KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2009年06月12日

2種類の“相談”に対処する

慶應MCCには、『個別相談会』という仕組み(制度)があります。
Webやパンフレットだけではわからないプログラムの細かな内容や進め方、また過去の参加者の傾向など、「参加したいけど少し不安」という部分について、講義で実際に使用するテキストをご覧いただきながら、ラーニングファシリテーター(学習アドバイザー)が1対1でご相談に応じるというものです。
今朝もおひとりが相談に来られたのですが、オフィスではこんな会話がありました。
「そういえば以前、相談会に来られた方が『カウンセリングに来ました』と言われたんですよね」
「でも、“相談”の英訳は“カウンセリング”だから間違ってないでしょ?」
「ああ、でも“コンサルティング”も相談か」
「そういえば『キャリアカウンセラー』もいるけど、『キャリアコンサルタント』もいますよね?」
そこで私は考えました。
「『カウンセリング』と『コンサルティング』は同じ“相談”でも何が違うんだろう?」

ここで話題になった『キャリアカウンセラー』と『キャリアコンサルタント』ですが、これらはいくつもの団体が独自に認定している、いわゆる民間資格です。(ちなみに慶應MCCでも、資格認定はしませんが『キャリア・アドバイザー養成講座』というプログラムがあります)
よってこの2つには、国が定めた明確な定義(違い)はありません。
しかし、「カウンセリング」「コンサルティング」という言葉を聞いて、我々はなんとなく違うイメージを持っています。
つまり、日本語では同じ“相談”でも、そこには「何かが異なる相談」が少なくとも2種類存在しているのです。
では、その異なる2種類の“相談”、あなたはどのような違いがあると思われますか?
枕詞である“キャリア”にこだわる必要はありませんので、カウンセリングとコンサルティングの違いを考えてみてください。
さあ、昨年11月のエントリーでご紹介した、『類義語の違いの説明』です。
唯一の正解があるわけではありませんので、まずは自分なりに明確に2つの言葉を線引きを明確にして定義してみてください。
(1)「メンタルにフォーカスするのがカウンセリングで、リターンにフォーカスするのがコンサルティング」
(2)「過去を振り返るのがカウンセリングで、今何をすべきか考えるのがコンサルティング」
(3)「『相手の話を聞く』ことが大切なのがカウンセリンクで、『相手にアドバイスする』」ことが大切なのがコンサルティング
(4)相談の『プロセス』が重要なのがカウンセリンクで、相談の『結果』が重要なのがコンサルティング」。
(5)「『共感』を目的としているのがカウンセリングで、『問題解決』を目的としているのがコンサルティング」
と、ちょっと考えれば様々な定義ができるでしょう。
さて、ここで最も重要なのは「類義語の違いを考える」ことではありません(当たり前ですね)。
2種類の“相談”があるのなら、相談を受ける側は今受けている相談がそのどちらなのかを見極め、適切に対処しなくてはならない、ということを言いたいのです。
「この相談者のニーズや目的は何なのか?」
「相談が終わったときにどのような状態になっていれば、この相談は成功したと言えるのか?」
これをまず考えるべきです。
そしてそれが見えたら、それに合わせて様々なスキルやテクニックを使い分けて対処しましょう。
実際、「相談なんだけど・・・」で始まったのに、相手は「とにかく自分の愚痴を聞いてほしい」という場合があります。
この場合、「ちゃんと分析して的確なアドバイスをしてあげよう」と思ってはいけません。
相手は「うーん」くらいは反応してくれるかもしれませんが、心の中では「わかってるよそんなこと」と思っています。相手にとっては『大きなお世話』なのですね。
ひの場合の正解は、『とにかく頷きながら聞いてあげる』ことです。
ポイントポイントで、「大変だね」とか「わかるわかる」と共感してあげれば良いのです。
相談の目的は「共感してくれること」なのですから。
逆に相手の目的が問題解決であれば、まずやるべきなのは情報収集、つまり質問です。5W2Hのオープンクエスチョンを投げかけ、そこで得た情報からあなたなりのアドバイスをすれば良いのです。
時には、「答は既に持っているけれど自信がない」という相談者もいます。
「背中を押してほしい」というニーズを持っている人ですね。
こういう場合も基本はカウンセリングタイプで対処すべきでしょう。
まずはとことん相手の話を聞く、そして「で、どうしたいと思ってる?」と問い、相手が自分の答を自信なげに答えたら、「賛成」と返す。
これで相手の顔もぱぁっと明るくなるはずです。
(ちもろんその答が相手のためにならないのなら、賛同してはいけませんよ(笑))
上記の対処例はあくまでも対処「例」。
この3つのパターンしかないわけではありませんから、特に親しい間柄でない場合は、まずは雑談などをしながら相手のニーズを推察することから始めましょう。
「この相談、相手が望んでいるのは“カウンセリング”か“コンサルティング”か」
これが見えてくるだけで、より適切な対処ができるはずです。

と偉そうに言っている私ですが・・・
自分でも心がけなければいけないと感じています。
特に家族とのコミュニケーションが課題でしょうか(笑)

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