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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2009年09月25日

『絶望先生』から学ぶ

皆さん、充実したシルバーウイークを過ごされましたか?
我が家はムスメが文化祭直前ということで毎日学校だったため、家族で出かけることもなく、のんびりと自宅で過ごす日々でした。
ところで“シルバーウイーク”という命名は、単に春のゴールデンウイークからの連想ゲームだと思っていたら、「敬老の日が絡むから」と教えてくれた人がいました。
この説が正しいかどうかはさておき、私も「安易なネーミングだ」と断じる前にもっと考えるべきでした。
思考停止に陥っていたことを反省(笑)
さて、ゆるく始まった本日のエントリー。
どうせなので本編もマンガをテーマに、ゆるくいかせていただきます。
ということで週刊少年マガジン連載中の『さよなら絶望先生』について。

ご存じない方のために、まずはWikipediaの引用で本作品について簡単にご紹介します。
<<<<引用はじめ>>>>
数話を除いて一話完結式。特定のキーワードや事柄に焦点を当て、時事ネタ・あるあるネタ・自虐ネタ・メタギャグなどを展開する。伏字や羅列なども多用し、分かる人には分かる小ネタやパロディを盛り込む。純粋なギャグ漫画というよりは、ストーリーギャグ・ブラックコメディ・学園コメディの形式を取ったツッコミ系コラムといえよう。
<<<<引用おわり>>>>
さて、本作品の特長は上記でも言われているように“分かる人には分かる”ところです。
特に新聞やテレビでは掴むことの出来ない、つまりは「ネットならでは」のニッチ&ディープな情報がタイムリーに散りばめられているため、「これで笑える自分は一般人とは少し違う」という優越感を読者に抱かせることに成功しています。
よってアニメも含め、かなりコアなファンが多いマンガと言えます。
(その分一般的な人気は得られるわけもなく、作者もそれを自虐ネタとして使っているほど)
こうして紹介するくらいですから私も好きなマンガなのですが、実は好きな理由は“分かる人には分かる”という部分ではありません。(いや、それも理由のひとつではあるのですが)
実は私はこのマンガそのものより、作者である久米田康治氏の「思考回路に驚きたい」のが、本作品を欠かさず読む理由なのです。
たとえば「雨降って地固まる」がテーマの回。
「雨降って地固まる」なんて実は嘘っぱちだと言う主人公。その理由は「表面だけ固めていてもすぐ陥没するし、陥没した地下ではもはや修復不可能な争いが繰り広げられている」からだとか。
(その修復不可能な争いの例については、とてもここではご紹介できません。あまりにもリアルだからです(笑))
もうこの時点で凄い。
我々が気軽に使っている「雨降って地固まる」というフレーズを、ここまで掘り下げて(それも真下にではなく斜め下に)考えられる作者の頭の中を覗いてみたいものです。
ただ、主人公である絶望先生(本名が「糸色望(いとしき のぞむ)」のため)は太宰治を気取ったネガティブキャラなので、この「あえてネガティブに解釈する」のは想定の範囲内と言えます。
しかし話は「どうやって地を固めるか」という話に展開し、「手っ取り早いのは共通の敵を与えること」と・・・
コワイです。
作品中では「ルパンvs銭形には、カリオストロ伯爵を!」などの当たり障りのないネタが例として挙げられていましたが(もうひとつの例は、かなり当たり障りがありましたが)、私は「共通の敵を見つける」でなく、「共通の敵を与える」という表現のコワさに、作者の視点の鋭さを感じたのです。
もし読んでない人、読んだことはあっても「オタク相手のマンガ」と興味を持てなかった人も、“思考の切り口”という観点で一度読んでみてください。
きっと発見があるはずですし、そこれが皆さんひとりひとりの“思考の切り口”を増やすきっかけにもなると思うのです。
そうそう、「お客の買い物カゴの中身から、何をしようとしているのかを妄想する(たとえば夕食のメニューを推察する)」という先々週号のネタも、ちょっと趣味は悪いかも知れませんが「複数の情報から帰納的に推論を導き出す」という仮説構築のトレーニングにピッタリだったりします。
個人的には、絶望先生はこの“思考の切り口”という切り口で、じっくり分析してみたいと考えていますので、このブログでもまたいつか取り上げるつもりです。

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