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ファカルティズ・コラム

2009年10月23日

“オーケストラ型組織”は本当に時代遅れか

組織には“オーケストラ型組織”と“ジャズコンボ型組織”の2つがあるとよく言われます。
オーケストラ型は、ひとりの指揮者(リーダー)を頂点に置いたピラミッド型、ジャズコンボ型は、自律したプレイヤーのコラボレーションを志向したフラット型組織、と言い換えることもできるでしょう。
さて、組織をこの2タイプで語る際、ほとんど、いや全ての論調は「これからはジャズコンボ型でなくちゃ」です。
確かに時代の変化に合わせて柔軟勝つ迅速に意志決定し、そしてトップの資質に依存することなく組織の総合力で新たな価値を生み出すには、フラット型組織をベースとしたジャズコンボ型の方が有利です。
私もコラボレーションの研究者としてはそれに賛同しますし、特に以前はバンド(ハードロックですが)も組んでいましたから、やはり「やっぱりクラシックなオーケストラ型は古い」と主張していました。
しかしこれから立場を変えようと思います。
はい、ご存じの方も多いと思いますが、私も今やすっかりクラシックファンだからです(笑)
「おいおい、そんな公私混同で主張を変えていいのか?」

いいんです(笑) (C)川平慈英
別に私は「ジャズコンボ型の方がダメ」と言いたいわけではありません。
クラシックファンならではの知識と想いを駆使して、「本当にオーケストラ型は時代遅れの組織形態なのか?」を考えてみたいだけなのです。
加えて言わせていただくなら、「一般的な論調を疑い、あえて逆らう」ことで思考すること、そしてオーケストラというメタファーでビジネスの組織について考えることで、どのような成果が得られるかを実践(実験)するためでもあります。
すいません。少し大げさでしたね。
さて、オーケストラの指揮者はそもそも何をやっているのでしょうか。
 本当にトップダウン一辺倒のワンマン?
 軍隊の指揮官との違いは?
 いや、そもそもコンサートにおいて指揮者って必要なの?
 単にリズムに合わせて踊ってるだけでは?
実は指揮者が最も活躍するのはコンサートの本番ではありません。
コンサートのリハーサル、つまり練習の場面です。
もちろん指揮者一人一人でリハーサルのやり方は異なります。キャラクターも様々ですから、終始にこやかにジョーク混じりで「メンバーをノせて良い演奏を弾き出す」指揮者もいれば、難しい顔と辛口のコメントで「メンバーの反骨心を煽って良い演奏をさせる」指揮者もいます。
また、練習時間の長さも指揮者によって様々です。
しかしながらどんな指揮者でも共通しているのは、『練習とは方向性を明確にする場』というスタンスでしょう。
「作曲者がこの曲で言いたかったことはこうだと自分は思う」
「だからこの小節はこう演奏すべきだ」
その指示については千差万別です。
かなり細かく弾き方を指示する指揮者もいれば、「生まれたばかりの子猫を撫でるように」などの抽象的指示で、演奏者のイマジネーションに任せる指揮者もいます。
これ、マネジメントの必要条件である『ビジョンの共有』と同じだと思いませんか?
そして本番。
「本番は指揮者いなくても問題ない」という人もいますが、やはり私は(視覚効果的にも)必要だと思います。
これまた本番での指揮については様々なタイプがあるわけですが、やはり共通しているのは『気持ちよく演奏できる環境作り』というスタンスでしょう。
これもマネジメントで考えると・・・そのまま『成果を出しやすい環境作り』というリーダーシップの基本と全く同じです。
さて、こう考えていくと、指揮者は組織におけるリーダー像としてのひとつの理想型とすら言えそうです。
実は夕学五十講でも登壇いただいたボストンコンサルティングの御立尚資さんも、著書『経営思考の「補助線」』の中でこの2つの組織タイプについて述べておられますが、今後の組織のあり方として単純にジャズコンボ型を勧めていらっしゃるわけではありません。
ジャズコンボ型が成功するには、ミッションと目的を設定し、それに合わせてコンボのメンバーを選定(つまりより化学反応の起きやすい組み合わせを考える)する、プロデューサーが必要と言われています。
このプロデューサーの機能、まさに前述のオーケストラの指揮者の機能と同じだと思うのです。
考えてみれば、オーケストラには確かにトップとして指揮者がいますが、その下はピラミッド型の階層構造になっているわけではありません。
指揮者の下にはファースト/セカンドに分かれたヴァイオリン、ビオラ・チェロ・コントラバスという計5つに分かれた弦楽セクションの他、木管・金管・パーカッション等、様々なセクションが存在します。
各ユニットには首席奏者というトップがいるにはいますが、指揮者が首席奏者に指示して首席奏者がその下に指示する、という形態にはなっていませんし、セクション間に上下関係があるわけでもありません。
つまり指揮者の下はフラットな組織になっているのです。
確かにファーストヴァイオリンの主席は“コンサートマスター”と呼ばれ、指揮者に次ぐ権力を持ってはいますが、基本はまとめ役であり、ピラミッドにおける指揮者の下に位置付くわけではありません。
そしてオーケストラの演奏者達が練習でも本番でも共通して心がけるべきなのが、「他の奏者と他のセクションの音をしっかり聞くこと」です。
そう、当たり前の話ですが。実はオーケストラでもジャズコンボと同様の「化学反応によって引き起こされる絶妙のアンサンブル」、つまりビジネスの世界と同様のコラボレーションは重要なのです。
いかがでしょう。
オーケストラ型組織が決して古くさい時代遅れではないこと、いやそればかりか考えようによっては今最も求められる組織とリーダーの理想型であることも見えてきたのではありませんか?
ただ、こう考えてきてちょっと面白いことに気づきました。
それは「オーケストラもジャズコンボもアンサンブルがキモ」と言いつつも、そのアンサンブルの作り方で重視する点が異なるということです。
オーケストラが重視するのは『調和』です。
他の奏者の音に「どう寄り添うか」を各自が意識し、その結果「どれだけ美しく感動的なアンサンブルが作れるか」が問われます。
それに対してジャズコンボでは、他の奏者に「どう刺激を与えるか」を各自が意識し、その結果「どれだけ当初は考えてもいなかったアンサンブルが作れるか」が問われます。
オーケストラ以上に『触発』が重視されるのは間違いのないところでしょう。
うーん。この違い面白いと思いませんか?
ちょっと宿題にさせてください。

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