KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2009年04月16日

「環境が悪い」と思考停止する前に

リストラ・派遣切り・内定取り消しと、100年に一度という不況の嵐が吹いています。
しかしバブル崩壊後の不況に比べると、「しばらく我慢すればなんとかなる」という空気があるのはなぜでしょうか。
ひとつには「バブル崩壊の経験を通して、各企業が体力をつけている」ことが挙げられます。
確かに倒産する企業は多いですが、以前のような金融機関の破綻や誰でも知っている大手企業の倒産の危機は、ニュースとしては伝わってきません。
そしてこの「ここは我慢のしどころ」という空気のもうひとつの要因に、「この不況下で過去最大の利益を上げている元気な会社も多い」ことも挙げられるでしょう。
「でもそれは一部の生活関連の企業だけで」と反論したい方もいるかもしれません。
しかし本当にそうなのでしょうか?
「今は不況なんだから仕方がない」が、言い訳ではないと断言できますか?
私は別に窮地に陥ってリストラを行う経営者を非難したいのではありません。
全てのビジネスパーソンに対して、他人や環境のせいにして「俺に言われても困るよ」と思考停止してしまうことの危険性を考えていただきたいのです。
というのも、実は先日友人達との飲み会で、いたく感心(感動といっても良い)させられた話があったからなのです。

その友人は、ある企業で労働組合のトップを務めていました。
ここでは仮にAさんとしておきましょう。
Aさんの会社も、ご多分に漏れず大変厳しい状況です。
雇用の確保にも汲々としているような状態ですから、賃上げ要求などしても経営者が飲めるはずもありません。
それでも賃上げ要求を行って経営陣と激論を交わす組合もあるでしょう。
しかしそれはほとんど「組合としての仕事をやってますよ」というポーズに過ぎないと思うのです。
悩んだAさんは、それでも「何かできるはずだ」と考えました。
そしてAさんが始めたのが、組合員に対する保険やローン見直しのコンサルティングでした。
Aさんは私にこう言いました。
「給料が上がらなくても、要は可処分所得が増えればいいのであって、それには無駄な支出を減らしてやればいいんだよね」
確かにその通りです。
企業の利益が売上高からコストを引いた引き算で算出されるのと同様、世帯における可処分所得も、収入から税金や年金などの社会保険料といった非消費支出を差し引いた残額です。
税金や社会保険料は減らせませんが、生命保険や損害保険、そしてローンなどは、それを見直すことが可能です。
オーバースペックな保険に加入していないか。また住宅ローンであればもっと低利なところに借り替えできないのか。
毎月引き落とされるこれらの非消費支出は、なんとなく当たり前で仕方がないものと我々は考えがち(というかほとんど意識していない)ですが、実は見直すことができるのです。
実際私も最近住宅ローンの借り換えをしましたが、総支払額はシミュレーション上1000万円以上軽減できる計算です。
さて、しかし今回皆さんに言いたいのは、「保険やローンを見直そう」ということではありません(笑)。(もちろんそれが皆さんのお役に立ったとしたら、それは嬉しいことですが)
Aさんの「こんな状況でもやれることはあるはずだ」という思考停止せずに考え抜く姿勢を、我々はもっと見習うべきと言いたいのです。
また、考える際の『可処分所得=収入-非消費支出』というロジカルさも。
しかし彼がこうした考え方ができたのには、もうひとつ理由があると思うのです。
それはこのブログでも何度も述べてきた「目的を明確にすること」です。
 組合の活動とは何のために行っているのか?
 →それは組合員が安心して働ける環境の実現だ。
ルーチンになっていることを「やること自体」が目的になっては本末転倒です。
Aさんはこの目的を常に意識していたからこそ、「要は可処分所得が増えればいい」ということに気づき、そして上記のような思考プロセスで実のある活動に結びつけたと思うのです。
恥ずかしながら私自身も、彼のこの話を聞いて「自分ならこんな答にたどり着かなかったかも」と思いました。
ということで今回は自戒も込めて、この「当たり前だけどできていない」ことを投げかけさせていただきました。
お互いに日々修行です。
厳しい経済環境ではありますが、
「常に『何のために働いているのか』を意識する」
「周りのせいにして思考停止することなく、自分にできることを考え抜く」
「ロジカルに分けて考える」

ことを私も自分に言い聞かせたいと思います。

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