのためにはいつ手を付けなければ間に合わないのかを、このふたつのキーワードを使って明確化するのです。
当たり前の話ですが、納期を守るためには所要時間の見積もりが必須のはずです。ですが、これを適当にやって(時には全くやらずに)、納期間際になって青くなったなどということは、多くの方が経験しているはずです。
その意味で、このふたつのキーワードは、タイムマネジメントの基本でもあるのです。
次にヒトについては、『Where(関係部門)』と『Who(作業主体の個人)』に分けて考えます。つまり、『What(課題)』を達成するためにはどの部門と、あるいは誰と一緒に仕事を進めるべきなのか、また具体的『How(手段)』は誰にやらせるべきなのかを、このふたつのキーワードを使って明確化するのです。
これまた当たり前の話ですが、仕事はひとりでやるものではありません。ですが、事前にこれらを検討せずに、いきあたりばったりに他部門や部下にに仕事をふる人のなんと多いことでしょう。
そしてこの時間とヒトについては、常にセットで考えなくてはなりません。ヒトによってスキルや経験にバラつきがあるのは当然ですから、同じHowを依頼しても所要時間が異なってくるからです。
以上が“5W2Hストラクチャー”です。文章だけでその構造をお伝えするのはなかにか難しいので、以下の図も参考にしてみてください。
5W2Hストラクチャー
ぜひ一度、これを使ってご自分の仕事を構造化し、吟味してみてください。そうすれば、年頭にあたっての「ミッション・ステートメント」づくりに役立ていただくこともできるでしょう。そしてこの「仕事を構造化する」ことを習慣化していただければ、きっと日々の仕事の進め方が改善できます。また、あなたが管理者であれば、部門のミッションや部下のマネジメントにも応用できるはずです。
ささやかではありますが、これを私からのお年玉として受け取っていただければ幸いです。

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